PlayStation VRに触れて、台湾の人気アイドルユニットDearsもそのリアリティに興奮【台北ゲームショウ2016】 | ニコニコニュース

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文・取材・撮影:編集部 古屋陽一

●パーティーゲームとしての『THE PLAYROOM VR』の魅力を訴求

 2016年1月28日~2月2日、台北世貿中心(台北ワールドトレードセンター)にて、台北ゲームショウ2016が開催。ここでは、1月29日にプレイステーションブースで行われたPlayStation VR ステージイベントの模様をリポートしよう。

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 登壇したのは、もちろんソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏。今回の台北ゲームショウ2016では、16本のPlayStation VR向けタイトルがプレイアブルで出展されるが、吉田氏はその中からワールドワイド・スタジオ開発による『The London Heist』、『RIGS Machanized Combat League』、『DRIVECLUB』、『Until Dawn: Rush of Blood』、『THE PLAYROOM VR』が紹介された。吉田氏の『DRIVECLUB』に対する「VRですと、本当にクルマに乗った体験が味わえます。これからレースゲームの究極の楽しみかたはVRを使った体験になると我々は感じています」や、『Until Dawn: Rush of Blood』に対する、「バーチャルリアリティとジェットコースターは非常に相性がいいんですね。それを『Until Dawn』の世界観で楽しむことで、同作を好きだった方は、また違った同作の楽しみかたができると思います」というコメントを聞いていると、いかにワールドワイド・スタジオが、VRというものの本質を見極めて、VRの楽しさを最大限に引き出せるようなラインアップを整えていたかがわかる。そういった意味では、ワールドワイド・スタジオが揃えたのは、戦略的な趣きの強い5タイトルと言える。

 中でもPlayStation VRのパーティーゲーム的用途にフォーカスしたと言えるかもしれない1本が『THE PLAYROOM VR』。PlayStation VRを使用したひとり対テレビモニターで遊ぶ4人によるマルチプレイが楽しめる本作は、「VRはひとりで楽しむもの」と思われがちなVRに違ったイメージを与える1本となる。ステージイベントでは、SCE JAPAN スタジオ クリエイティブディレクター兼プロデューサーのニコラ・ドゥセ氏が作品の魅力を紹介。さらに、台湾で“国民の妹”と言われる大人気アイドルユニットDearsのDewiさんと小安さんがゲスト出演し、『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』のクリエイターであるキュー・ゲームスのディラン・カスバート氏などを交えつつ、デモプレイを披露した。

 とくにおもしろかったのがDewiさんのモンスターっぷり! ヘッドセットを装着したDewiさんの動きはモンスターそのもので、まさに童心に帰って遊んでいるかのよう。そう、我を忘れて楽しめるのがVRの凄さなのです。「しっぽの先まで、モンスターになったかの気分が味わえました。楽しかったです!」と少し興奮した口ぶりでDewiさん。来場者には、PlayStation VRの魅力が大いに伝わったようです。

■吉田プレジデントがVRの可能性と課題を語る

 さて、PlayStation VR ステージイベントの後は、台湾のメディアを対象にした吉田氏とニコラ・ドゥセ氏へのインタビューが行われた。ここでは、おもに吉田氏の発言をピックアップして紹介する。

――VRのコンテンツを長時間プレイしていると、めまいを感じることがしばしばあると思いますが、PlayStation VRではその問題をどのようにクリアーしているのですか?


吉田 それぞれのデベロッパーが、どうしたら気持よくVRの体験ができるかというのを研究・実験して、わかったノウハウをシェアしたりしています。

(別の質問から派生して)


吉田 ソーシャルスクリーンの機能はニコラががんばってリクエストしたんです。ソーシャルスクリーンがいい例なのですが、SCEではプレイステーションのシステムを作るときに、ワールドワイド・スタジオのチームと、ハードウエアのチームがいっしょになって意見を出しあったりして、フィーチャーを作っていくんです。最初はミラーモードが予定されていたのですが、“セパレートモードでマルチプレイができる”というアイデアを、JAPANスタジオのニコラのチームが出してきたんです。そこでアイデアを形にすべく、リモートプレイとVita TVでプロトタイプを作って、ハードのスタッフに見せたところ、「これはいいね!」ということになりました。

――『THE PLAYROOM VR』はマルチプレイを前提としたゲームデザインになっていますが、PlayStation VRという商品は、そもそもひとり用で、制限された空間における経験を前提にしていると思います。この商品自体のメインコンセプトは“みんなで遊ぶ”というコンセプトとは違う印象を受けました。


吉田 たとえば、ネットワークにプレイステーション4をつないで、VRでアバターを使って、ある場所に行ってみんなで会って話をする……というのはものすごく楽しいんですね。ひとりで遊ぶのではなくて、みんなと仮想の世界に行って遊ぶ。あるいは、お話をすることができます。
 一例を挙げると、『RIGS Machanized Combat League』は、3人対3人で戦うロボットアクションゲームですが、たとえば戦う前にロビーにみんなで入って、待っているあいだにそれぞれの動きを反映してあげて、アリーナの待機場所で敵のプレイヤーが見える。そんなこともできたらおもしろいと思っています。必ずしもバーチャルリアルティはひとりで遊ぶということではなくて、『THE PLAYROOM VR』みたいに同じ部屋に集まってみんなが遊んだり、『RIGS Machanized Combat League』のようにネットワークでつながってみんなで会ったりとか、ソーシャルな活動や遊びもできます。

――セパレートモードはものすごくマシンパワーを使うと思うのですが、そもそもいまの段階で、PlayStation VRを使ったゲームは、プレイステーション4のパワーをほぼ使い切ったのではないでしょうか?


吉田 VRのゲームを作るほとんどの場合は、VRのゲームとしてデザインします。セパレートモードで違う絵を同時にレンダリングしようというゲーム内容であれば、それに合った設計をします。VRのために作るゲームというのは、VRの体験を気持よくするために、高いフレームレートを保つといったことがすごく大事になってきます。ふつうのゲームをVRにコンバートするのではなくて、VRのためにプレイステーション4のパワーを使うと、120Hzで非常に快適なVRのゲームが作れます。でも、デベロッパーがグラフィックスのアセットのクオリティを高くしたいといったニーズがあった場合は、たとえ120Hzでゲームを動かせなくても、60フレームでゲームを動かせば大丈夫です。システムのほうでそれを120Hzに変換してPlayStation VRに送るという、リプロジェクションという機能を持っているんです。
 たとえば、もともとの『DRIVECLUB』は30フレームで動いているゲームなのですが、まずチームがそれを60フレームのゲームにコンバートして、それをPlayStation VRのシステムが120Hzに自動的にコンバートして、PlayStation VRで楽しめるようになっているんです。
 既存のゲームをVRにして、うまく楽しめる例は少ないのですが、レースゲームは割りと比較的そのまま楽しめるというのがわかっています。『DRIVECLUB』というのはもともと30フレームのゲームだったのですが、もともとが60フレームのゲームであれば、それをPlayStation VRで120Hzにコンバートして対応するということは、比較的簡単にできます。
 あと、さらにおまけで説明しますと、PlayStation VRはヘッドセットだけではなくて、黒い四角い箱(プロセッサーユニット)との組み合わせになるんですね。プロセッサーユニットにはその名前のとおり、プロセッサーが入っていまして、プレイステーション4からPlayStation VRのヘッドセット用にレンダリングした映像を、テレビにキレイに見えやすいようにコンバージョンをするということを、プロセッサーユニットのほうで請け負っています。さらに、我々は3DのオーディオのシステムをSDKで提供しているのですが、そのコンピュテーションの一部もプロセッサーユニットが役割として持っています。

――では、さきほどおっしゃった、リブロジェクションも、このプロセッサーユニットが受け持っているのですか?


吉田 リプロジェクションはプレイステーション4が担っています。

――VRというテクノロジーの未来にどのような可能性を抱いていますか? 私たちの将来を大きく変えることになると思いますか? 携帯電話のように、我々の生活に浸透するものになるのでしょうか?


吉田 はい。私は生活に浸透するものになると思っています。VRというのは、もちろんゲームやエンターテインメントコンテンツも楽しいのですが、“自分が行けないところに行く”、あるいは“自分ができない体験ができる”ということでは、本当にたくさんの使い道、アプリケーションがあります。システムもPCをベースにしたもの。プレイステーション4/PlayStation VRのように家庭用ゲーム機をベースにしたもの。あるいは、Gear VRやGoogle Cardboardのようにモバイルをベースにしたものなど、さまざまなVRの技術を使った機器が、これからも作られていくと思います。
 たとえば、iPadみたいなタブレットも、いまではレストランや美容院などいろいろなところで使われています。あまり気にしなくてもふだんの生活の中で使われるようになっていますが、バーチャルリアリティの機器も同じように、一般の人があまり気にしなくても、VRの機器を「じつは今日使っていました」というような、そんな感じになっていくと思います。

――さきほど、セパレートモードの検証用として、リモートプレイを使って代用したということをおっしゃっていましたが、これからリモートプレイの機能をVRに応用することは可能でしょうか?


吉田 ちょっと想像がつかないのですが、プレイステーション4もそうなのですが、新しいプラットフォームを発売しても、そこで終わりということではありません。つねにシステムソフトウェアのアップデートなどをして、パフォーマンスを改善したり、フィーチャーを増やしたりしています。PlayStation VRが追加になるということ自身も、プレイステーション4のシステムの発展のうちのひとつになってきますので、将来的には、やはりいろいろR&D(研究開発)は続けていきたいと思っています。

――私自身はいくつかのVRコンテンツを体験しましたが、ひとつの敷かれたレールに沿って動くゲームだとかなりいい体験だったのですが、自分の体を動かすゲームとなると、動きがゆっくり過ぎてあまりしっくりこないという印象を、個人的には受けました。それはめまい対策になるのですか?


吉田 そのとおりですね。私は“右スティック問題”と呼んでいます。どういうことかと言いますと、3Dのアクションゲームなどでは、左スティックでプレイヤーキャラが動いて、右スティックでカメラを動かすという操作方法が主流なのですが、それと同じことをVRの中でやると、気持ち悪くなるんです。左スティックで、まっすぐ向いたまま向きを変えずに進む。それは大丈夫です。ヘッドセットのどっちを見ているかでカメラの向きを変える。それも大丈夫なのですが、では、体の向きを変えるのはどうしたらいいのか。それがVR業界共通の悩みです。
 それに対して、いろいろなデベロッパーさんがさまざまな実験をしています。ひとつの例としては、エピック・ゲームズさん開発による『Bullet Train』というゲームがあります。同作では、プレイヤーが見ているところにワープしちゃう。そのときに向いている方向も変えるということを実験としてされていて、それは気持ちいい体験になっていました。