日本レコード協会が教えてくれた「無料音楽アプリ」に関する驚きの事実

日本レコード協会の方から連絡をいただいて、最近AppStoreの上位に多数存在する、iLoveMusicなどの「無料で音楽聴き放題のアプリ」や、その音楽データの源になっている中国の無料音楽ストリーミングサイト「Xiami(虾米)」などについて、情報交換をしてきました。その結果、ようやく「Xiamiが白か黒か」など、いろいろなことがはっきりしたので、許可をいただいた範囲で紹介します。

最初に言っておくと、Xiamiは想像を越えるくらい真っ黒でした。

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前提知識

AppStore上位の無料音楽アプリと、Xiamiに関する詳しい情報はこちら。読み方を日本語で書くと「しゃみ」って感じです。

AppStore上位にあるいろいろな無料音楽アプリが、Xiamiという中国の無料音楽ストリーミングサイトから音楽データを取得していることが確認済みです。

「驚き」は2つ目の記事からの反動で、詳細はそちらを確認してほしいのですが、簡単にいえばXiamiは、阿里巴巴グループに買収されている」「レコード会社がパートナーになっている」「レコード会社にもお金が行くビジネスモデル」「楽曲が高音質で、よく管理されており、楽曲情報もとても充実している」などなど、いろいろな点でアングラサイト感はなく、だいぶまともなサイト感が強かったのです。特に、米国市場に上場予定の阿里巴巴グループに買収されているというところに、「もしかして白なんじゃ」感がありました。この記事を読んだ人は、「もしかして白なんじゃ」「少なくとも中国国内は合法っぽい」のような反応している人が多かったです。

日本レコード協会へ

以前の記事にこう書いていました。

これについてはレコード会社の中の人にでも聞いてみないとすっきりしない気がして、ちょっとあきらめモードです。 引用元

これもあって、声をかけていただけたみたいで、書いておくもんだなぁと思いました。日本レコード協会っていうのはまさかまさかでしたが。

そんなこんなで、自分が行ってみたかったので、溜池山王の共同通信会館にある日本レコード協会にて情報交換することに。

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今回の記事で対象にするのは、日本レコード協会が著作権保護の対象にしている音楽コンテンツ(音源)です。

当然前もって日本レコード協会の活動については予習して行きました。

情報交換

違法配信対策の専任組織「著作権保護・促進センター(CPPC)」の方々と、著作権の話題を中心に2時間ほど、いろいろと情報交換しました。

直接中の人から話を伺ってみると、とにかく予想外でびっくりしたことが多かったです。「えっ、そうなんですか!?」みたいな。

日本レコード協会に関する最低限の知識

誤解を防ぐための最低限の知識を復習しておきます。

日本レコード協会に加盟するレコード会社が独占的な権利を持つのは、レコーディングした音源(正確には「原盤」)についてです。

参考:正しく・楽しく聞いてほしいから 音楽CDと著作権

なので、その音源を正規に利用したテレビ番組、となると、また別で、誰かが勝手に演奏した場合は音源を使っていないので、これもまた別(JASRAC)です。

音源(原版)の権利が対象です。間違えないように。

とりあえず、以前から対象にしていた「音楽配信サイト」「無料音楽アプリ」となると、まさにこの原版に関する権利そのものを利用しているので、がっつり対象です。

日本レコード協会は中国の違法サイトに直接訪問している

一番驚いたのは、

著作権に関する対応をしてもらうために、中国の事務所にまで行って、違法音楽配信サイトの担当者と直接会う

というところです。

中国の違法音楽配信サイトを見つけても、メールを出すだとか、現地の団体に連絡するだとかして、連絡が来ないとか効果が無いとかそういうことをしているだけなのかと思っていました。もちろん、メールを出すなどもするそうなのですが、直接交渉するために中国にまで出かけるとは思っていませんでした

実は、予習で読んだ事業報告書などに書いてあったのですが、実際に直接担当者の口から聞いてみると、「本当だったんですか???」と驚いてしまいました(失礼)。

数ヶ所の超大手な違法サイトに行くだけかとおもいきや、もう2ケタ以上出向いているそうです。

いろいろな面でかなり大変な出張だそうで、その一つの理由として、都市部から離れたところに事務所があることが多く、都市部から何時間もかけていかないといけないことが多いんだとか。

補足:成果

ここまで読んで、「実際成果出てないんだろ?」と解釈する人もなぜか多いのですが、このような活動の結果、音楽ファイルが保存されているサイトからデータが削除され、アプリ側から利用できなくなるなどの成果があがっています。これについては、先ほど「予習」と言った以前の記事で既に明らかになっていました。

こうした取り組みの結果、スマートフォンアプリからのリンク保存先となっていた、一部のストレージサイトの違法音楽ファイルを徹底的に削除させたことにより、同アプリからの当該ストレージサイトの利用が激減するという効果が出てきている(引用元:日本レコード協会機関誌 THE RECORD 2014年5月号)

参考: 日本レコード協会&JASRACの「違法音楽利用を助長するスマートフォンアプリ」への対策動向調査メモ

このような対策の一方で、Xiamiのようなひときわ強力な新興勢力が現れて、最近現れたアプリの多くがそこを利用している、という入れ替わりが発生している、というのがちょうど今日現在の状況です。

確定情報:Xiamiは違法配信をしている

さて、ここからがある意味本題ですが、結論を最初に言うと、

Xiamiに置いてある日本の音楽コンテンツは、すべて違法*。許可は一切出していない
(*違法と言うべきか無許可というべきか…)

少なくとも、日本レコード協会が取り扱っている範囲の音源については、一切許可を出していないそうです

したがって、そのデータを利用している無料音楽アプリたちも、音楽コンテンツそのものが、権利者から許可を得たものではない、ということがはっきりしました

また、もはや言うまでもありませんが、無料音楽アプリから原版の権利者にお金が支払われているということもないということでした。

これについて、確かにサイトを見ると合法のように見えるかもしれないが、事実許可は全く出していない、とのこと。

レコード会社ロゴは勝手に掲載している

以前紹介した、Xiami.comに「パートナー」として掲げてある次のレコード会社のロゴたちですが、

レコード会社のロゴは勝手に掲載しているだけで、日本語コンテンツに関して、許諾は一切出していない

とのことでした。「えっ?」と聞き返すほどの驚きです。

よくよく考えてみると、あくまで日本レコード協会の範囲なので、例えば中国のレコード会社や米国のレコード会社については、ちゃんと契約しているのかもしれません。しかし、日本についてはそんなことがないので、レコード会社のロゴがあるからといって、それはまるで信用の証にはならない、と解釈しておくのが良さそうです。そして、海外のレコード会社経由で日本の楽曲を提供している~なんてことはないとのことでした。

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そのときの例に上がったのがエイベックスのロゴなのですが、これはエイベックスが許可を出しているなんてことは全くなく、勝手にロゴを利用しているだけ、とのこと。

驚きました。Xiamiが阿里巴巴という米国市場上場直前の、今話題の超有名企業傘下で、権利者にお金が回るビジネスモデルもあったため、油断していたのですが、Xiamiは真っ黒でした

中国のサイトには一切、音源配信の許可は出していない

海外サイトには海外向けに許可を出しているのでは?と思って質問してみたのですが、そもそも

日本のレコード会社は、中国のサイトに対する音源配信の許可を【どこにも出していない】

とのことでした。なので、

Xiamiだろうが、他の中国のサイトだろうが、日本語の楽曲がストリーミングなりmp3ダウンロードなりで提供されているとしたら、それはすべて無許可の違法配信

だそうです。なんてこった。そして、現状を踏まえれば、今後許可を出すことも考えられない様子でした。

つまり、極端な話、「中国だからどうせ違法だろ?」が、結果として正しかったわけです(少なくとも日本の楽曲について)。

一番極端に真っ黒な結論でした。Xiamiについて油断していましたし、中国サイトの中には少しくらいは許可をとったサイトが有るのかも、と思っていましたが、そんなことは全くない、っていう。

これで白か黒かいまひとつわからない中国サイトに出会ったとしても黒だと見分けられるわけです。

というわけなので、Xiamiが健全化するには、「ライセンスを取得すれば~」なんてことはないようなので、「日本の楽曲全削除」が必要だということになります。

日本レコード協会やレコード会社、JASRACは無料音楽アプリやXiamiを把握済み

最初に書いておけばよかったのですが、一応確認程度に書いておくと、無料音楽アプリの人気については言うまでもなく、そのウラにXiamiがあることなどは、前々から把握済みだったそうです。

無料音楽アプリの人気については、アーティストの間でも話題なのだとか。

(さすがにアーティストの方々がXiamiのことまで知っているのかといえば、知らないんだろうと思います)

感想

他にもいろいろなことを聞くことができたのですが、とりあえずこのブログに書くのはこの辺りです。書きたいこともあるのですが、いずれ書ける段階やらが来たときに、また書けたらいいかな、と思います。

とりあえず、いろいろ調べたXiamiが、ここまではっきりと真っ黒だったとは思っていませんでした。色を白く薄める要素がいろいろあったのに、あっさりひっくり返されました。

さすがに上場前の阿里巴巴傘下なだけあって、コンプライアンスを意識したのか、海外へのサービス提供停止を発表したのはいいのですが、日本の音楽コンテンツが存在する限り、真っ黒なのに変わりはありません。阿里巴巴のコンプライアンスはこれからだ、ということなのでしょう。

参考:ニセモノはアリババ上場の潜在リスクに | 新華ニュース 中国ビジネス情報(5/11の記事)

中国の音楽配信サイトを見かけたら、全部無許可だと思え」な話(こんな言い方ではない)もびっくりでした。そんなに極端だったとは。

ただ、それにしても日本レコード協会の活動範囲の広さとその行動力というかアクティブさに一番びっくりでした。中国の違法サイトの管理者のところに出向くのがまずすごい驚きだったのですが、こういうインターネット関連の対応がある一方で、海賊版CDの対策もしているっていう。

結構一般の人に向けた情報提供にも積極的なようで、興味をもった人は公式サイトにある「The Record」という機関誌(.pdf、フルカラー)を見てみてください。日本レコード協会の活動についてよく分かります。

予定

今後もこのあたりの話にアンテナを張っておいて、扱っていく予定です。

ランキング上位の無料音楽アプリが全滅