リストラ候補から一発逆転は可能か? | ニコニコニュース

『人事評価の裏ルール』(溝上憲文著・プレジデント社)
プレジデントオンライン

リストラの対象者の明確な基準など、人事部のホンネを徹底的に洗いだした溝上憲文さんの最新刊『人事評価の裏ルール』へ解説文を寄せたのは、リストラ候補から一念発起して、社内起業での功績が認められ、シチズン時計株式会社で史上最年少の上級顧問に就任した経験を持つ俣野成敏さん。目先の評価に踊らされることなく、ハイパフォーマンスで会社に貢献し続けるために意識するべきこととは?

■30歳でリストラ対象。どう働き方を変えたのか?

会社はいかに社員を評価しているのか? さらには、どのような基準でリストラ対象を選んでいるのか?

日々、漠然と働いているだけでは、会社のホンネ=「人事評価の裏ルール」というものはなかなか見えてこないのかもしれません。

以前は企業がリストラを実施する際に、対象者を「輪切り」にして、その中で選定していくことが一般的な傾向でした。ところが、今は業績に関わらず、企業がリストラを実施していく時代に突入しています。「赤字だからリストラが始まる」「黒字だから安泰」とはいかなくなってきているのです。

私自身、『プロフェッショナルサラリーマン』という著書にも記したように、30歳のときに早期退職のリストラ募集要項の資料が配布された経験があります。

当時の私は10年後の自分の姿におびえていました。30歳でリストラ候補となるのなら、このまま働いて40代になったら先はない、と。そこで仕事に対する考え方をガラリと転換し、社内ベンチャーの創業に飛び込み、グループ企業130社の現役最年少役員へ抜擢され、40歳で本社召喚、上級顧問への就任、最終的に独立するという道を歩むことになりました。30歳の時には今後の行方におびえていた男が、40歳の時にはいくつかの選択肢の中から独立起業という道を選ぶに至ったのです。

「リストラ候補」から「独立」へ。ある意味、極端な転換かもしれません。ただ、意識したのは「サーブをするだけの働き方から、サバイバルする働き方へシフトする」ということでした。サーブとは、どうやって上司からの指示に臨機応変に応えるか、どうやって奉仕するかという働き方。バブルが弾ける前まではこのような考え方で問題はなかったと思います。ただ、これからは「積極的に会社に残って働く」時代に突入しています。残るためには、二種類の道しかないと私は考えています。

一つは独立する気満々、独立を前提とした働き方。将来、独立するつもりで積極的に残るというスタイル。自分が独立するために必要なスキル、人脈を身につけていく。

もう一つは、徹底的に勝ち馬に乗るというスタイル。新しい事業に移る、社内公募に手を挙げる、出世しそうな上司に取り入る……。まさに「スーパーイエスマン」という、上司をサポートする役割に戦略的に徹していく。もし仮に、その勝ち馬となる上司が順調に出世していかなったとしても、悲観する必要はありません。社長にまでのぼりつめなかった、経営陣にならかったとしても、例えば子会社の社長になるようなケースもある。そこで今までのサポートが効いてくるのです。

以前、『プロフェッショナルサラリーマン実践Q&A編』の巻末で漫画家の弘兼憲史先生と対談させていただいたときに、「出世する人は、どんな状況でも誰かが引っ張り上げている」とおっしゃっていたことがあります。そのような「引っ張りあげてくれる誰か」を、きちんと見極めてその人に徹底的に尽くす、ついていく。その人がこけたら自分の見る目がなかったのかもしれないけれど、自分よりうまいこけ方をするはずです。

漠然と働いていくのではなく、積極的に、戦略的に働いていく。このような考え方のほうが、その上司のできてないところを自分が補うという意味で自分の強みを発揮しやすくなります。さらに、その上司のいいところを吸収することで成長できて、「人事評価の裏ルール」に抵触せず、波に乗って働いていけるようになれるのです。

※本連載は書籍『人事評価の裏ルール』、解説からの抜粋です。

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俣野成敏(またの・なるとし)
1993年、シチズン時計株式会社入社。リストラ候補から一念発起。社内起業での功績が認められ、33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢、さらには40歳で本社召喚、史上最年少の上級顧問に就任する。この体験をもとにした『プロフェッショナルサラリーマン』を筆頭に、これまでの著作の累計は26万部を超える。2012年独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設してプロフェッショナルサラリーマンの育成にも力を注いでいる。
※俣野成敏オフィシャルサイト http://www.matano.asia/

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