北京の大気汚染、「泥縄対応」のやむなき あとは風まかせ | ニコニコニュース

サーチナ

 北京市では7日午後6時半に、大気汚染の警報がそれまでの「オレンジ」から最もひどい汚染を示す「レッド」に切り替えられた。同警報は10日正午まで続く見込み。中国政府・環境保護部は10日午前0時ごろ、「緊急措置は大気汚染がさらにひどくなる情勢を軽減することに、明らかに効果を示した」と題する文章を発表した。

 中国は、為政者による強権発動をしやすい社会体制だ。同体制の是非は別として、緊急事態が発生した際には、当局が迅速かつより徹底した対策を取りやすいことは事実だ。大気汚染が深刻化した際にも、工場の操業や建設工事の中止、ナンバーにもとづく偶数・奇数の日替わりなど車両の通行制限などを次々に実施する。

 7日に大気汚染指標が「レッド」に引き上げられた北京市とその周辺でも、さまざまな対策が実施された。環境保護部門は12の「督促監督チーム」を対象地域に派遣し、大気汚染軽減のための対策が順守されているかどうか監視・監督したという。

 環境保護部はさらに、中国科学院や大学その他の関連機関の専門家を招集し、今回の大気汚染の原因と対策を検討させた。

 専門家らは、「(汚染緩和に)不利な気象条件と、多くの汚染源が汚染物質が排出していることが重なって、大量の汚染物質が大気中に累積して発生した」との考えを示したという。

 また、汚染物質の由来は多い順に、石炭の燃焼、自動車、工場、土ほこり、その他という。石炭燃焼については、中小の旧式ボイラーによるものが多い。自動車については、ディーゼル車の場合、1台当たりの排出量は大きいが、ガソリン車の方が台数が多いため、通常の状態ではガソリン車の影響が大きいと考えられる。

 工場は北京市周辺にある製鉄、石油化学、建材製造工場によるものが多かった。つまり、北京市内における汚染物質の排出については、「第1に石炭、第2に自動車」と言えるという。

 北京工業大学で環境・エネルギー工学を専門とする程水源教授は、「レッド警報発令後に取った対策により、汚染物質の排出量は平均で30%減った。もし対策を取らなかったら、PM2.5の濃度は10%前後、高くなっていただろう」との考えを示した。

 専門家らは深刻な大気汚染が発生してから単独の都市が排出物抑制の措置を取ったとしても、大気の質を改善するのは難しいと指摘。多くの都市が提携して方針を定めた緊急対策を取ってこそ、汚染物質の排出を有効に低減できると主張した。


**********

◆解説◆


 7日の大気汚染の深刻化を受け、関係当局が汚染の軽減のために懸命に努力したことは認めてよいだろい。しかしそれにしても、「泥棒を見て縄をなう」の感は否めない。

 汚染物質の排出量そのものを減らす「原因療法」に時間と資金がかかることは理解できる。人々への健康被害を最小限にするためには、「対症療法」も必要であることは分かる。

 しかし、今さらになり「北京市単独の緊急対策では効果が期待できない」という指摘がなぜ、今さらになり注目されるのかと思えてならない。

 専門家らは、深刻な汚染が発生する前に、「早期予測、早期警戒、早期の対策実施」を求めた。当然の主張だ。長期的な対策を急ピッチで進めるのが困難ならば、せめて中期的な対策は必用なはずだ。そうでなければ結局は「汚れた大気を風が吹きはらってくれるのをたのにみする」ことになる。

 環境保護部は上記文章に「緊急対策が奏功した」との主張を込めたが、事実上は「不完全な緊急対策しかできていない」ことを示すことになった。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)