フジ、大みそか格闘技中継に「黒い疑惑」!コンプラ問題&中止騒動の関係者が主導か | ニコニコニュース

「RIZIN FIGHTING FEDERATION HP」より
Business Journal

 2015年12月31日、かつて一世を風靡した大みそかの格闘技イベントが復活する。選手、スタッフともに全盛期に活躍したメンバーを集め、フジテレビでの生中継も決定した。

 とはいえ、国内の格闘技業界の景気は冷え込んでいる。そのきっかけとなったのは、06年に電撃的に格闘技中継を取り止めたフジ自身だ。当時、世界的なイベントだった「PRIDE」がフジにより放送されていたが、フジは突然放送を中止し、その理由について、各メディアでは「コンプライアンス(法令遵守)の観点から」と報道された。

 しかし、フジはかつての関係者と手を組み、大金をかけた興行を再び行おうとしている。大みそかの格闘技イベントの裏で、何が起こっているのか。ビジネスの観点から探ってみた。

●コンプライアンスどころではない、フジテレビの現状

 この秋、突然「RIZIN FIGHTING FEDERATION」という団体が立ち上がり、12月29~31日にさいたまスーパーアリーナで格闘技イベント(大会を行うのは29日と31日の2日間)を開催すると発表した。

 そして、31日の大みそかにはフジが中継番組を放送することも、併せて発表された。「RIZIN」の代表を務める榊原信行氏は、「PRIDE」を手がけた興行会社・ドリームステージエンターテインメントの代表取締役だった人物である。また、「RIZIN」のスタッフは、以前の「PRIDE」のそれとほぼ同じといわれている。

 さらに、「PRIDE」の元統括本部長で、最近ではバラエティタレントとして活躍している高田延彦も、「RIZIN」の統括本部長として“復帰”を果たした。事情に詳しいテレビ業界関係者は、こう語る。

「大みそかの企画をフジに持ち込んだのは、PRIDE時代の関係者という話です。ただ、今回は以前にPRIDEなどの番組を制作していたスポーツ班ではなく、バラエティ班が担当するようです」

 近年のフジは低視聴率にあえいでおり、業績も悪化する一方だ。昨年の大みそかは人気アニメ『ONE PIECE』を放送したものの、視聴率3.3%と民放の中で最低を記録している。もはや、コンプライアンス問題などを気にしている場合ではなく、何がなんでも視聴率を取らなければならない状況なのだ。

 そこで、かつて世界最強といわれたエメリヤーエンコ・ヒョードルや、グレイシー一族に強いことから“グレイシー・ハンター”として活躍した桜庭和志など、過去の有名選手を呼び寄せてマッチメイクを行った。

 さらに、03年の大みそかに最高瞬間視聴率43.0%を稼ぎ出して「打倒紅白」を果たした黄金カード「曙vs.ボブ・サップ」の再戦まで決めている。

「03年の『曙vs.サップ戦』はTBSで放送されました。他局の対戦カードを持ってくるところを見ても、もはやフジはなりふり構っていられないのでしょう。曙もサップも桜庭も今やプロレスラーで、純粋な格闘技の試合としての注目度は低いといわざるを得ません。運営側も、視聴率が取れればなんでもいいのか、引退したボクシングの亀田興毅・大毅の兄弟や肉体系のタレント、挙げ句の果てに清原和博にまで声をかけているみたいですよ」(テレビ業界関係者)

●「RIZIN」にパチンコマネーやオイルマネーが流入?

 前述したような有名選手をリングに上げるためには、潤沢な資金が必要となる。フジからはそれなりの放映権料が流れてくるにしても、立ち上げたばかりの会社に資金があるとも思えない。やはり、バックには有象無象のスポンサーがついているともいわれる。格闘技業界の関係者が、そのあたりの事情を説明する。

「かつて、格闘技興行のスポンサーといえば、パチンコ系メーカーが筆頭に挙がっていました。今回の『RIZIN』も吉本興業と提携したり、AKB48のパチンコ機を販売している京楽産業からの協賛を得ています。ただ、それだけでは、これだけの規模の大会を開くことはできないはずです。

 一説には、榊原さんが懇意にしている格闘技好きのアラブの王子を通じて、オイルマネーが流入しているともささやかれています。あとは格闘技業界と関わりの深い、さまざまな企業の後援もあると思います。その中には、表立って名前を言えないような会社もあるのではないでしょうか」

●さまざまな難関が待ち受ける「格闘技ビジネスの復興」

 今回の「RIZIN」には、テレビ映えする有名選手だけでなく、「K-1」やシュートボクシング、キックボクシング、空手など、さまざまな格闘技団体が選手を派遣する。

 また、ロシアやブラジルなど国外の団体とも協力関係を築き、未知の強豪選手が多数参戦するという。そこまでする理由はただひとつ、「格闘技ビジネスの復興」のためである。しかしそのためには、乗り越えなければならない、さまざまな壁が存在するという。

「今、格闘技業界はアメリカの『UFC』が制覇していて、どの団体も対抗できていません。ビジネス規模の差は圧倒的で、すべての団体が集まったところで『打倒UFC』は無理でしょう」(格闘技業界関係者)

 そもそも、格闘技興行で稼ぐためには、入場料などのゲート収入、グッズ収入に加え、テレビの放映権料やPPV(ペイ・パー・ビュー/動画配信サービスなどで用いられる課金方式)放送の収益、そしてスポンサーからの協賛金という旧態依然のスキームしかない。残されているのは、インターネットの動画配信ビジネスだが、これもUFCが突出しており、特に日本では同市場の開拓は遅れている。

「もちろん『RIZIN』もネット配信を考えているはずですが、今回のようにテレビ局がかんでくると、それが逆に足かせになってしまい、展開が難しくなる。来年以降の継続開催を考えているのであれば、毎回会場が満員になるくらいの人気を維持しながら、さらに新たな収益モデルを構築していかないと厳しいでしょう」(同)

 格闘技興行は、魅力的なカードを組み、新たな選手を育てながら継続して利益を上げることで、初めて「ビジネス」となる。今回の「RIZIN」は盛大な打ち上げ花火には違いないが、一格闘技ファンとしては、それだけで終わらせないでほしいものだ。
(文=ソマリキヨシロウ/清談社)