すぐできる! 要点を「3行」でまとめる書き方 | ニコニコニュース

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要約は、文章を単に短くすることではない。相手が望む情報を、相手が望むボリュームで的確かつ簡潔にまとめる究極の技術である。

■要点上手は、ビジネス上手

要領よく要点をまとめる能力はビジネススキルの1つだと、よく言われる。要点をまとめるのが上手な人と、いつも要領を得ない文章を書く人がいたとする。どちらと商談をしたいかといえば断然、前者だろう。

要点をまとめるのがヘタな人が相手だと、余計なやりとりが増える分時間もかかるし、誤解によるトラブルが生じるリスクも高まる。

では、要点をまとめるのがうまい人とヘタな人は何が違うのか。ネットニュース編集者の中川淳一郎さんは、次のように解説する。

「一言で言うと『相手の興味関心に沿う意思があるかどうか』です。要点をまとめるのがうまい人は相手の意向を重視する。相手が欲しい情報を、相手が理解しやすい形で伝えようと工夫しています」

要領を得ない人の多くは、相手の気持ちや状況はお構いなし。結果、自分の都合を押し付けることになり、より一層伝わりづらくなるという。

「要約というと、テクニカルなイメージを抱いている人が少なくありません。でも、どんなに素晴らしい要約も、相手が求めている情報とかけ離れていたら評価されません」

たとえば、ネットニュースの世界では「短い文章が好まれる」とよく言われる。しかし、当然ながら、単に短いだけではアクセスは稼げない。ネットユーザーが好む話題を、好む文脈に沿って短くまとめるからこそ、アクセスにつながるのだとか。

では、どうすれば相手が欲している情報を知ることができるのだろうか。

「まずは想像を巡らせる習慣をつけることが最初の一歩です。

たとえば、雑談のなかで『最近面白いニュースない?』と聞かれたら、相手の意図を考えてみる。一般的には会話のきっかけ程度。であれば、中身よりも迅速さを重視するのが正解でしょう」

一方、同じようなフレーズであっても、相手や場面が変われば、意図も変わる。

「来年度の契約を左右するような場面で思いつきを口にするのはあまりにも軽率です。『瞬発力がなくてすみません!』と頭を下げ、じっくり検討したうえで提案するのが得策です」

いずれにしても、要約には戦略が不可欠だと肝に銘じたい。

【問1】社内会議用にニュース記事をまとめよう

上司に「チャリティイベント企画のヒントになるようなニュースを探してきて」と言われました。社内会議で使うつもりで、以下のニュース記事を要約してください。

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マーク・ザッカーバーグ、ビル・ゲイツ、C・ロナウド、レディー・ガガ……。今、著名人の間で変わった“氷水”チャリティが流行っている。
8月20日、ソフトバンク本社において、孫正義社長が頭から氷水をかぶった。氷水とチャリティがどうつながるのかと思われるだろうが、これは筋肉が萎縮し、体が動かなくなってしまう難病「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」の治療研究を支援するためにアメリカで始まったチャリティ。「アイスバケツチャレンジ」と呼ばれ、24時間以内に氷水をかぶるか、100ドル(約1万円)をALS支援団体に寄付し、次の3名の挑戦者を指名していくルールで行われている。そもそもの発案者は、ALS患者で元大学野球選手のピート・フレーツ氏だが、瞬く間に広まり、LINE社長の森川亮氏、ノーベル賞受賞者の山中伸弥氏などが挑戦済みだ。“氷水か寄付”という異色のチャリティが注目されているが、チャリティは社会からの注目度合いによって集金力が変わってくるため、主催者はどうやって目立つかに頭を悩ます。
欧米セレブがよく開催するのが「デート権」タイプだ。シャーリーズ・セロンがバスケの試合を一緒に観戦できる「デート権」をチャリティ・オークションに出品し、自身が設立したHIVや児童虐待の問題に関する支援団体に約2万ドルを寄付。ロバート・デ・ニーロ、フランシス・コッポラ、アップルのティム・クックなどのデート権が人権団体に寄付されたこともある。
ロンドンで毎年7月に開催されるのが「The Sumo Run(スモウ・ラン)」。空気を入れて膨らませるお相撲さんのコスチュームを着て公園を走り、参加費を寄付する。ロンドンでは、ほかにもゴリラのコスプレで走る「The Great Gorilla Run(グレート・ゴリラ・ラン)」というチャリティが有名だ。ツイッター上で自分が汚い言葉を発するごとに寄付をする「Swear Box(スウェア・ボックス)」も話題を呼んだ。
冒頭の孫氏は、ヤフーの宮坂学社長、ガンホーの森下一喜社長、スーパーセルのイルッカ・パーナネンCEOを指名した後、水と氷をかぶり「みんなで日本にももっとチャリティの文化を広めていきましょう」と呼びかけた。

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【要約すると】

「海外ではデート権を発行したり、相撲取りやゴリラの格好で走ると寄付が集まるらしいですよ」

【解説】

上司から「企画を考えるうえでのヒントが欲しい」というリクエストがあったときに便利なのが、海外の事例。もっともらしいうえ、視野が広がったかのような実感を得やすいのだ。ただし、今回の「アイスバケツチャレンジ」のような有名事例は要注意だ。

テレビの情報番組などで大々的に報じられ、誰もが知っているようなニュースを要約して伝えると「バカにしているのか!」と怒られかねない。上司もすでに知っているものとして話を進めたい。

ここでピックアップすべき要素は「デート権」「ロンドンのスモウ・ラン」「グレート・ゴリラ・ラン」。求められているのは「ヒント」なので、くどくど説明は必要ない。複数のキーワードを伝えれば、上司もイメージしやすくなる。「じゃあ、うちも××の格好で走ってみるか」などと軽口が飛び出せば、こっちのものである。

【問2】ニュース記事の要点をコンパクトに伝えよう

昼休みに雑誌を読んでいたら、上司に「何か面白い記事ある?」と聞かれました。「面白さ」が伝わるよう、以下のニュース記事を要約してください。

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春先に話題になったエルニーニョ現象。南米ペルー沖の海水温が上昇するこの現象が起きると、日本では長雨・冷夏といった天候不順が予想され、これが景気減速を招くのではと心配されたが、むしろ豪雨と猛暑が続いている。
エルニーニョ発生の可能性は低下したという見方もあるが、油断はならない。気にかかるのがカタクチイワシの漁獲量。というのも1972年のエルニーニョでもペルー沖のカタクチイワシの漁獲量が激減し混乱を招いたが、70年代と比べると大きく変化したのが養殖サケの世界的な需要増加。日本も生食用サーモンとしてノルウェーからタイセイヨウサケ、塩鮭用にギンザケをチリから大量に輸入している。年間の輸入金額は1733億円。
これら養殖サケの主な餌はカタクチイワシを原料にした魚粉。この魚粉の主な産出国が世界のイワシ・ニシン類漁獲量の約3分の1を水揚げしているペルーだ。茨城大学の二平章さんはいう。
「ペルーのカタクチイワシが激減すれば、魚粉生産は大打撃。養殖サケはもちろん家畜飼料にも深刻な影響がでるのは必至。
米国産大豆が代替飼料に回り、日本への輸出量が減少、大豆不足が深刻化します」
しかも、エルニーニョの規模が大きくなれば、世界的に干ばつや豪雨が多発するので、農水産物価格が高騰するかもしれないのだ。

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【要約すると】

「ペルーのカタクチイワシが激減すると、農水産物価格が高騰するらしいですよ」

【解説】

「面白い記事」といった漠然とした質問は、深刻に考えすぎないのがコツ。「厳密に言うと面白いとは思っていなくて……」と突き詰めるほど気まずくなる。

重要なのは何といってもスピーディーに答えることだ。とくにおすすめはトリビア記事。上司が他の誰かにドヤ顔で話す姿が浮かぶネタを日頃から仕込んでおこう。

【問3】複数の依頼内容をわかりやすく伝えてみよう

「取引先に打ち合わせの日程相談と展示会の案内をメールして」と後輩に頼んだところ、要領を得ないメールが送られてきました。以下のメールの内容を要約してください。

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△△株式会社広報部の山田です。
昨日はお忙しい中、お時間をいただき、誠にありがとうございました。
ぜひ、早々に次のお打ち合わせをさせていただければと考えております。お打ち合わせの候補日ですが、社内で調整したところ4日午後は大丈夫なのですが、6日午前は難しく、それ以外の日程でしたら、ご希望に沿えるかと思います。
それから、今度じつは弊社の展示会がございまして、12月10日に東京ビッグサイトで開催予定です。
新製品の展示もありますし、一部商品は実際に体験していただけるゾーンも設ける予定ですので、もしお時間ありましたらぜひお立ち寄りいただけると幸いです。今度お会いしたときにでも、パンフレットをお渡しいたします。
そういえば、先日御社にお伺いしたときに、営業部の田中さんをお見かけしました。ご挨拶させていただきたかったのですが、田中さんも急いでいらしたようで、声をかけそびれてしまいました。よろしくお伝えくださいませ。久々にお会いできればと思っておりますのでぜひ田中さんにもお声がけいただけると幸いです。展示会にご来場いただける際は11月末までにお知らせいただけると大変助かります。
ではでは、どうぞよろしくお願いいたします。

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【要約すると】

「打ち合わせの候補日は4日午前と6日午前以外。ちなみに12月10日に新製品展示会があります」

【解説】

思いついたことをダラダラ書くうちに、自分でも何を言いたいのかわからなくなってしまった典型例。「あと」「そういえば」が複数回登場したら、危険信号である。

また、1文が長くなればなるほど、伝わりづらさが増す。伝えるべき内容を整理したら優先順位をつける。1通のメールで複数の案件について送るとき個条書きも活用したい。

【問4】言いづらい要望を感じよく、簡潔に伝えよ

「開講時間ギリギリにやってくるセミナー講師に、次回は会場に入る時間を早めてほしいと伝えたいけれど、うまく書けない」と後輩に泣きつかれました。以下のメールを要約してください。

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例文)
□□株式会社人事部の高橋です。
このたびは新入社員研修の講師をお引き受けいただき、誠にありがとうございます。
先生のご活躍はいつもご著書や雑誌などで拝見し、私どもも日々勉強させていただいております。
先生の厳しくも温かいご指導のおかげで弊社新入社員も社会人として意識を高め、改めて決意を新たにすることと存じます。
さて、来月実施予定の中堅社員研修についてですが、できましたらコミュニケーションを密にとらせていただき、事前の情報共有を深めていければと考えております。もちろん、お忙しくていらっしゃるのは重々承知しておりますし、お時間をとっていただくのが難しい場面もあるかもしれません。ただ、機材トラブルなどを防ぐ上でも、開講前のミーティングを充実させたいと上司も申しておりまして、我々人事部一同も一丸となって研修全体の質を高めていきたいと思いますので、ご協力のほど何卒よろしくお願いいたします。

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【要約すると】

「会場には15分前に到着するようにしていただけますか」

【解説】

言い回しがまわりくどく、真意がわかりづらいメールの多くは「配慮しすぎ」が原因である。やんわり遠回しに伝えようとすればするほどコミュニケーションの齟齬が生じ、事態が深刻化することに。

言いたいことをズバリ伝えたほうが「何を言いたいかわからない!」と相手をいらだたせるリスクを軽減できるというメリットもある。

【番外編】取引先で「パンフレットを見てもよくわからない」と言われたら?

【要約すると】

「××さんが今、お困りのことって何ですか?」

【解説】

パンフレットのような膨大な情報量をまとめる場面でやってしまいがちなのが「伝えたいこと」の要約。相手にとっては何の興味もなく、感謝も歓迎もされないことがしばしば起こりうる。

まず「相手がどんな情報を欲しがっているのか」を探るのが先決。ただし、そのまま聞いても、ほぼ答えは返ってこない。というのも、本人も自覚していないことが多いのだ。「困っていることは何?」という質問であぶりだそう。

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ネットニュース編集者 中川淳一郎
1973年生まれ。一橋大学卒業後、博報堂勤務、ライターなどを経て2006年より現職。現在、複数のニュースサイト編集者を兼務。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『夢、死ね! 若者を殺す「自己実現」という嘘』など。

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