現役郵便局員たちが告白座談会。マイナンバーが遅れたウンザリな理由 | ニコニコニュース

現役郵便局員たちが告白座談会。マイナンバーが遅れたウンザリな理由
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10月から全国民への配達が始まった、マイナンバー通知カード。12月に入った今も、配達を担当する郵便局員たちは、週休ゼロ日の激務にさらされている。

そして、当初の予定より配達時期が大幅に遅れていること、全国各地で誤配が相次いでいることから世間の風当たりも強い。今回、その渦中にいる配達員3名に通知カード配達のリアルな内情について語ってもらった。

●座談会メンバー

配達員Aさん(50代) 勤務歴35年のベテラン配達員。所属する東京都D区の郵便局の通知カード配達総数は約9万通。

配達員Bさん(40代) 勤務歴10年の中堅配達員。東京都E区の郵便局所属。配達総数は約13万通。

配達員Cさん(20代) 勤務歴3年の若手配達員。千葉県F市の郵便局に所属。配達総数は「知らない」とのこと。

―通知カードの配達状況はどんな感じですか?(12月3日時点)

配達員A うちの局では初回分の配達はすべて完了しましたが、3割程度が不在で戻ってきています。今は夜間に集中する再配(※夜8時以降の再配達)の対応で大忙し。再配達依頼で局内の電話も鳴りっぱなし。郵便局のゆうゆう窓口も、深夜0時近くまで直接、通知カードを取りに来る人で行列ができる日もありますね。

配達員B ウチは全13万通のうち、まだ初回配達が終わってないところが3割ほど残っています。それも厄介な集合住宅ばかり…。上司から「年賀状の集荷が始まる12月14日までには終わらせろ!」とハッパをかけられているところで…。

配達員C ウチもまだ2割くらいは残ってるみたいです。

―日本郵便の発表によれば、東京都葛飾区や千葉県四街道市など、配達が12月中旬以降にずれ込むところもあるみたいですね。なんでこんなに遅れたんでしょう?

配達員B 通知カードは各自治体から国立印刷局へ、カードに記載する情報を送って印刷をかけますが、そのデータの作成作業が遅くなったのでしょう。データ作成は外部の業者に委託するケースも多いようですが、聞いた話ではデータ入力に不備があって、印刷が一時ストップしていた自治体もあったみたいです。

配達員A たぶん、年内に届かない人が相当数出てくるでしょうね。配達に行っても半数程度は不在で郵便局に戻ってきちゃいますから。

――当初、国は11月中に配達を済ませるといってたのに…

配達員A そんなの絶対ムリムリ! 10月時点でわかってたことです。

配達員B そうそう。国が立てた元々の配達目標にムリがあった。ムリとわかっていて、国に何も言わなかった会社(日本郵便)も弱腰すぎる!

配達員C まぁ、しょうがないっスよ(苦笑)。

―日本郵便はマイナンバー配達のために新規雇用しなかったんですよね。配達先での本人確認や印鑑受領など作業が難しくて新人には任せられないからだという理由でしたが。

配達員B それもありますが、簡易書留の配達に使用する携帯端末(配達時に配達情報を入力する端末機)が足りないってことの方がデカイと思います。

配達員A 端末機が足りないから配達要員に十分な人を割けられなかった。何台か買ってくれたらもっと早く済んだのに。国家プロジェクトなんだから、そこはケチるなよと。

―皆さん、配達そのもの以外はトラブルなく順調なほうでした?

配達員B 全く…。ウチの局では当初、10月20日に配達開始、11月27日までに完了させるって配達計画があったけど、印刷局から通知カードが搬入されたのが11月21日…。1ヵ月も遅れました。その間、『○月○日に搬入されます!』って集配部の部長がアナウンスするんだけど、搬入当日になって『1週間遅れます』と延期になり、数日後にまた『2日後に搬入決まりました!』と言われ、いよいよかと待っているとまた搬入当日に『1週間遅れます…』と。これが3~4回続きました。

配達員C オオカミ少年みたいっスね(笑)。さすがにそれはなかったなー。

―1ヵ月遅れでの搬入後、どうなったんですか?

配達員B 遅れを取り戻すために配達計画が見直されました。ざっくり言えば、搬入後3週間程度で初回配達を完了させる計画が2週間程度に短縮されたんです。その結果、超勤特別条項(通常4時間の残業時間を5時間に延長する条項)が発令され、休日出勤を要請され、計画年休をずらしてくれと懇願され…。

―計画年休?

配達員A 一般企業でいう年次有給休暇のことですよ。郵便局では最大で年間20日使え、年度初めに年間カレンダーに年休の希望日を1年分、書き込む風習があるんです。「12月のこの日に休みます」といった具合に。それが通知カードの配達期間とかぶってしまった配達員に「年明け以降にズラしてくれ」と要請された、と。私もそのひとりで、12月に予定していた家族旅行をキャンセルせざるをえなくなりました。

―ハナからテンション下がりますね…。で、通知カードが届いて、ようやく配達開始?

配達員B すぐにはムリ。搬入された通知カードの数が、事前に伝えられていた通数と合致しているかどうかを照合しなければなりません、手作業で…。

―手作業って、めちゃくちゃ大変なんじゃ?

配達員B ウチの場合、約10万通分ですから1~2日はかかります。当初は専用の機械で重量を測って照合する予定だったんですが、これがうまくいかなくて、手作業での確認を強いられることになったんです。これも配達が遅れた原因ですね。

―そこで体力と精神力をすり減らした後、配達開始…?

配達員A まだです。手作業での確認を終えたら、すべての通知カードを7桁区分機に掛けます。幅10mほどある巨大な機械で、そこに郵便物を入れると郵便番号から宛先住所の町名、丁目、街区、番地、集合住宅の部屋番号までを自動で読み取り、道順組み立て処理を行ない、最も配達効率のいい順番に郵便物をバババッと並べてくれるんです。

―すごいメカですね! そんなハイスペックな機械が郵便局に…。

配達員C これにはボクも驚きまして。

―で、ようやく後は上から順番に配達していけばイイと。

配達員A まだです。市役所から搬入された通知カードの中には、受取人不明のモノも結構含まれていましてね。自治体で手続きをせずに引っ越したり、死亡していたり、行方不明になったりと、いろんな事情がありまして…。こうした受取人不在のモノを局内では〝事故郵便物〟と呼んでいるんですが、配達前にこれを抜き出しておく必要があるんです、これも手作業で…。

―そこも手作業!? 一体どうやって…?

配達員B 局内には自治体の住民票データよりも正確な住民情報をファイル化しています。日々の配達で各世帯の事情はわかっていますし、自治体に転出届を出さずに引っ越した人でも郵便物の転送依頼は出しますから、郵便局が持っている住民情報はより現実に即しているというわけです。

そのファイルと通知カードを1件1件、手作業で照合して事故郵便物を抜き取っていく。通常の業務後、深夜近くまでかけてこの作業を2日続けて行ない、ウチの局では約10万通のうち200通ほど見つかりました。

―配達を始めるまでに現場でそんな苦労があったとは知りませんでした。

配達員A 通知カードの搬入から配達開始までに3~4日、遅いところだと1週間程度はかかってしまうというわけです。

配達員C まぁ、仕事が増えれば、稼ぎも増えるわけで、それはそれで大歓迎っすけどね。

●この続き、ますますブラック化する過酷な現状については明日配信予定!

(取材・文/興山英雄)