不倫疑惑のベッキー CM契約打ち切りに関し広告業界の「鉄の掟」 | ニコニコニュース

ベッキー出演CMはなぜ差し替えられるのか
NEWSポストセブン

 いわゆる「清純派タレント」として知られていたベッキー(31)が、紅白歌合戦にも出場した音楽グループ「ゲスの極み乙女。」ボーカルの川谷絵音(27)との不倫疑惑を『週刊文春』に報じられた。ベッキーはCM契約を10社と結んでいたが、早々にとある企業は彼女が出演するCMを別のCMに差し替える決定をしたという。今後、他の企業がどのような動きに出るかは世論を鑑みてのことになるだろう。

 現在、ベッキーに対しては「男の方が悪い」「CM契約を打ち切るなんてひどい」といった擁護の声もネット上で出ている。しかしながら、こういった声に対しては「CM界の掟」が立ちはだかると語るのは博報堂出身のネットニュース編集者・中川淳一郎氏だ。その掟とは一体どのようなものなのか。中川氏が解説する。

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 CM契約をするにあたっては、何よりも押さえておきたいのが「商品様」という考え方です。とにかく、商品やサービスのアピールをするのがCMの使命であり、タレントはあくまでもそれらの魅力を引き出す演者でしかない。

 そのタレントの普段からのパブリックイメージを商品・サービス(以下「商品」とだけ記す)に転嫁させることが求められているだけに、そのパブリックイメージから逸脱した行為をした場合は、打ち切りもやむを得ない。

 今回、ネット上ではベッキーを擁護する声が多数出ていますし、CM契約をしているスポンサーに契約打ち切りをしないよう求める声も見受けられます。しかし、スポンサーからすると、ベッキーがテレビに出た途端に「不倫した人」というイメージが一瞬にして視聴者の頭に浮かんでしまうことを果たして求めるでしょうか。

 ベッキーが出演しているのは、ローソンや花王、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険など、ファミリー層を意識した企業のCMが中心です。こうした企業が彼女を起用する理由としては「前向き」「明るい」「清廉潔白」といったイメージを重視しているためで、こうした点がCMスポンサーからは好まれていたのでしょう。

 そして、CM契約料というのは、1年契約や半年契約、3か月契約など形態は様々ですが、その期間に最大限の良いイメージを社会に振りまいてもらうべく、高額な出演料を支払うものです。

 ベッキークラスであれば、数千万円は年間契約で払っているわけで、いわば企業としては、その大金と引き換えに、良いイメージを世間様に出していくことを期待し、キャスティングをするのです。当然、契約書には「スキャンダルを起こしてはいけない」という条項があります。幸せな家庭をCMでは演じているというのに、実際は泥沼不倫をしていた、なんて週刊誌の記事が出たらそのCMの信ぴょう性はゼロになるでしょう。

 CMの撮影というものは、1日がかりではあるものの、それだけで数千万円を手にすることができる。タレントにとって、日々のテレビ番組出演からの最終ゴールが「CM出演獲得」にあるともいえます。普段の番組出演でイメージを作り、最も割の良い仕事であるCM出演を獲得することこそ勝ち組への道です。

 だからこそ、CM契約を獲得したのであれば、タレントはプライベートを必死に清廉潔白でい続ける努力をしなくてはならない。「恋愛は自由だ」――そういった反論が今回あるのは分かります。しかし、数千万円のカネをもらうことと引き換えに恋愛を少しは我慢することだって必要なのではないでしょうか。

 今回のベッキーの不倫については広告代理店やスポンサーからすればただの「契約違反」です。期待していた効果をもたらさない結果になったのですから。いわゆる「理想の夫婦」と思われているタレントがとある幸せ家族を描くCMに出ているとしましょう。プロ意識の強いタレントであれば、本当は自分の家庭がぐちゃぐちゃで離婚間近であったとしても、CMの契約期間であれば、なんとしてもその情報が出ないようにする。

 不仲説が出ようが、そこは黙り、さらには配偶者とは別の恋人の存在などがバレるようなマネはしない。なんとしてもその数千万円の契約の重要性を認識し、スポンサーや関係者に迷惑をかけないようにするものなのです。そして、契約期間が終わってから離婚をする。

 ベッキーは確かに好感度の高いタレントですし、本当にいい人だと思います。芸能界の様々な方も彼女を擁護しております。しかし、スポンサーの論理からすると、「約束と違う……」という絶句の状況なのですね。

 もちろん、好感度の高い彼女との契約を切ると自社のイメージがむしろ悪くなる、といった判断もできるでしょう。今は各社、世間の空気を読みながら契約をどうするか、というチキンレースの状況にあると思います。

 私が言いたいのは、これからベッキーとの契約を切る企業が出たとしても決して叩かないで欲しい、ということです。真剣な商売を彼らもしているのです。ビジネス上の判断として契約を切ることまで批判するのはお門違いです。