トマトハウスから復興を=被災者雇用で初出荷―宮城・気仙沼 | ニコニコニュース

東日本大震災で被災した宮城県気仙沼市で、最先端の巨大トマトハウスが完成し、初めての出荷作業が最盛期を迎えている。被災者約30人が雇用され、被災農地活用の足掛かりとしても期待されている=11月18日撮影【時事通信社】
時事通信社

 東日本大震災で被災した宮城県気仙沼市で、最先端の巨大トマトハウスが完成し、初めての出荷作業が最盛期を迎えている。仮設住宅などから通う被災者約30人が雇用され、被災農地活用の足掛かりとしても期待されている。

 復旧工事の車両が行き交う気仙沼市小泉地区で、ひときわ目立つ2ヘクタールのビニールハウス。20度以上に保たれ汗ばむほどのハウス内では、整然と並ぶ4万株の苗木から、従業員らが赤く色づいた果実を選び取る作業を続ける。

 ハウスを建設したのは地元で被災した3人の農家。農業法人「サンフレッシュ小泉農園」を設立し、国などの補助を受けて今夏に完成させた。経営者の一人、及川衛さん(54)は「雇用の基盤をつくることができた。ここから復興が進み、地元のシンボルになれば」と意気込む。

 大玉のトマトは、地元でサーフィンが盛んなことから「波乗りトマト とまたん」と名付けられ、10月〜翌年7月まで収穫される。土を使わない養液栽培と、光合成の状態が分かる最新機器の導入で、1シーズン500〜600トンの出荷を目指す。

 従業員の金野和子さん(56)は「子供たちが将来、地元で働くための手伝いになれば」との思いから、ハウスでの仕事を始めた。津波で失った近くの自宅は、同じ場所に建て直した。「新しいことを始めれば、ふさいだ気持ちも何か変わる気がした。みんな1年生。毎日が新鮮で楽しい」と話す。

 ハウス周辺には震災前、水田が広がっていたが、津波でトラクターなど高価な農機具が流され、自力で再開できる農家はほとんどない。来春からは小泉農園を主体に、農地を借り上げた大規模な作付けが予定されている。気仙沼市の担当者は「農家が減少していく中、新たな担い手となってくれれば」と期待を寄せている。