【シドニー時事】オーストラリアのアボット前首相は8日夜、豪メディアに対し、「西洋文化は、神の名の下に殺人を正当化するイスラム文化に勝る」との見解を示した。イスラム教が過激派組織「イスラム国」など過激主義を生む土壌になっており、改革が必要だとも主張。「イスラム教徒への侮辱だ」と住民らが反発するなど、波紋が広がっている。

 アボット氏は熱心なカトリック教徒で知られる。イスラム社会では政教分離が実現されていないなど「内部に大きな問題を抱えており、改革が必要だ」と訴えた。首相在任時にはテロ対策強化を進め、「イスラム国」掃討を狙った空爆参加も決めたが、9月の政変で首相の座を追われた。

 豪政府は多文化主義を重視してきた。野党労働党のショートン党首は「社会分断を招く扇動的な発言だ」と非難。イスラム系団体も猛反発した。

 ターンブル首相は火消しに躍起だ。ラジオ番組に9日登場し、「大多数のイスラム系諸国の指導者は過激主義を拒絶している」と強調。「発言はアボット氏の個人的意見」と距離を置いた。