【レポート】グート、海外に向けて格安スマホ事業を展開 - 夏には日本に逆輸入 | ニコニコニュース

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●「ARATAS」とは
グートは18日、海外市場で販売される低価格スマートフォンに向けたプログラム「ARATAS(アラタス)」を発表した。2016年春にはアラタスの各プロダクトを搭載する端末「KAZE01」「KAZE02」をアジアを中心とするグローバル市場で発売する予定で、日本市場にも今夏以降の投入を予定している。本稿では、同日に開催された記者説明会の模様をお伝えする。

○格安スマホとは狙いが違う

グート(Gooute Pte.)は、シンガポールに本社を置く日本の企業。日本市場では現在、格安スマホを販売するMVNOが注目を集めているが、グートの狙いは別のところにある。登壇した同社CEOの横地俊哉氏は、プレゼンの冒頭で「低価格Androidスマートフォンのビジネスモデルは薄利多売で、端末だけでは充分な利益を獲得できない」との見方を示した。

世界市場に目を転じると、低価格スマホを扱うメーカーが増えている。その背景には、最低限の設備さえあれば、部品を組み立てて簡単にスマートフォンを完成できる時代になったことが挙げられる。その一例として、中国では小米科技(シャオミ)のような新興メーカーがシェアを伸ばし、Android市場の主役となりつつある。ただグローバルにおいても、端末メーカー各社は収益を出すことに苦労している、というのが実情のようだ。「日本のキャリアに端末を納めている端末メーカーでも、年間で数百万台。ところがアジアの低価格スマートフォンでは、年間で1,000万台以上を販売しないと利益が出ない。端末だけでビジネスすることは厳しくなっている」と横地氏。

そこで同社では、低価格スマホを販売するパートナー企業とともに、アラタスを通じてハードとサービスが一体化された新しい収益モデルの構築を目指す。具体的には、海外の低価格スマホメーカーに、低価格スマホ「ARATAS DEVICE」、ユーザーインタフェース「ARATAS UI」、サービス「ARATAS NET」を提供していく考えだ。

●2機種をグローバルで発売
○低価格スマホ、ARATAS DEVICE

ARATAS DEVICEは日本のクリエイターが筐体デザインを手掛けるプロダクトで、第1弾としてAndroid 5.1を搭載した「KAZE01」「KAZE02」のリリースが今春に予定されている。端末の製造は、中国の深センに本社を構えるKingtech Mobileを始めとする企業が担当。日本のほかアジア、米国、欧州など10以上の国や地域で年間30~50万台の販売を予定している。

両端末に共通する仕様は、以下の通り。5インチ HDディスプレイ(1,280×720)を搭載、プロセッサは1.3GHzのクアッドコア。ROM/RAMは8GB/1GBで、背面には800万画素の、前面には200万画素のカメラを搭載する。バッテリーは2,200mAh。KAZE01はブラック、ホワイト、イエローの3色で展開、サイズは144.8(H)×73.0(W)×8.1(D)mm。KAZE02はブラック、ホワイト、イエローの3色で展開、サイズは144.8(H)×73.0(W)×8.1(D)mm。

両端末ともグートがチップや基盤の選定から関わり、KAZE01は160USドル、KAZE02は140USドルと価格を抑えた。「デバイスだけで儲けるビジネスはしない」(横地氏)との言葉通り、後述するARATAS NETなどのサービスも併せて提供することで、経営展開していきたい考えだ。

●日本市場では夏に発売か
○UIとサービスを世界に提供

ARATAS UIは、日本のクリエイターが手掛けるユーザーインタフェース。壁紙、アイコン、着信音などを、デザイナーの河田彩氏、音楽家の谷口尚久氏らが担当する。ARATAS NETは、各国のニュースなどをキュレーションして、その国の言語で配信する「LOUCUS(ルーカス)」と、日本の最新トレンドやコンテンツを海外に配信する「GOOUME JP(グーミィ)」から構成されるメディアプラットフォーム。低価格スマホにプリインされるか、パートナー企業の公式サイトなどを通じて配信される。これにより、2016年春以降にアジアを中心とするグローバル市場で年間5,000万台以上の低価格スマホユーザーにARATAS NETを提供することが可能になるという。横地氏は「低価格スマホメーカーの手が回っていない部分。ARATAS NETとして、B to B to C化して提供する」と紹介した。

○日本市場での販売について

説明会の終了後、横地氏は囲み取材に応じた。横地氏によれば、日本でも販売する計画は以前からあったという。「日本のメーカーからの引き合いもあったが販売しても、台数はせいぜい数千台規模。技適や認証を取得するコストが高く付いてしまう」と横地氏。実際に、日本のMVNOや通信事業者とも交渉したというが、グローバル市場と比較すると規模感が違うため、二の足を踏んだ。

しかし端末を製造する中国のKingtech Mobileとしても、日本で提供することに大きなインパクトを感じているという。「収益性には目をつぶり、日本市場で販売すべきか悩んだ」と横地氏。結局、海外で販売して利益を出してから、逆輸入という形で日本市場で勝負するという道を選んだという。

(近藤謙太郎)