名古屋大付属病院(名古屋市)は21日、別の病院で腎臓がんの手術を受け、経過観察で定期検査していた患者の肺がんの兆候を、約3年半にわたって見逃していたと発表した。患者は2012年6月に重度のがんと診断され、約2年後に死亡した。

 外部の専門家を交えた名大病院の調査委員会は「初期の段階で発見できた」と指摘。病院は医療ミスを認め、遺族に賠償する方針を示した。

 調査委の報告書によると、患者は40代の男性で、07年5月に手術を受けた。同11月から年2回、転移がないか調べるため名大病院でコンピューター断層撮影(CT)検査を受診していた。

 転移はなかったが、08年10月の検査で左肺に別のがんの可能性のある影が写っていた。09年5月の検査では影が大きくなっていたが、放射線科の専門医も主治医も気付かなかったという。

 報告書は「遅くとも09年5月に異常を認識できたと考えられ、当時治療していれば根治できた」と指摘した。記者会見した石黒直樹院長は「深く謝罪し、二度と起きないよう事例を継承する」と述べた。