中国で「南京大虐殺」の政治利用批判が拡大…露骨な「反日」に疑問の声も | ニコニコニュース

露骨な反日プロパガンダに疑問を持つ中国人も… (C)孫向文/大洋図書
デイリーニュースオンライン

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。1937年12月13日は、日中戦争時の中国の南京市内において、旧日本軍の兵士たちが多くの一般市民を虐殺した、いわゆる「南京大虐殺」が発生した日とされています。

 南京市が所在する江蘇省では、1994年からこの事件に対する追悼式が行われていたのですが、2014年2月27日、中国の国会にあたる全国人民代表大会の場で、習近平国家主席が12月13日を「南京大虐殺犠牲者の国家哀悼日」に制定しました。それにより、この日には南京以外の中国全土において南京大虐殺の追悼式が行われるようになったのです。

 また、これに先立つこと2015年10月にはこの事件に関する資料が、ユネスコにより「記憶遺産」として登録されましたが、南京大虐殺は習近平政権がすすめる抗日政策の象徴として露骨に政治利用されているのです。

悲劇のヒロインとして祭り上げられるアイリス・チャン

 そして、このプロパガンダの上で最も利用されているのが、中国系アメリカ人のジャーナリスト・故アイリス・チャン(張純如)でしょう。彼女は生前、南京大虐殺に関する研究を行い、1997年には「The Rape of Nanking」という世界的なベストセラーとなった書籍を出版しました。

 しかしのちの調査により、The Rape of Nankingには多くの捏造や事実誤認があることが判明し、チャンは多方面から非難を受ける結果となります。その後チャンは重度のうつ病を発症し2004年に拳銃自殺を遂げたのですが、中国では彼女の自殺の原因が南京大虐殺を否定する日本の保守派の圧力によるものと報道されているのです。

 チャンが残した遺書を読んでみるとそのような記述はないのですが、中国の機関メディアは、彼女を日本の魔の手により殺された悲劇のヒロインとして祭り上げています。南京市に所在する南京大虐殺記念館の前にはチャンの銅像が設置され、「五毛党」(中国政府のプロパガンダ的な情報をネット上に書き連ねるネットユーザーの総称)は、こぞって彼女を賞賛する内容の書き込みを国内のSNSやBBSに投稿し、同時に日本の保守派を批判しています。

 この一連の流れにより、中国国内には南京大虐殺を風化させるなという世論が巻き起こり、「この事件は中国人なら忘れてはいけない」、「アイリス・チャンのおかげで日本人の残虐性を思い知った」といった意見がネット上に投稿されています。まさに抗日活動の象徴になっているアイリス・チャンですが、前述のように生前の彼女は、日本側の影響により精神を病んだとは一言も発言していません。

 12月13日、自称歴史愛好家の「周」という人物が、中国のネット上に「南京大虐殺って私と何か関係があるの?」というタイトルの投稿を行い、そこでチャンが中国政府の抗日プロパガンダとして政治利用されていると指摘しました。それにより思想統制される中国国民たちに対しても警鐘を鳴らしました。さすがに中国政府の露骨な反日プロパガンダに疑問を感じる人々も生まれてきているのです。

 中国側は南京大虐殺における犠牲者を「30万人」と発表していますが、当時の旧日本軍の装備では、短期間にそれだけの人数を殺害するのは不可能です。仮に大量虐殺が発生した場合、後日なんらかの証拠が見つかるはずですが、南京市内から大量の白骨遺体が発見されたという報告は今まで一度もありません。

 さらに中国のネットユーザーたちからは、日本の旧社会党党首だった田邊誠が、日本の戦争犯罪に関する資料館を設立することを中国政府に推奨した1982年以前の中国の教科書や歴史書には、南京大虐殺に関する記述は全く存在しなかったという報告が寄せられています。

 史実を詳しく調査せず、安易に南京大虐殺を遺産登録したユネスコの態度に僕は大きな疑問を感じます。そして中国政府や日本の左派系政治家や市民団体が今後、アイリス・チャンを「女神」として掲げ、反日活動をさらに激化させるのではないかと僕は不安視しています。 

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)

(構成/亀谷哲弘)