靖国神社爆発音事件を賞賛!? 中国では英雄視する声も | ニコニコニュース

靖国神社爆破事件の中国人の反応は? (C)孫向文/大洋図書
デイリーニュースオンライン

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。11月23日に発生した靖国神社爆発音事件(以下靖国事件)は中国でも大きく報道されました。12月9日に容疑者として韓国人男性が逮捕されたことにより、事件は終結へと向かいましたが、中国国内のネットでは容疑者の行動に対し様々な意見が寄せられています。

容疑者を英雄視する意見が多数

 靖国神社は、かつて中国を侵略した旧日本軍の兵士たちを祭る場所ということから、多くの中国国民たちにとって憎悪の対象となっています。そのため、中国のネット上の意見を見てみると、

「本物のヒーローだ!熱血韓国男児!グッジョブ!」
「かっこいい!正義の味方然とした顔立ちだ!」
「俺は、棒子(韓国人の蔑称)は嫌いだが、やっと男前を見つけた」

 といった容疑者を英雄視する意見が多数。

 また、中国人と比較した意見もありました。

「中国人の売国奴は日本製のトイレを爆買いするが、韓国人の愛国者は日本のトイレを爆破する! 日本経済に貢献する中国人どもはあの韓国人を見習え!」
「中国人はネットで日本の悪口を書き連ねるだけだが、韓国人は実行力がある。そこが尊敬できる点だ」

 韓国はかつての植民地政策による影響などから、中国と同じく反日感情が強い国です。そのため竹島占拠など、以前から日本に対し数々の犯罪的行為を繰り返しています。中でも前韓国統監だった伊藤博文を暗殺した安重根(大韓帝国時代の朝鮮の独立運動家)は、「抗日活動の象徴」として韓国では英雄視される存在です。

 中国国民の中にも安重根の行動を賞賛する者は多く、「昔、韓国には伊藤博文を暗殺した英雄もいたな!」などと、今回の容疑者を安と同一視する意見もネット上に寄せられていました。

 かつて安が伊藤博文を暗殺した中国のハルビン市の駅内には、「安重根記念館」が併設されており、そこに設置された安の銅像の前で記念写真を撮る中国国民は後を絶ちません。

 記念館が開設した当時、僕は中国国内の企業に勤めていたのですが、当時の職場の同僚が、僕が親日家だということを知っていた上で、わざと安重根を尊敬に値する人物だと訴えてきたことがありました。僕が彼は単なるテロリストだと反論すると、同僚は侵略国の指導者を殺害することは正義の行為だと断定し、僕を売国奴だと罵倒したのです。

 彼は普段から韓国製品を愛用するなど親韓感情が強い人物であったため、このような態度をとったのでしょうが、最近ではK-POPや韓流ドラマの影響から中国国内では親韓家が増加しており、それに比例してますます反日感情が高まっています。

 2010年に訪日した際、僕は一度自分の目で確かめるべきだと考えて靖国神社に訪れました。その際、中国人の観光客が意外と多かったのが印象的でした。日本に定住後も、僕はしばしば靖国神社に訪れているのですが、そのたびに境内では必ず中国人を見かけます。そして旧日本軍に関する様々な資料が展示された「遊就館」という施設の展示を見た際には、これまでの太平洋戦争に対して抱いていた思いが少し変わりました。

 中国においては、歴史の授業では「日中戦争」しか教えられていません。ですが、この施設には、日本が硫黄島の戦いをはじめとして、旧日本軍が数々の防衛活動を行ったことを示す展示物や史料や本などが置かれていたからです。靖国神社に来てみたことで逆に反日感情が和らいでいく中国人や韓国人も多いのではないでしょうか。

 もともと韓国は言論の自由が保障された民主主義国家のはずですが、強制連行など、従軍慰安婦の歴史を捏造と指摘した書籍を手がけた大学教授を在宅起訴するなど、旧日本軍を肯定するような意見は完全に黙殺されています。僕はこのような韓国の様子を見て、「この国は本当の意味では民主化していない」と感じると同時に、卑劣なテロリストにすぎない安重根や靖国事件の容疑者を、「勇敢な人物」と賞賛する中国国民たちの態度に対しては呆れています。

 ただ、わずかながら希望もあります。現在はインターネットの普及などにより、旧日本軍に関する真実の情報は、中国国内にも徐々にではありますが浸透しています。

 加えて中国人はもともと個人主義者が多く、自分たちに実害のない靖国問題に対し無関心な層が年々増加しているのです。中国のネットを閲覧すると、「トイレなんか爆破して何が楽しいんだ?」と靖国事件の容疑者を揶揄したり、「中国政府の愛国教育の賜物か!」とテロ活動を擁護する意見が多数寄せられたことを危惧する声もいくつかありました。

 僕は多くの中国国民が「真実の歴史」を知り、彼らのような進歩的な感性を持つ層が増加し、中国が民主化するきっかけとなることを期待しています。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)

(構成/亀谷哲弘)