「おじいちゃんのノート」に大反響 孫がツイッターで拡散→在庫の山に注文殺到 奇跡を生んだ数々の偶然 | ニコニコニュース

開いたときに水平になるのが特徴の方眼ノート
withnews(ウィズニュース)

 東京都北区の小さな印刷所が手作りしている「方眼ノート」。元日に、ある女子専門学校生がツイッターでつぶやいたことで、注文が殺到しています。「うちのおじいちゃんのノート、費用がないから宣伝できないみたい。Twitterの力を借りる」。特許をとって製品化したものの数千冊の在庫を抱えていたノートに、一気に注文が入り始めました。「まさか、こんなことになるなんて」。町のアナログな印刷所の優れた技術が、デジタルを通じて世に広まるまでには、小さな「偶然」の積み重ねがありました。

【写真】水平に開いた状態の方眼ノート。真ん中がふくらまない。製本の機械や、大量に積まれた在庫の山も

作っているのは小さな印刷所
 方眼ノートを作成しているのは、家族4人で営んでいる「中村印刷所」。事務所には活版時代の活字や、長年使い続けて年季の入った印刷機などが並んでいます。

 印刷業に関しては新規開拓はせずに、これまでの取引先との受注生産がメイン。そんな中、新しい分野として3年ほど前から打ち出しているのがノート制作でした。

 きっかけは、近くで製本業を営んでいた男性(79)が店をたたんだこと。「印刷と製本は関係が深い。うちを手伝ってくれないか」と社長の中村輝雄さん(72)が声をかけ、アルバイトとして働くことになりました。

 今回話題になっているつぶやきの主は、この男性の孫娘です。

特許は取ったけど売り上げは…
 2年間かけて2人で試行錯誤の末に完成させた方眼ノート。普通のノートは、見開いたときに真ん中がふくらんで、手で押さえていないと閉じてしまうことがありますが、この製品は水平に開きます。コピーやスキャンした時に真ん中に黒塗り部分が入らず、見開きのギリギリまで書き込むことができます。この製造方法に関して中村印刷所として特許をとりました。

 発売したのは2014年10月。東京都の機関が試験的に購入・評価して普及を応援する「トライアル発注認定制度」にも選ばれるなど、性能は評価されてきましたが、なかなか売れません。大量発注の話があって作ったものの、実際の注文には結びつかず、数千冊の在庫を抱えていました。

 「使ってもらえば、良さがわかってもらえるのに」。自分が作った在庫を見て罪悪感を感じていた男性は、孫娘にノートをまとめて渡しました。「これ、学校の友達にあげてくれ」

軽い気持ちでつぶやいた
 受け取った孫娘は、こう思いました。「学校じゃ、あんまりノート使う人いないしなー。そうだツイッターでやりとりしてる絵描きさんとか喜ぶかも」

 元日に軽い気持ちでつぶやくと、多くの反響が寄せられました。

 「私が欲しかったのコレや」


 「建築とかしてる方には需要ありそう」
 「工業系の息子も欲しいと言っています」
 「どこで購入できますか」
 「私もいろんな会社にすすめてみる」

 使い方を指南してくれたり、今すぐ買える量販店を教えてくれたり。多くの人たちがコメントを寄せて、あっという間にリツイートが3万を超えました。

続々と注文が
 大手の通販サイトなどで品薄となり、中村印刷所には続々と追加注文が入っています。手作業のため1日300冊ほどしか作れませんが、幸いなことに大量の在庫があります。自社のホームページにも通常の200倍以上のアクセスがあるそうです。

 社長も男性も孫娘も、こう口をそろえます。「まさか、こんなことになるなんて」。

 突然の発注を喜びつつも、社長の中村さんは先を見据えています。「私たち2人の目が黒いうちは作り続けます、でも限界があります。この技術を受け継いでくれる会社が現れて、一人でも多くの人にノートを使ってもらえたら、というのが私の願いです」