ドラマでよく見る誘拐シーンは科学的にはウソだった? タオルをかがせて眠らせるのはかなり難しいことが判明 | ニコニコニュース

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TOCANA

【ヘルドクター・クラレのググっても出ない毒薬の手帳 クロロホルム】

 タオルに薬品を染みこませ、被害者の口元に押さえつけると、あらあらたちまちグッタリおとなしく…。そんな悪役ロマンあふれる薬品として、映画やドラマ、マンガなどにたびたび登場するクロロホルム。

 では、果たして本当に、あれほど簡単に意識を失わせる効果がクロロホルムにあるのでしょうか?

 今回はさまざまな作品でお馴染みの“あの効果”があるのかどうかを徹底検証!! その歴史的背景から掘り下げて、現実とフィクションの間にどれほど深い溝があるのかを紐解いていきましょう。

 さすがに無いって? それはどうなのでしょう…?

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■クロロホルムはかつては麻酔薬として使われていた

 クロロホルムが生まれたのは、ちょうど『切り裂きジャック』などの話題がヨーロッパをせっけんしていた19世紀半ば。いわゆる、科学文明が夜明けを迎えようかという時期です。ドイツの化学者であるユストゥス・フォン・リービッヒをはじめ、アメリカやフランスなどでは、エタノールにさらし粉を反応させたり、塩素とメタンを直接反応させたりなど、有機化合物を合成するさまざまな実験が繰り返されていました。そして、ついにクロロホルムの製造法が発明されます。これは、有機溶剤の登場ともいえ、その後さまざまなかたちで利用されるようになるのです。

 1847年、イギリスの医師であるジェームズ・シンプソンがクロロホルムの麻酔作用に目をつけ、これを用いた全身麻酔手術を成功させました。

 ちなみにこのジェームズ・シンプソン博士を調べると意外なことがわかります。

 ジェームズ・シンプソン博士は英国のエディンバラ大学の教授でもあり、『シャーロック・ホームズ』シリーズの作者でも知られるコナン・ドイルは当時、その大学で氏の講義を受けているのです。

 これがきっかけとなり、後の『シャーロック・ホームズ』シリーズの悪役が、相手を都合よく眠らせる薬…として用いるヒントになったのかもしれません。

 もしかして名探偵ホームズの宿敵ジェームズ・モリアーティのジェームズって…など、ほかにも色んな想像が広がってしまいます(笑)。


■ドラマのように眠らせるのは難しい?

 当時のクロロホルム麻酔は、現代とさほど変わらず、空気とクロロホルムをほどほどに混合したガスを長時間吸わせて、徐々に意識を失わせるというもの。

 映画やドラマのようにタオルにしみこませて無理やりかがせるとなると、相当量の呼吸を相手にさせなければなりません。そのためには、すさまじい腕力かつ、やさしく(笑)押さえつけ、吸引させ続けないといけません。なかなか、映画やドラマのように使うのは、難しい気もしちゃいますね。

 また、大量に吸引させてしまうと、自律呼吸がシャットアウトされて(呼吸抑制が強い)そのまま窒息死する可能性も高いです。なので、分量を増やせばOKなんてわけにもいかないというのが現実です。つまり、ドラマのように使うのは結構難しい。これが結論です。