軍隊生活、100枚のイラスト=元高校教師、故人の手記出版―ユーモア交え日常活写 | ニコニコニュース

 4年前に91歳で亡くなった男性の戦争体験記が1月、出版された。過酷な訓練や新兵いじめなど軍隊生活の様子が、ユーモアを交えた文章とイラスト約100枚で描かれる。男性の知人で、出版した福島市の元高校教師菅野家弘さん(73)は「学術書には見られない貴重な生の資料。多くの人に読んでほしい」と話している。

 題名は「吾(わ)が青春に悔(くい)あり〜ある丙種合格一兵卒の涙と怒りの軍隊記録」。同市で陶磁器販売業を営んでいた菅野孝明さんが1994年、73歳の時に手書きの原稿と絵をとじ、友人ら20人に配った。その後、孝明さんと知り合った家弘さんが、遺族の承諾を得て1000冊を自費出版した。

 孝明さんは44年2月に召集され、朝鮮・京城(現ソウル)の陸軍工兵部隊に配属された。1年後に東京・赤羽に転属、終戦後、福島に復員した。

 軍隊生活では上官による虐待が横行。平手や革靴での往復ビンタ、握り拳で殴る「アンパン」、柱にしがみつきセミの鳴き声をさせる「セミ」、机と机の間の体を腕で浮かして足こぎをさせる「自転車」…。

 ある日、天井の梁(はり)にぶら下がる仲間を見つけた。こらえきれずに床に落ちた仲間は、上官から木銃で突かれて、またぶら下がることを繰り返した。「牛肉」と呼ばれたいたぶりで、豚のえさの残飯を便所で盗み食いしたのが理由だった。

 時には楽しみもあった。喜劇「金色夜叉(やしゃ)」が上演された演芸大会。おしろいを塗りたくったお宮が貫一に蹴飛ばされてひっくり返ると、もじゃもじゃのすね毛の足がむき出しに。「大ウケにウケて爆笑の連続」だった。

 脱走兵の捜索は、発見しても手柄にならないため、ハイキング気分。途中の集落で、果樹園の娘さんからリンゴをごちそうされ7個食べた。16個平らげた仲間もいて、「昼食後2時間しかたってないのに、よく入る胃袋だ」とあっけにとられた。

 「絵も文章も秀逸で、最初は一気に読んだ」と家弘さん。「孝明さんは声高に反戦を訴えることはなかったが、軍隊内部のいびつさと戦争の無意味さが伝わってくる」と話す。

 価格は1800円(税抜き)。購入希望者は、住所、氏名、電話番号を記して福島市平和委員会(ファクス024―522―6519)まで。