人間の脳は考えられていたよりも10倍(1ぺタバイト)記憶できることが判明! | ニコニコニュース

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 数カ国語の外国語の辞書の内容がそっくりそのまま頭の中に入っていたらどんなに便利だろうか――。しかし頭のデキが悪いと悲観するなかれ、我々の脳の“記憶容量”はこれまで考えられていたよりも各段に大きいという最新研究が報告されている。


■脳の記憶容量は1ペタバイト

 米・ソーク研究所のテリー・セチノウスキー教授が主導する研究では、人間の脳はこれまでの定説より10倍もの情報を記憶できることが発表された。

 同研究チームがライフサイエンス誌「eLife」で発表した論文によれば、脳神経細胞の結合部であるシナプスのサイズを測ることで記憶容量を測定することに成功したという。平均的なシナプスは4.7ビット(0.5875バイト)の記憶容量があるということで、脳全体では約1ペタバイト(1,024テラバイト)の情報の記憶が可能であるということだ。これは従来の学説の10倍の記憶容量になり、書類をめいっぱい収納した4段式キャビネットの2000万個分の文字情報に相当するというから驚きだ。辞書一冊どころの話ではないのだ。HD品質の映像ならなんと13.3年分のデータ量である。

 研究チームはマウスを使って、記憶を司る脳の海馬の部分のメカニズムの解析を行ない、顕微鏡と計算アルゴリズムを活用して脳組織の神経伝達回路をナノ分子レベルの3D画像で再現した。この過程を経て、脳内に夥しく存在するシナプスのサイズがこれまで考えられていたよりも一定(サイズ差8%以内)であることがわかり、記憶容量も1本につき4.7ビットであることを算出。これにより脳全体の記憶容量が約1ペタバイトであることを突き止めたのである。

 記憶力、暗記力が低いとお嘆きの諸兄は、その嘆きは何かの言い訳であるケースがほとんどかもしれないということになる。我々の脳の素晴らしさが再認識される研究で、1度や2度試験に落ちたとしても(!?)、自身の持つ脳の潜在力を決して過小評価してはならないのだ。


■学習と記憶のメカニズムの研究にも寄与

 脳の記憶容量の大きさだけではない。この研究では脳がいかに“省エネ”であるかも再確認されることになった。

「今回の研究は神経科学の分野を騒がせるものになります。我々は、いかに海馬ニューロンが低エネルギーで高性能の演算機能を有しているのか、その構造を紐解くための鍵を発見したのです」とセチノウスキー教授はソーク研究所のサイトで言及している。

 一般成人の起床時の脳は20ワットのエネルギーしか消費していないという。最新型のLED蛍光灯1本分といったところだ。この省エネに優れた脳の構造を研究することで、将来は僅かな電力消費とパワフルな演算機能を両立させたコンピュータの開発に応用することができるという。

「この研究はまた、学習と記憶のメカニズムに関する研究に新たな一章をもたらすものになります」と研究チームのメンバーであるテキサス大学のクリステン・ハリス教授は語る。

 ハリス教授は今回の研究で新たな研究課題が多く生まれたことを指摘している。例えば海馬以外のほかの部分にあるシナプスの研究や、学習初期の段階におけるシナプス接続の発達過程などである。

 我々が頭蓋骨に中に抱えている脳の偉大さを改めて思い知らされる研究となり、人間として大いに勇気付けられるものになったのではないだろうか。人工知能に白旗を揚げるにはまだまだ時期尚早ということなのかもしれない。
(文=仲田しんじ)


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