斎藤工の新たな魅力を引き出した西村喜廣監督作『虎影』BD&DVD発売記念インタビュー | ニコニコニュース

摩訶不思議な忍法に奇怪なキャラクターなど、映画『虎影』は、その昔劇場でワクワクした気持ちを取り戻させてくれる作品だ。主演には今をときめく俳優の斎藤工を迎え、監督は実写映画「進撃の巨人」で特殊造型プロデューサーを担当した西村喜廣氏が務める。そんな本作が、2016年1月6日(水)にBlu-ray&DVDとなって発売。

それを記念し今回は、同作品の魅力を西村監督に語ってもらった。海外でもファンの多い西村監督は、映画に対する日本と海外の違いについても言及。斎藤も驚いたという演出技術も明らかに――。

――早速ですが、近況からおうかがいします。ちょうど先日スペイン・バルセロナで開催した「シッチェス映画祭」へ『虎影』を出品していましたが、現地での反応はいかがでしたか?

「とてもよかったですよ。拍手も鳴り止まず、といった感じで。海外ってシビアでつまらないと感じたらすぐ帰っちゃうんですよ。でも『虎影』は深夜にも関わらずけっこう残ってくれていました」

――日本の観客と海外の観客は違うものなのでしょうか?

「反応をはっきりと表に出すのが海外ですよね。あと、日本では監督の扱いって敷居が高く見られますが、海外だと『面白かったぞ。お前の映画!』って肩を叩いてきたり、すごくフランクなんですよ」

――笑うポイントなども違うのでしょうか?

「向こうは血が出ると笑ったり、拍手です。面白いと感じる部分が日本人とは違うので。一緒に行った主演の(斎藤)工も、観客の反応を見ていて『西村さんが現場でやりたいと言った演出の意味が初めてわかりました』『なんでそれをやりたいのか、今までわかっていなかった。ここで笑いが起きるというツボを全部押さえていたんですね』って言われました」

――面白いですね。具体的にはどの部分ですか?

「どうしてわざわざ首を飛ばすのか、とか、あえて見せなくても流れでわかるでしょ? といった部分を映像化するとか。立て続けに言葉遊びをしたりするのもそうですね。あえて無駄を付け加えるんです。その部分に外国の人はいちいち反応してくれる。あとは海外の場合、最初の5分間で『これはどういう映画なのか』を観客にプレゼンするのが一番重要なんです。日本人はだんだんと盛り上がってくるのを待ってくれるけど、外国人は5分で判断しちゃうから」

――随分と映画を観るスタンスが違うんですね。

「反対に『この映画はこういう態勢で観るんだよ』というのが理解されると、最後までノッてきてくれるわけです。ですから、その部分の作り込みは慎重になります」

――そういえば、シッチェスでは園子温監督と一緒だったそうですね。

「子温は『ラブ&ピース』や『リアル鬼ごっこ』とか、出した作品がたくさんあったので。それでみんなでトークショーもしましたね」

――どういうお話をしたのですか?

「日本の忍者って本当は『虎影』みたいに無茶苦茶じゃないんだよ、とか。あと、観客から『ちゃんと虎影2作れよ!』とか言われたりもしました」

――ご自身のブログでは、現地で『朝まで飲みあかした』と書いていましたね。どんなことを話したのですか?

「(ホテルの)子温の部屋で、子温の奥さんや工も一緒でしたが『お前(斎藤)の貯金はいくらなんだ!?』とか(笑)」

――それは、露骨な(笑)。

「工が『それは言えません!』と答えて、僕と子温が『何で言えないんだ!』と追い討ちをかける(笑)。そうしたら今度は『子温の監督のギャラはいくらなんだ』と飛び火したりして。あとは、僕と子温は自主映画からの付き合いが30年くらいになるので『映画で食えるようになってよかったね話』ですかね。いろいろ話をしましたね」

――映画といえば斎藤さんも相当くわしいですよね。

「めちゃくちゃくわしいですね。あの人、若いころレンタルビデオ屋でアルバイトをしているときに、好き嫌い関係なく端から順番に作品を観ていったそうですよ。だからすごく知識がある」

――なるほど。さて『虎影』ですが、1月6日にBlu-ray&DVDが発売されますね。

「『虎影』は僕の持ち込み企画だったんですよ。忍者ものは子どもから大人まで楽しめるし、海外のウケも良いでしょうって」

――最近の映画ではあまり見かけないパターンの映画だと思います。

「みんなで楽しんで観る映画も必要ですよね。最近は暗くなっちゃうヒーローものも多いから。落ち込んでいるスーパーマンとか見たくないじゃないですか。それはお金をかけてしっとりとした画で撮ればいいんじゃないかと。予算の都合上、日本ではそうもいかないので」

――なるほど(笑)。

「映画って基本的に見世物じゃないですか。映画館から出てきて『面白かったね』と言い合えるのが本質だと思うんですけどね。単純にそれだけを狙うものが最近は少なくなった気もします」

――最近は時代考証もうるさいですしね。

「この時代はこうじゃない! とかね。でも僕はそういう映画は撮りたくないんです」

――「みんなが観れる映画」のために監督お得意の残酷描写はかなり控えたとか。

「それはすごく意識をしましたね。ちなみに『虎影』の撮影って、映画『進撃の巨人』の準備期間に行われたんですよ。『虎影』が終わって、1カ月後に『進撃』がクランクインで。その間に『進撃』の樋口(真嗣)監督に聞いたら、『時代劇は大丈夫なんだよ。時代劇は日本刀を持っていることはみんなわかっているから映倫がユルい』(笑)。じゃあ首を斬るシーンもあるけど、そのまま出しちゃおう! って」

――『進撃の巨人』もPG12指定(12歳未満の鑑賞には保護者同伴が望ましい作品)じゃ効かない残酷描写もありますよね(笑)。

「これこそR15(15歳未満は鑑賞不可)だろうって。僕、あっちはすごく過激にやりましたからね」

――ちなみに、『虎影』はかなり強烈なキャラクターが満載ですね。

「全てにおいて異形のキャラクターは僕が特殊メイクや造型をやっている分、こだわりは多いですね。『虎影』は、時代設定がある意味無茶苦茶で奇抜な忍者ものですが、だからこそ世界観を安定させるためにキャラクター作りは重要になります」

――影響を大きく受けた『仮面の忍者 赤影』も、時代設定が無茶苦茶でしたもんね。UFOが出てきたりとか。

「そうですね。予算の都合がつかなかったけれど、本当は巨大な怪獣も出したかったんです」

――続編で登場させたいですね。

「やりたいんです。お金が欲しいんです(笑)」

――Blu-ray&DVDが売れれば(笑)。

「『虎影』は誰もが楽しめる忍者ものになっています。主演の斎藤工もすごく魅力的に映っているし、ワクワクした気持ちを取り戻せるような作品なので、楽しみに観ていただけるとうれしいですね」

映画『虎影』のBlu-ray&DVDは、2016年1月6日(水)リリース!


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