学生に増える高血圧! 臨床内科専門医に聞く、薬に頼る前に注意したいポイント5つ | ニコニコニュース

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高血圧というと、中高年に多いイメージがありますが、最近では「若年性高血圧症」が増えていると耳にしました。筆者も大学の健康診断で血圧が高いと言われたことがあり、気になる情報でもあります。

「大学入学時は標準血圧なのに、2~3年目の春の健康診断で高血圧だと指摘される学生が目立ちます」と話すのは、臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長。その理由や、若い世代への高血圧の改善・予防法を聞きました。

■自由な生活のツケ!? 不規則生活から高血圧に

そもそも高血圧とは、どのような状態を指すのでしょうか。正木医師はこう説明します。

「血圧とは、心臓から送り出された血液が血管壁を押す圧力のことですが、これが高い状態が高血圧です。日本高血圧学会のガイドラインでは、診察室で測定した血圧が、上(収縮期血圧)が140mmHg 以上、下(拡張期血圧)が90mmHg以上であれば高血圧としています」

大学2~3年目に高血圧が増えるとのことですが、どのような理由が考えられるのでしょうか。

「大学1年生のときは受験の緊張から解放されて一気に気が緩む時期です。初めての一人暮らしを経験する人も多く、毎日のようにファストフードを食べ、自宅で夜遅くまでインターネットやDVD三昧と、生活習慣が急激に悪化することから血圧が変動しやすいと考えられます。

高校生までは高血圧に気付いていなかったけれど、健康診断を受けて初めて分かったと言う人もいます。特に、遺伝的要因がある人は注意が必要です」(正木医師)

続いて正木医師は、若年性高血圧について次のように説明します。

「高血圧は、原因に内臓の病気がある『二次性高血圧』と、特定できる原因がない『本態(ほんたい)性高血圧』の2種類にわけられます。

一般に高血圧と言うと後者の本態性高血圧を指し、遺伝的要素のほか、生活習慣や加齢などの要因が複合的に関係しています。ひと昔前まで20~30代の若者の高血圧では、何かしら理由がある二次性高血圧の割合が多かったのですが、最近は、若者にも中高年同様の本態性高血圧の人が増えているんです」

■塩分のとり過ぎ、肥満、運動不足、喫煙、ストレスに注意

多少血圧が高くても、「若いから大丈夫」と軽視する人もいるかもしれません。正木医師は、

「高血圧は重症になれば別ですが、普段の生活ではどこかが痛くなるとかの自覚症状がないので、放置する人が多いんです。ですが、20代から血圧が高いと30代以降ではより重度になることが明らかです。

それに、高血圧が長く続くと、血管に負担がかかって血管の内壁が硬くなる動脈硬化が進み、そこを流れる血液はドロドロで、脳卒中や心臓病などの病気のリスクが高くなります」と、強く注意を促します。

では、血圧を下げるためには、どうしたらいいのでしょうか。

「血圧はその人の食生活や睡眠時間、運動の状態、体型などと深く関わっています。通常は薬に頼る前に、これらを改善する指導、管理を行います。それでも改善しないときや重度の場合には降圧剤を処方します」(正木医師)

さらに、正木医師はこうアドバイスを加えます。

「現時点では高血圧ではない人も、遺伝的要因がある場合は特に、若いうちから予防を心がけることが大切です。次の5つのポイントに気を付けてください」

(1)塩分のとり過ぎ

塩分の過剰摂取は、高血圧の大きな要因です。血液中にナトリウムがたまり、体が水分を蓄えてナトリウム濃度を下げようとするため、血液の量が増加して血圧が上がるのです。

厚生労働省は、18歳以上の成人の食塩摂取量について、男性で1日8g未満、女性で1日7g未満を推しょうしています。ただし高血圧の人は、より少ない1日6g未満を目指しましょう。

日本人の食事は塩分が多めで、気付かないうちにけっこうとっていることがあります。血圧がそう高くはなくても、日ごろから減塩を心がけておくと、年齢を重ねることに伴う血圧の上昇を抑えることができます。

(2)肥満

心臓から送られる血液の量は、体重が増えると増加します。したがって、肥満になると高血圧になります。肥満の要因の一つは、食べ過ぎによるエネルギーの過剰摂取です。糖分を多く含むお菓子や、油脂分を多く含むファストフードを控えるなど、食事の内容に注意をしましょう。

日本肥満学会が発表している適正体重を知る目安のBMI(ボディ・マス・インデックス)を計算しましょう。BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で求められます。この数値が25を超えると肥満です。25未満になるよう減量しましょう。

(3)運動不足

運動不足は肥満の要因の一つであり、心肺機能の低下や血行不良にもつながります。軽い運動、例えば、「速足で歩幅を広くとるウォーキングを1日30分・週に3回以上」などを習慣的に実践するようにしましょう。ただし、運動中は血圧が上昇するので、高血圧の人や合併症のある人は、医師に相談してください。

(4)喫煙

タバコに含まれるニコチンには、血圧を上昇させる作用があります。タバコを吸っている人で血圧が気になる人は、早めに禁煙しましょう。

(5)ストレス

ストレスがあると緊張や興奮を伴い、自律神経の交感神経の働きで血圧は上昇します。できるだけストレスを改善するように意識して行動しましょう。

筆者はいまやメタボ体型であるにも関わらず、飲み会のシメにはラーメン、とんかつにソースだぼだぼ、歩くのは嫌いと、高血圧の道一直線ような生活をしています。近い将来は、いやすでに間違いなく血液ドロドロな状態でしょう。これを機に、これら5つのポイントを少しでも心がけようと決意した次第です。高血圧が心配な人はぜひ参考にしてください。

(福原優也/ユンブル)

取材協力・監修 正木初美氏。日本臨床内科医会専門医、大阪府内科医会理事、大阪府女医会理事、日本内科学会認定医、日本医師会認定スポーツ医、日本医師会認定産業医、正木クリニック院長。

正木クリニック:大阪府大阪市生野区桃谷2-18-9

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