【特集】いまさら聞けない「ガルパン」の魅力 ― ファンの心をグッと掴んで離さない“魅せ方”とは | ニコニコニュース

タイトルままに「女の子たち」と「戦車」がたくさん登場するアニメ「ガールズ&パンツァー」。2015年11月21日から公開されている劇場版が好調に推移していることもあって、さまざまなメディアで話題にのぼっています。それもあってか、シリーズ未見ながらも「ちょっと見てみようかな?」と興味を示す人が増えているそうです。

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読者の中にはすでに「ガルパンはいいぞ!」としか言えなくなってしまった人もいそうですが、今回はこれまで一度も視聴していないものの、見るきっかけを掴めていない新規ユーザーに向けて、ガルパンの魅力について少しばかり紹介させていただこうかなと思います。

といっても、そのまま話を始めたらとんでもない長さになってしまいそうだったので、ここは私がガルパンを何度も視聴して感じ取った「楽しいポイント」をいくつかピックアップする方法で進めていきたいと思います。

■ガルパンの世界観


「戦車」に乗って、まるでスポーツのように勝敗を競う「戦車道」が武道として広く浸透。それが“乙女のたしなみ”と言われ、「戦車と男子って合わないよね」という価値観が共有されている……『ガルパン』の物語はそういった世界で展開されます。

主人公では戦車に対してコンプレックスを抱く「西住みほ」という少女で、彼女が在籍する「大洗女子学園」の生徒たちが、魅力的なキャラクターたちが登場するライバル校を相手に挑み続けていくというストーリーが描かれています。

◆戦車の知識が無くても大丈夫!自然と知識が増えていく親切設計

こういったミリタリー系の作品は、どうしても「いや!史実ではうんたらかんたら」「まて!スペック表ではうんたらかんたら」と、あれこれと正義を振りかざす「解説おじさん」が元気になりがち。実際、ガルパンファンの中にもそういう人はいます。なんせ筆者がガルパンを放送当時に見ていなかったのもそれが理由ですしね。少しくらいは戦車や軍事の知識を持っていたほうが、作品をより楽しめるというのは間違いありません。しかし、そういった最低限の知識はガルパンの中にしっかりと準備されています。

例えば各戦車の特徴や弱点などは日常や戦闘の合間に挟まれるセリフで自然と理解できるようになっています。例えば「では、パンツァー・フォー!」「パンツのアホー!?」「パンツァー・フォー、戦車前進って意味なの」という聞き間違えエピソード、戦車が大好きな秋山殿が興奮しながら「(38Tの)Tっていうのはチェコスロバキア製ってことで、重さの単位のことではないんですよ!」といったエピソードがそれにあたるでしょう。

どうやって攻撃(砲弾)を命中させるのか、戦車の操縦方法など、文字で読むと小難しい解説もアニメというファンタジーのなかに描き出されるリアルとして散りばめられています。また、対戦相手として登場する英国やロシアなどをモチーフにした各学校、それぞれが運用する戦車の特徴なども、キャラのデザインや性格、セリフなどから見ているうちに自然と「イメージ」が掴めるようになっています。

筆者は正直に言って戦車の知識はほとんどありません。実際に「ガルパン」を初めて視聴したときも話についていけるか不安がありましたけど、アニメを見ているうちに自然と「そうなのか」と知らない世界を理解していく感覚がとても心地よかったです。なお、いまだに戦車の名前はほとんどわからない模様。

◆男子心をグッと掴んで離さない!“魅せ方”にこだわったカメラワーク

「男子心」、これは「乙女心」の男子版だと思ってください。男ではなく、男の子です。少年時代に誰もが持っていた「かっこいい」ものに対する純粋な憧れや興奮。それを刺激するカメラワークが「ガルパン」のあちらこちらに散りばめられています。

隊列を乱すことなく一体になって動く戦車隊をダイナミックに俯瞰するカメラワーク、車体をえぐるようにぶつかり跳弾してく砲弾を正面から捉えるカメラワークなど、ガルパンでは「ハラショー!おぉ、ハラショー!」と叫びたくなるようなカッコイイ魅せ方がいっぱい。そんな手に汗を握るようなシーンが何度も繰り返してやってくるのですから、興奮するなというのが無理な話です。

あとは車内の様子の見せ方がうまいことも注目ポイントですね。戦車という特殊な構造体の内部空間が的確に描き出されているので、外部から車体を映しているときでさえキャラクターたちがどこにいるのかがわかり、彼女たちの存在を感じられます。アニメの中の世界で描き出される空間が正確にイメージできるということは、つまりそれだけ世界観に浸りやすいということですね。

◆私「戦車がドリフト?できるわけないだろ!いいかげんにしろ!」冷泉麻子「できるぞ」

ガルパンの世界はリアルな描写とファンタジーな描写がバランスよく配合されたミラクルワールド。 短時間のうちに雪の下に戦車を隠す、重量級の戦車を他戦車で牽引して坂を登るなど、「そんなのありえないだろ!」と驚くような表現が頻繁に登場しているのも面白いところ。

例えばイタリア戦車「セモベンテM41」とドイツ戦車「III号突撃砲F型」が激しいぶつかりあうシーン。戦車同士が正面から激突!主砲身の先を突き合わせて、ゼロ距離砲撃戦を繰り広げる様子はさながら時代劇の殺陣のような激しさ!それから「ガンダム」の高速宙間戦闘、あるいは「ドラゴンボール」のサイヤ人同士のバトルよろしく、距離を取っては詰め、隙あらば砲撃を浴びせ合うという文字通りの接戦で魅せてくれます。

どう考えても「そんなの現実じゃありえないよね」とツッコミたくなる画ですが、正々堂々と正面から力と力でぶつかり合う脳筋的な描写は適切な理由付けがあれば“だからこそ”の熱いものがありますよね。興奮度を高めてくれる迫力満点のカメラワークも素晴らしいものでした。

◆テンポの良いコントのような展開、フラグ(お約束)があればすべからく回収していくスタイル

ガルパンの魅力といえば「カッコイイ」ことも重要ですが、やっぱり「笑える」ことも魅力かなと思っています。「押すなよ!絶対に押すなよ!」みたいな“お約束”と言えるパターンがいくつもあって、真剣勝負を繰り広げている最中にも遠慮なくぶち込んでくるので…正直、困ります(笑)。コントが始まったり、ボケとツッコミの正統派漫才が繰り広げられたり、急に歌い出したり…こればかりは実際に視聴してもらって楽しんでもらうしかないので、あれやこれやと紹介しづらいですね。

筆者が特に気に入っているのは、 第6話「一回戦、白熱してます!」で対戦したサンダース大学付属高校の副隊長・アリサ。彼女が搭乗するアメリカ戦車「M4A1」で逃げまわっている間に放った名コントで「(逃げながら)なにせ5万両も作られた大ベストセラーよ!バカでも乗れるくらい操縦が簡単で!バカでも扱えるマニュアル付きよ!」「お、お言葉ですが!自慢になってません!」のくだりはベタですが最高に笑えました。

◆みほの成長を見守る楽しさ

歩いていて看板にぶつかる、友達ができてはしゃいじゃう、「あわあわ」してて面白いと称された主人公「西住みほ」の初期の姿は、第1話の冒頭で描かれた少し未来の姿からは想像できないほど頼りなく、弱々しい印象を与えます。

そんな彼女が友人たちのサポートや各校との対戦を乗り越えていき、大洗女子学園の「戦車道」を通して、少しずつ「後ろ向き」な姿勢が「前向き」なものへと変化していく様が各回に少しずつ描かれており、なんというか……その成長を見守っていくのがいつの間にか楽しみになってくるんですよね。

みんなに支えられて、みんなを支えて、少しずつ成長してきた西住みほの一皮剥けた瞬間だなと感じるのは第8話「プラウダ戦です!」。共に戦っていた仲間のひとりが「絶対に負けるわけにはいかん、徹底抗戦だ!」と何が何でも勝ちにこだわる姿勢を見せたときに、「戦車道は戦争じゃありません。勝ち負けより大事なものがあるはずです。」と人を諭せるようになった姿は戦車道をたしなむ立派な乙女そのもの。ここ、2週目のときにはあることに気がついて、ちょっぴり涙ぐんじゃいましたね。

◆秋山優花里が大好き!でも他のみんなも好き!

メインキャラクターとなる「あんこうチーム」の5人が揃って、それぞれの役割が決まる第3話。「聖グロリアーナ女学院(英国系)」「プラウダ高校(ロシア系)」「黒森峰女学園(ドイツ系)」など、ライバル校のキャラクターやバックストーリーが出てくると、これまで「大洗女子学園」だけだったガルパンワールドがちょっとずつ広がっていきます。

するとまぁ誰もが好きなキャラ、いわゆる「推しキャラ」っていうのができてくるのがアニメの常。筆者は「好きなキャラを一人、選べ」と聞かれたら、迷わず「秋山優花里」の名をあげます。あの自分が好きなものに対してまっすぐな姿勢がとても好きです。

特にテンションが上がってしまって「ヒャッホーゥ!最高だぜー!」とパンツァーハイな姿を見せてしまったシーンなんてもうね。抱きしめて髪をグッシャグシャにしてやりたいくらいカワイイです。やっぱり秋山殿は最高だぜー!ヒャホーゥ!

しかし、2度3度とシリーズを視聴しているうちに、ふと気が付くとプラウダの隊長・カチューシャが愛おしく思えてきて、毎戦必ず観戦にくる聖グロの隊長・ダージリンさんの態度が好きになってきて……といった具合に、いつの間にか全員好きになっちゃうんですよね。いやー、不思議です。(笑)

これ、私だけかと思っていたら、最近になってガルパンおじさんと化した知人も「オマエもか」という感じで、初期からずっとガルパンおじさんだという知人も「そうだよな。そうなっちゃうよな」という反応が返ってきてまた不思議。たぶん「嫌い」になるような要素を持つキャラがひとりもいないのが要因なのだろうと思うのですが、他のガルパンおじさんたちはどうなんでしょうね。

◆そして、劇場版へ!ストーリーはほどほどに、圧倒的な爽快感をアナタに

アニメ「ガールズ&パンツァー」はテレビシリーズが全12話+総集編2話、それぞれBD&DVD(全6巻)が発売されています。全巻を購入するとちょっぴり高額になってしまいますが、特典としてショートアニメ(OVA)などの映像コンテンツが収録されているのでそれらもチェックしたい人はBD&DVDがオススメ。「Amazonプライムビデオ」などのVODでも配信されているので、まずは試しに見てみたいという人はそれを利用するのも良いでしょう。

また、放映終了後に発売されたOVA「これが本当のアンツィオ戦です!」はTVシリーズ第7話「次はアンツィオです!」のラスト約10秒ほどで描かれ、試合内容のほぼすべてを省略された「アンツィオ高校(イタリア系)」との対戦を描いたものなので、第7話を見終わったタイミングでOVAを見るのがベストだと思います。ただ戦闘終了後にTVシリーズ最終回のネタバレが含まれているので注意が必要です。こちらも映像ソフトとVODの両方で展開されているので、利用しやすい方を選ぶといいんじゃないかと。

そして、何かと話題になっている劇場版! 2015年11月21日からロングヒットを記録していますが、つい先日も「4DX(R)版」の上映が決定したり、上映館の追加が決まるなど、まだまだ勢いは衰えそうにありません。機会があるうちに鑑賞してほしいものですが、よく聞くのは「見てみたいと思ってるけど、いままで見たことないんだよな」というパターン。安心してください、問題ありませんよ。

劇場版はガルパン未見でも楽しめるように描いており、ツッコミを入れたくなるようなファンタジー・戦車・バトルを中心とした構成で、先程も触れたコント的な演出も特盛り。初見でもしっかりと楽しめるように「魅せる」ことに意識を置いた楽しいお祭り作品だという印象です。

「ガールズ&パンツァー 劇場版」を上映している劇場は、公式サイトの「THEATER」ページで公開されている一覧表で確認できます。1月30日から新たに複数の劇場で公開がスタートするなど、まだまだ鑑賞する機会が残されているうちに、劇場へ足を運んでみてはいかがでしょう。【ほかの画像を見る】【特集】いまさら聞けない「ガルパン」の魅力 ― ファンの心をグッと掴んで離さない“魅せ方”とは