日本を脅かす少子高齢化への秘策 「日本逆植民地計画」とは | ニコニコニュース

移民を合法的に支援すればいい AP/AFLO
NEWSポストセブン

 日本経済がピンチだ。少子高齢化が進み資源も人材も限られる状態になりつつあるが、視点を変えれば成長力を得られる、と社会学者・橋爪大三郎氏はいう。以下、橋爪氏の見解だ。

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 少子高齢化による日本の労働力不足が深刻だ。その解決策に移民を受け入れるか否かが、議論されてきた。

 受け入れ慎重派はこう主張する。移民は日本語が話せない。単純労働につくしかない。低賃金で教育程度も低い。日本社会に適応できないで治安の悪いスラムを形成し、犯罪の温床になると。昨今の欧米がイスラム系住民と地元社会の摩擦に悩んでいるのをみると、慎重派の懸念にも理由があると思えてしまう。やはり移民はだめなのか。

 視点を変えてみよう。移民にしてみれば、自分たちは圧倒的な弱者。自分を守るために結束するのは当然だ。安心して暮らそうにも、アクセスしにくいものがある。まず、合法的な身分(就労ビザや家族ビザ)。第二に、働く機会。第三に住宅。第四に医療保険などの社会的サービス。

 それなら政府が最初からこれらを整え、移民のコミュニティを設立してはどうか。それが「日本逆植民地計画」だ。

 バビロニア国(仮称)と日本政府が、「逆植民地」の協定を結び、公募に手を挙げた過疎地域のA町をバ国の逆植民地に指定。バ国は数万人を上限に、A町に入植できる。バ国はバ国政府の出張所、警察、学校、病院などの施設を開設。バ国民同士のあいだではバ国の法律が、それ以外では日本の法律が適用される。バ国民がA町から出るには、日本国のビザが必要である。

 バ国以外にも各国の逆植民地をつぎつぎ開設。協定は数年ごとに見直して、経営がうまく行かなかった「逆植民地」は、閉鎖することにする。

「逆植民地」は、その昔の「植民地」とはまるで違う。日バ両国の合意にもとづく共同事業で、誰にとってもよいことだらけだ。

 まず故国にいるかのように、生活できる。バ国の公務員が逆植民地の役場で働いているから、住民サービスや納税もスムース。逆植民地開設に際しての初期投資はそんなに必要ないが、バ国が資金を負担する。日本は過疎地にも、電気ガス水道や通信など、インフラが整っているからだ。

 そして何より人材が育つ。逆植民地はコミュニティなので、単純労働者ではなしに、医師や教員や技師や公務員など、多様な職種の人びとや家族がやって来る。日本の技術やノウハウを身につけ、日本の学校で学び、日本の企業で働くこともできるだろう。

 受け入れ側の自治体はどうか。大勢の人びとがバ国からやって来るので地域が活性化し、地価も上昇。新たなビジネスも起こせるだろう。就労ビザを手に入れ、「逆植民地」から近隣の都市や工業地帯に働きに出てもよい。豊富な労働力を目当てに、「逆植民地」に工場を新設する企業も現れるに違いない。

 有能な人材は逆植民地を離れて、日本全国どこの事業所にも就業できるようにしよう。こうして独り立ちした人びとは、逆植民地の住民には数えないこととするので、その分の人数を代わりにバ国から新しく迎えることができる。技術や知識を身につけた人びとは故国に戻って、バ国の発展に大いに貢献できる。

 近年の紛争は、不合理な現状が改められない、不公正な感覚から生じている。恵まれたものとそうでないものは、資源や自然環境や歴史など、初期条件の違いに起因しているだけだ。「逆植民地」計画はその現状に風穴を空けることができる。先進国と第三世界が協力する、画期的なモデルケースとなるに違いない。

【PROFILE】1948年、神奈川県生まれ。社会学者。東京工業大学名誉教授。『あぶない一神教』『ほんとうの法華経』など著書多数。1月25日に『日本逆植民地計画』を発売。

※SAPIO2016年2月号