コミケ共同代表、“仲間が集う晴れの日”40周年を語る「誰も想像していなかった」 | ニコニコニュース

今年40周年を迎えたコミックマーケット (C)oricon ME inc.
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 今年40周年を迎えたコミックマーケット(コミケ)。本日29日より開催されている『コミケ89』は、参加サークル数が3万5000、出展企業は130社。毎回来場者数は50万人を超える国内屈指のイベントへと成長を遂げたコミケを運営するコミックマーケット準備会・共同代表の市川孝一氏に今の想いを聞いた。

【写真】『コミケ89』にコスプレイヤー“デブライブ!”が登場

◆地道に続けてきた結果、来場者50万人に

――今年40周年を迎えました。89回を迎えて、ここまで大きくなったことに対していまどのように感じていますか?


【市川】 もちろん最初から大きかったわけではなくて、小さな会議室からスタートしていまに至るわけです。地道に続けてきた結果、50万人という来場者が集まるイベントに育っていきました。続けていくこと、場を維持していくことがとても大事だと思います。漫画、アニメ、ゲームのファンが日本にこんなにたくさんいたんだというのが実感です。

――40年前、ここまでの大きさになることは予想できましたか?


【市川】 いえ、ここまで大きくなるとは、始めたころは誰も想像していなかったと思います。拡大していくことを目標にするということもなかったです。ただ、続けていくうちに、こうなっていくのかなという予感はあったかもしれませんけど、だからといって目指してなるものでもありませんから。続けてきた結果、ニーズがあって自然にそうなったということです。みんな漫画、アニメ、ゲームが大好きなんです。

――大きくなったことで、コミケが手を離れて独り歩きしていってしまう感覚はありませんか?


【市川】 そういったことはまったくないですね。僕らは“仲間が集う晴れの日”と言っているんですけど、そういう空間だと思います。会場が大きかろうが小さかろうが、昔からその感覚は変わりません。会場が広くなっていって、日数も1日から2日、2日から3日に伸びました。でも、僕らにとってはいつものお祭りであり、いつもの空間です。手を離れる、手が届かないとかそういうことはないんです。実際、会期中はすべてに目が届いているわけではありませんが、スタッフと意思を共有して同じ志を持って楽しくやっています。

――運営側のマーケットへの向き合い方はずっと変わっていないんですね。


【市川】 みんなボランティアでやっています。仕事をしながらこのコミックマーケットのために時間を作って、みんなで作り上げていっています。だから楽しいですし、うまくいかないことがあれば次はがんばろうと思いますし、みんな前向きな姿勢で参加しています。

◆混雑のなか並ぶことがコミケの楽しみのひとつ

―― 一方で、大きくなることで待ち時間が長くなったり、混雑ぶりがすごかったりしますが、ファンの方から声を受けたりすることはありませんか?


【市川】 ここ最近ずっと同じ規模でやっていますが、ほとんどないですね。会期が2日から3日に増えたときは、3日間だと行きにくいという声もありましたが、ここまでの規模になったいまはこのやり方で定着しています。もし、日数を3日から4日に増やしたり、会場が変わったりすることがあれば、個別には声が上がるということもあるかもしれませんが。

――いま入場するのにもすごく並びますが。


【市川】 たしかに、混んでいて入りにくい、会場が広すぎるとは言われたこともあります。でも、だんだん慣れてきていますし、並ぶことがコミックマーケットにとってはひとつのイベントになっているんです。駅を降りて会場まで並んで、会場に入ってまた並んで、参加する。そうやって並ぶことを、来た段階でみんなが楽しみのひとつとして考えてくれていると思います。目の前で目当てのアイテムが完売してしまったりして、悲しいんだことはあると思います。僕も経験したことあります。それを乗り越えて、じゃあ次はどうやって入手しようといろいろ考えるんです。コミックマーケットは、ただ行って楽しい場所ではないんです。目標、目的を持ってくるから楽しくなる場所なんです。

――今回は警察からテロ対策の要望もあったようですね。


【市川】 一般参加者が入場前に並んでいるときに手荷物確認を実施しています。

――開場してからは、確認なしで例年通りに入場しているようですね。


【市川】 実際、全員の手荷物確認をするのはなかなか難しいです。ですので、朝は確認をしまして、そのあとはスタッフの案内や放送で来場者に呼びかけています。もちろん安全は考えなければいけないことですので、警察にもこういう形で対策を行いますというのを話して、実施しています。

◆楽しむためには来る目的をしっかりもつこと

――市川さんにとってこれまでのコミックマーケットを通して一番印象に残っていることは?


【市川】 一番というのはなくて、毎回の閉会時のこみあげる気持ちですね。ここが一番楽しい、達成感を得られる瞬間です。

――NHKなど大企業が出展している一方、同人誌ブースもにぎわい、コスプレイヤーたちが撮影をしあっています。


【市川】 異種格闘技じゃないですけど、この空間でファンの方々にいろいろなことを楽しんでいただければと思っています。3日間ありますので、日にちによって企業ブース、同人誌ブースとわけて行かれている方も多いようです。

――参加企業も幅広いですよね。


【市川】 僕らから声をかけさせていただくことはないのですが、誰が来てもウェルカムです。誰が来ても驚かないですし、誰が来てもおもしろいとしか思わないです。

――これだけの規模ですと、来場者が全部を見るのにもう少し長い日数でもいいのかという気もしますが。


【市川】 いまの3日でもけっこう厳しいんですね。運営は設営日もあって4日間になりますから。社会人のボランティアスタッフがほとんどですので、会社もなかなかそこまで休みにくいというのがあります。実は4日間も考えたことはあるのですが、踏みきれなかったですね。3日というのが、みんなにとってちょうどいいとなりました。ただ、もし会場が変われば変わるかもしれませんけどね。

――2020年の東京オリンピックのときは、東京ビッグサイトが使えないという噂もあるようですが。


【市川】 まだまだ先の話ですので、いまお話できることはないです。まずは今回をしっかり運営することです。

――改めてですが、毎回50万人を動員するコミックマーケットの魅力とはどんなところですか?


【市川】 一番はなんでもあることではないでしょうか。サブカルの世界にはいろいろなコンテンツがありますが、そのなかのありとあらゆるものがなんでもあります。だから誰もが楽しめるんです。ただ、楽しむためには、来る目的をしっかりもつことです。そういう方にとっては、“晴れの場所”になります。