戦前の日本の台湾統治を検証した番組で名誉を毀損(きそん)されたとして、出演した台湾の先住民族の女性がNHKに損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(大谷直人裁判長)は21日、二審東京高裁判決を破棄し、原告の請求を棄却した。NHKの逆転勝訴が確定した。

 問題となった番組は2009年4月放送のNHKスペシャル。1910年に開催された日英博覧会で、原告の女性の父親を含む先住民族が「人間動物園」として展示されたと報じた。一審東京地裁は請求を棄却したが、二審判決は請求を認めて100万円の支払いを命じたことから、NHK側が上告した。

 第1小法廷は「一般の視聴者は、日本が先住民族を差別的に取り扱ったという事実を提示した番組と理解するのが通常だ。原告の父親が動物園の動物と同じように扱われるべき者とは受け止めないので、名誉毀損は成立しない」と指摘した。

 原告の弁護団は「不当な判決だ」と述べ、NHK広報部は「正当な判決だ」とコメントした。