なぜ、あなたの体の贅肉は落ちないのか―ダイエットを続けるための「習慣化」メソッド | ニコニコニュース

 市場規模が2兆円に達するとも言われているダイエット産業。中心となっているのは痩身医療やサプリメントですが、健康器具や食品を使った家庭でできるダイエット法に対する世間の関心も高く、色々なメソッド・関連商品がブームになっては消え、を繰り返しています。
 ブームが終わる理由として「そもそも科学的根拠に乏しく、気休めレベルのものだった」というものも中にはありますが、総じて「飽きて投げ出す、続けなくなる」か「誘惑に負ける、太る原因を断ち切れない」人が続出する、といった理由に集約されるようです。

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 なぜ、人は目新しいダイエット法に次々手を出しては投げるのか。なぜ、人は誘惑を断ち切り、カロリー過多から抜け出せないのか。

 そのメカニズムと対策法を、習慣化コンサルタント・古川武士氏の著書を引き合いにしつつ紐解いてみましょう。

■まずは前提となる「ダイエットの原則」について

 言うまでもないことですが、やせるためには「摂取カロリー量<消費カロリー量」という条件を満たす必要があります。アプローチとしては

・消費カロリー量をアップさせる


・摂取カロリー量を減らす

 の2つが挙げられ、前者は「運動を習慣的に続ける」、後者なら「食べ過ぎ・飲みすぎの悪習慣をやめる」となり、これさえできればやせることができます。

■なぜ、ダイエットは続かず、太る原因はやめられないのか

 日本実業出版社サイトに掲載されている「ダイエットはなぜ続けられないのか?「続ける」習慣がうまくいかないワケ」にもあるように、「ある行動を習慣化させようとするとき最初の7日間で4割が挫折する」というデータがあります。これは、人の心理に「変化に抵抗し、いつもどおりを維持しようとする」働きがあるためで、古川氏はこの働きを「習慣引力」と名付けています。

 一度身についた悪癖がなかなかやめられないのも、同じ働きによります。習慣として根付いたものは脳に「いつもどおりのもの」として認識されるため、それをやめる=変化させることに対する抵抗が生まれるのです。

 ではこの習慣引力をどう克服していけばいいのか、具体的に見ていきましょう。

■「続ける」ための具体的なメソッド

 新しく始めたことが“習慣”として定着するまでの期間は、行動習慣なのか思考習慣なのかなど性質によって変わりますが、ここでは行動レベル(定着目安:30日)を例に、習慣化に至るロードマップをみてみましょう。

 もっとも挫折しやすい「反発期」、ペースが乱れはじめる「不安定期」、飽きてくる「倦怠期」がどれぐらい続くのかと、その期間の方針と対策が右図にまとめられています(※なお、古川氏はダイエットのような身体習慣が定着するには3か月程度必要としています。右図の期間をそれぞれ3倍してください)。

 また、習慣として定着させるためには

・1つに絞る


・有効な1つの行動に絞り込む
・結果より行動に集中する

の3原則を守る必要があります。それぞれ簡単に見ていきましょう。

●1つに絞る(同時並行でいくつもやらない)

 先にも書いたとおり、新たな行動を習慣づけようとすると心理的な抵抗が発生します。もし、2つのことを同時に始めようとした場合心理的な抵抗も2倍になるので、それだけ挫折しやすくなります。一つひとつ定着させていくのが、習慣化するための近道です。

●有効な1つの行動に絞り込む(行動ルールを複雑にしない)

 習慣を定着させるには、行動ルールもシンプルなものに限定しましょう。

たとえば英語の学習を例にとり、次のような行動ルールを決めたとします。


・電車の中でリスニング
・週2回英会話教室に通う
・スキマ時間に単語帳を読む
・夜1時間英文法を勉強する
・土日は5時間TOEICの勉強をする
仮に1つの習慣に絞ったとしても、これほど行動ルールが複雑だと覚えておくだけでも大変で、すべてを実行し続けることは困難です。

複雑なものは挫折しやすく、シンプルなものは続けやすい。これは真理ですから、ゴールから逆算して、もっとも有効な行動1つに決めて、習慣化していくことをお勧めします。


『「続ける」習慣』p.69-70より、太字のみ編集

●結果より行動に集中する(結果にこだわらない)

 「1か月で-5kgのつもりが2kgしか減ってなかった」など、思うように結果がでなかったときによくやってしまうのが負荷を増やすことです。

 たとえば、「思ったより体重が減ってないから、これから土日は水しか飲まない」としたらどうでしょうか? 一時的には体重が減るかもしれませんが、まず長続きはしませんし、その先にはリバウンドが待っています。まずは定着させることを目指しましょう。

■「やめる」ための具体的なメソッド

 さて、ここまでは「続ける」というアプローチを解説してきました。しかし、ダイエットには食べ過ぎ・飲みすぎなど「カロリーを取りすぎる習慣をやめる」というアプローチもあります。近年流行りの「糖質制限ダイエット」も、ごはんやパンといった炭水化物の摂取をやめる・減らすものなので、アプローチとしてはこちらに近いと言えるでしょう。

 では、「やめる」行為が定着するまでの流れ(3か月版)を見てみましょう。

 「習慣化のロードマップ」と見比べてみると、「○○期」が3つから4つに増えていたり、原則が一部違うものになっていたりといった細かな違いのほかに、新しく「スイッチング」という項目が入っています。これは何を意味するのでしょうか?

■What’s スイッチング?

 「スイッチング」とはやめたい行動を、同じような心理的メリットを得る別の行動に代えることを言います。そもそも、悪い習慣をやめられない理由は「それにより特定の欲求を満たし、一定の心理的メリットを得ている」ためです。そのため、代替行動で欲求を満たし、抵抗を和らげることができると、悪習慣を断ち切りやすくなります。

 それでは、スイッチングの各ステップを説明していきましょう。

ステップ1 心理メリットを明確にする

 一見同じ行動であっても「行為から感じる心理的メリット」は人によって違います。まずはやめたい行動について「そもそも、何のためにしているのか」を掘り下げましょう。

 たとえば、ダイエット目的であれば「食べ過ぎ・飲みすぎをやめたい」ということになりますが、その理由は「ストレスからくる現実逃避」「口が寂しくてつい甘いもの食べたくなる」と、人よってさまざまです。下記の引用部分も参考にしながら、まずは「自分はなぜ食べ過ぎ・飲みすぎをするのか」をまず考えてみてください。

まずは、自分がやめたい習慣をリストアップして、その習慣で得ている心理的メリットを書き出してみてください。その際、次の3つの質問を投げかけながら考えると、浮かびやすくなります。


質問1 どんなときにその習慣をやってしまいますか?
質問2 その習慣行動の直後、どんな気持ちになりますか?
質問3 心理的メリットまたはその習慣で満たせる欲求は何ですか?
『「やめる」習慣』p72-73より

ステップ2 スイッチング行動を考える

 次に、ステップ1で考えたメリットを満たす代替手段を考えます。たとえば「口さびしさが紛れるのでタバコを吸ってるけど、やめたい」という人であれば、「ガムや飴、タブレット菓子を口に入れとく」のような手段が考えられますし、「コーラの爽快感が大好き。でも太るのでやめたい」というのであれば味無しの炭酸水に切り替える、といった方法が考えられるでしょう。

ステップ3 スイッチング行動を試す

 あとは試すだけですが、実際やってみると「なんか違う」「コレジャナイ感が半端ない」と釈然としないこともあるでしょう。元々の行動で感じていた心理メリットを代替行動に置き換えることがそもそもの目的なので、感情が納得できないようでは意味がありません。下記のアドバイスを参考に、いろいろ試してみてください。

スイッチング行動が自分に合ったものかどうかは、「感情」で判断してください。いくら理屈で納得しても、欲求が満たされていなければ意味がありません。

また、1つではなく、いくつか組み合わせてみるのもお勧めです。上手にスイッチングができれば、欲望との戦いで感じる苦痛は大幅に減るでしょう。多少お金がかかるものもあるかもしれませんが、やめたときのメリットを考えれば投資とも考えられます。

ちなみにスイッチング行動は習慣にする必要はありません。ここは苦痛回避できることであればどんどん試して、うまくいくものがあったら自然とやり続けることでしょう。


『「やめる」習慣』p74より

■どこまで徹底してやめるのか、レベルを決めるのはあなた

 ここまで「続ける」「やめる」それぞれのアプローチを紹介してきましたが、最後に「やめる」アプローチについて少しだけ補足します。

 一口にやめるといっても「完全に断ち切る」「ほどほどに抑えるレベルに留める」と段階はさまざまです。たとえばやめるアプローチの説明で軽くふれた糖質制限ダイエットも、完全に断つ勢いの人もいれば、健康上のリスクを考慮に入れ、ほどほどに抑えるレベルに留める人もいます。

 タバコのように、依存性の高いものはやめるなら完全にやめる勢いで臨まないとあまり意味はありませんが、やめることでかえってストレスをため込むようでは逆効果です。これはダイエットに限らず、お酒でも衝動買いでも同じでしょう。

 消費カロリー量アップのための運動や筋トレがオーバーワークにならないように負荷を調節するのと同様に、自分が我慢できるギリギリのラインを狙ってダイエットに励むのが、身心にとって一番いい結果になるのではないでしょうか。

文=日本実業出版社