<三國志>人気歴史ゲームの誕生秘話 シブサワ・コウに聞く | ニコニコニュース

「三國志」シリーズを手掛けたゲーム業界の「最年長クリエーター」シブサワ・コウさん
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 「信長の野望」と並ぶコーエーテクモゲームスの歴史ゲーム「三國志」シリーズが誕生から30年を迎えた。制作者のシブサワ・コウさんにシリーズ誕生の歴史、狙いなどを聞いた。

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 −−誕生のきっかけは。

 原作の「三国志」は小説があり、マンガ、人形劇もあるから、ゲームにすることは「信長の野望」(1983年制作)を作る前から考えていたんです。ゲーム「川中島の合戦」(81年制作)が受け、「水滸伝」と共に「作ってほしい」という要望もありました。ただ、国盗りをテーマにした「信長の野望」とは同じゲームシステムにしたくなかった。そこで人間ドラマをメインにしようと、登場人物にスポットライトを当てるゲームを作ることにしたのです。関羽や張飛など個性的で、皆キャラクターが立っていますよね。また火計を使うなど戦国時代にない面白さを作れるんじゃないかと。今から振り返ると画期的だったのかもしれませんね。テストプレーしてみると、狙い通りの面白さでした。

 −−「知力」「武力」など能力値でキャラクターを差別化しました。

 ボードゲームの影響もあってか、割とすんなり思いつきました。単純な強さでなく多面的な人物評価をしたのです。「武力」だけだと単一化するので、ゲームバランスが大事。ただシリーズが進むと、あまりにもアイデアが出てしまい、あまりにも収拾がつかなくなるので、カットしたりしましたよ。

 −−シリーズ初代には255人の武将が登場しました。なぜこの人数?

 データ容量の限界だったのです。その後パソコンの性能が上がるたびに、武将の数や拠点が増やせました。武将の顔データもドット絵から精密な武将の絵になっていきました。

 −−ズバリ曹操と劉備、どちらに肩入れしています?

 劉備です。最初は蜀の陣営が中心でした。ただシリーズが続き、次第に魏の陣営が強化されました。実は、曹操を主人公にしたマンガ「蒼天航路」が人気になると、魏の陣営を強くしてほしいという要望が出て、魏の武将である李典や楽進の能力を上げるなどしていきました。だから、強さのバランスは時代と共に変わるんですよ。呉にスポットが当たる作品が生まれたら、また変わるかもしれませんね。

 −−人気といえば、ヤングジャンプで連載され、アニメ化もされた「キングダム」が人気ですが……。

 秦をテーマにしたゲームの企画は、実は社内でありますよ。ただ「信長の野望」や「三國志」とは違う切り口でないと面白くないので、キチンと検討していきたいところです。これまで多くの歴史ゲームを世に送り出しましたが、「信長の野望」と「三國志」の人気は抜けているんです。

 −−シリーズ初代の音楽は、菅野よう子さんでした。

 起用したのは、私がアルファレコードの社長と学生時代からの先輩後輩の関係で、「いい作曲家はいない?」と打診したところ、当時大学生だった菅野さんを紹介されたのがきっかけです。当時から抜群のメロディーメーカーでしたよ。

 −−パッケージは、「三国志2」から人気イラストレーターの故・生頼範義(おおらい・のりよし)さん(2015年10月27日肺炎のため死去)を起用しましたね。

 生頼さんの描いた、ルークが手を上げている「スター・ウォーズ」のポスター大好きで、依頼するときに「あれを超えるような絵をお願いします」と言った覚えがあります。

 −−最新作「13」の売りは?

 劉備、曹操、孫権ら有名武将のストーリーを追体験できます。また登場する700人以上の武将のうち、1人になりきってプレーできます。張飛でプレーして、劉備と分かれて独立する……ということも可能ですよ。人が集まらず、苦労するとは思いますが(笑い)。

 −−三国志がここまで日本人に受け入れられるのはなぜ?

 成功物語ではなく、志半ばで滅びた美学があるからではないでしょうか。「自分なら悲劇の道を食い止める! 違う蜀を作る!」と思えるので、ゲームの世界に没入できる動機になるんです。もし蜀が強大な王朝だったら、そうなりませんよね?

 −−30年を振り返っての感想と、今後への意気込みを。

 まず支持がないと13作品も作れなかったから、ファンに感謝ですね。次はシリーズ40周年を迎えられるよう、人間ドラマの要素をきちんと保持しながら、新しいアイデアを入れていきたい。今後はハードウエアはもちろんクラウド技術の進歩、ヘッドマウントディスプレーのVRもあり、いずれ三国志の世界にタイムスリップしたかのようなゲームもできる可能性があると思っています。私も65歳になり、おそらく「最年長のゲームクリエーター」だと思いますが、ゲーム作りで苦労を感じたことは一度もありませんし、まだゲーム作りはやめられませんね。

 ◇プロフィル

 シブサワ・コウ=コーエーテクモホールディングス社長、コーエーテクモゲームス会長の襟川陽一さんが、作品制作時に使うペンネーム。代表作は「信長の野望」シリーズや「三國志」シリーズなど多数。