科学で解明できない「未知の繋がり」が発見される! 鳩の巣原理を覆した量子の性質とは? | ニコニコニュース

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TOCANA

 難解な量子力学についての話題が出たときに、よく登場するのが「シュレーディンガー猫」の話である。1935年に量子力学の問題点を指摘するために登場した思考実験で、現実に起こりうる話ではないのだが、硬派な科学の話に愛らしい猫が出てくるギャップが、なんともいえない魅力を生み出している。

 量子力学のマスコット的な存在となっているシュレーディンガーの猫だが、その牙城を突き崩すべく、新たな動物が名乗りを上げた。その動物とは、鳩である。


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■鳩の巣原理

 今月発行された、米国科学アカデミー紀要に掲載された論文で、また量子の驚異的な性質が明らかになった。なんと量子は、「鳩の巣原理」も通用しないのだという。

 むむ、鳩の巣原理ってなんぞや? と思われる方もいるかもしれない。これは数学でよく使われる原理で、10羽の鳩が9つの巣箱にいる場合、少なくとも1つの巣箱には2羽以上の鳩がいる、という考え方だ。

 至極当たり前の話ではあるが、この原理を利用することで、さまざまなことが証明できるのである。有名な例を挙げると、大都市の中には髪の毛の本数が同じ人が必ずいるという命題の証明だ。人間の髪の毛の本数は平均約10万本とされていることから、最高でその2倍程度の本数を持つ人がいるとしても、人口20万人以上の都市では、必ず同じ髪の毛の本数の人がいることがわかる。

 常識的に考えれば、この原理に例外はないように思える。しかし、これまでも数々の常識を覆してきた量子は、またもやわれわれの予想を超えてしまった。つまり、鳩の例えのままでいえば、「3羽の鳩を2つの巣箱に住まわせていたのに、どちらの巣箱にも1羽の形跡しかない」ということがありえるというのだ。

■2つのルートしか無いはずなのに……

 今回の研究で行われた実験は、ある地点から、正三角形の頂点と同じ位置関係を持った3つの量子を同時に発射し、2つに分かれたルートを通らせ、その後合流して別の地点へ到達した量子の位置関係を調べるというものだった。このとき、3つの量子は分岐点で、0:3か1:2に分かれるはずである。なぜならば鳩の巣原理により、少なくともどちらかのルートには2つ以上の量子が通るからだ。

 もし同じルート内に2つ以上の量子が通った場合、量子同士は反発しあうため、お互いを外側に反らす性質を持っている。そのため、発射された3つ量子は、同じルートを通った量子同士の間だけ広がるような形になる。別のルートを通った量子は他の量子に影響されないため、分岐したときと同じ位置関係のまま合流する。

 つまり、2つの量子が同じルートを通ればその2点間が広がり、全てが同じルートを通ったなら、正三角形が広がったような形になるのだ。このことから、研究を行った量子力学界の権威であるヤキール・アハラノフ教授たちは、実験を何回も繰り返せば反発する量子の形跡がいくつも残り、正三角形が広がったような位置関係のデータが見られると予測していた。

 しかし実験の結果、何度繰り返した後でも発射したときの位置関係に変化がないデータしか得られなかったのである。これはつまり、量子間の反発がみられないということで、同じルートを通った量子が存在しないということになるのだ!

■宇宙に存在する量子はすべてつながっている!?

 アハラノフ教授はこの結果に「量子鳩の巣原理」と名付け、量子の「非局所性」を物語るものであると考えている。

 非局所性とは、離れたところにある事象同士が影響を及ぼす性質のことである。お互いに離れていても性質を共有する「量子もつれ」という現象と似ているが、量子もつれを起こしていないときでも、何らかのつながりを持っていることを示唆しているという。

 研究に参加したジェフ・トラクセン教授は「非局所性は科学の最も深い領域の発見であり、未来の技術の源泉になる」と話し、これからさらに研究を進める気概を示している。

 ちなみに、今回の実験では、以前トカナでもご紹介した、未来が過去を変えることを示唆している「弱測定」が使われている。次から次へと判明する摩訶不思議な現象に、思わず豆鉄砲を食らってしまうのはわれわれのようだ。

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