羽生結弦“マゲの殿”で初映画、地元・仙台のストーリーに出演を快諾。 | ニコニコニュース

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フィギュアスケートの羽生結弦選手(21歳)が、「ゴールデンスランバー」「白ゆき姫殺人事件」「予告犯」などで知られる中村義洋監督の最新作「殿、利息でござる!」に出演することがわかった。その役どころは、ズバリ“殿”だ。

本作の舞台は、今から250年前の江戸中期、仙台藩吉岡宿。年貢の取り立てや労役で困窮する宿場町を守るため、知恵と工夫と決死の覚悟で立ち上がり、ついに地域を立て直した住人たちがいた――。実在した穀田屋十三郎ら庶民9人が、藩にまとまった金を貸し、毎年の利子を全住民に配る「宿場救済計画」を立て奔走する姿が現代に甦る。

造り酒屋を営むかたわら、宿場町の行く末を心から憂える主人公・穀田屋十三郎には阿部サダヲ。町一番の知恵者である茶師・菅原屋篤平治に瑛太。そして十三郎の弟で、吉岡宿一の大店・造り酒屋の浅野屋の主・浅野屋甚内には妻夫木聡と、豪華なメンバーが集結。


羽生選手の役どころは、映画のタイトルにもなっている“殿”である、仙台藩藩主・伊達重村役だ。出演シーンは少ないながらも、物語にとって重要な役柄であり、困窮する庶民の前に颯爽と現れる殿という役どころ。今まで映画などに出演することはなかったが、故郷である仙台に実在した人物たちの感動秘話に、出演を快諾した。氷上での演技で世界中を虜にした名実共に世界最高のフィギュアスケーターである羽生選手が、マゲ姿でスクリーンに初登場する。

初の映画出演、初の役者としての演技、さらにはマゲの殿様役という役どころに、羽生選手は「江戸時代の仙台藩を舞台にした映画『殿、利息でござる!』で、伊達の殿様役を頂き、初めて役者として、演技をさせていただきました。お芝居はスケートとは違って振りが無く、言葉を使い、セリフに合わせて動かなければいけないのでとても難しく、撮影現場では緊張してしまいましたが、映画製作の雰囲気を感じられて、素敵な俳優さんたちにもお会いできて楽しかったです」とコメント。

そして、「撮影は昨年の夏だったのですが、試合のプログラムだけではなくエキシビジョン、ショー等でも、表現者として今回の貴重な経験を活かすことができたのではないかと思っています」と振り返った。

 また、「このお話は実話を元にしているとのことですが、地元宮城にこんな素晴らしい話があったということに驚いています。殿様として、威風堂々とした姿と優しさを兼ね合わせるそのギャップを、自分なりに表現出来ればと思い一生懸命やりました。ぜひ楽しみにしてください」と作品をアピールしている。

そんな羽生選手の“殿”について、主演の阿部サダヲは「殿役が誰か、なかなか明かされず、役者同士で色々予想をしてたのですが、まさか羽生結弦さんとは思いませんでした…。撮影当日まで(ご本人と)全く会わず扮装が全て終わって、現場リハーサルでいきなりぶっつけ芝居だったにもかかわらずセリフも完璧に入っていて素晴らしかったです…。本来、殿様を庶民が見てたら『頭が高い』と言われるんでしょうけど、もう、ずっと笑顔で見つめてしまいました(笑)キレイでした(笑)普段は氷上で薄着だと思うんですが、撮影現場は夏で羽織袴に髷カツラで相当暑かったと思いますが、何度も何度も繰り返す撮影に文句言わず参加してくださったのが、さすが世界一のアスリートだと思いました」と感想を語っている。

さらに中村監督は「ついつい豪華キャストにしてしまったため、彼らが『殿様=雲の上の人』と仰ぐ俳優さん、というのがなかなか見つからなくなってしまいました。そんな時に出たのが羽生さんの御名前。これはもう、問答無用の雲の上の人で、かつ、この映画の舞台となる宮城県の御出身ですから、どこかで伊達の殿様との縁やゆかりがあったとしても不思議じゃありません。現場では、その立ち居振る舞いから目力の強さ、澄んだ声まで、殿様としての説得力に満ち溢れておりました。それにしても、この伊達の殿様は、今や仙台藩どころか日の本一となり、果ては世界までも征服されておられるわけですから、本当にとんでもない人をキャステングしてしまったもんだよなあと、僕ら自身も今だにおののいている次第です」と、羽生選手を起用した理由について語っている。

映画「殿、利息でござる!」は5月14日より全国公開。

☆池田史嗣(松竹)プロデューサーのコメント

江戸時代、庶民が殿様に直接会うことなど、ほとんど有り得ないことであったと聞きます。しかし史実として、伊達の殿様は吉岡宿の町人たちに会ったということが、記録に残されています。目の前にいきなり殿様が現れた時の、一般庶民の驚愕の表情はどんな感じだったのか……。

阿部サダヲさんを始めとした、クセ者揃いの中村組オールスターキャストをも圧倒する存在はもはや、役者ではないのではないかと監督が言い出し、内心では無理に決まっていると思いながらもダメ元で出したオファーの結果、奇跡だとしか思えませんが、スクリーンにあの国民的英雄が登場することとなりました。それも、並み居るトップクラスの俳優さんたちを圧倒する存在として。

このことは撮影当日まで現場内でも極秘扱い。リハーサルを終え、煌びやかな衣裳で登場した彼を見たときの皆の表情といったら……まさに、江戸時代、殿様が突然現れた時の主人公たちの表情と全く同じだったのではないかと思います。

この映画は笑って泣ける痛快時代劇ですが、250年の長きにわたり封印されてきた、信じられないような感動の実話でもあり、震災の時に世界中が驚いた日本人の根源的なマインドが、作品の中に込められています。そしてお話の舞台は羽生さんの地元である宮城県仙台。故郷のために役立てるなら、ということが出演の大きな理由だったと聞いています。どこまでも大きな故郷への思いと、それを実際に行動に移してしまう実行力に、心から敬意を表します。

一方で撮影現場では何事にも興味深々、同じ表現者として共演の役者さんたちに次々と質問を投げかけ、この機会にあらゆることを吸収しようとする良い意味で貪欲な姿勢には、さすが世界王者だと頭が下がる思いでした。

「殿、利息でござる!」少し変わった作品名ですが、タイトルにある「殿」は……もう、お判りですね。是非、劇場でその華麗な姿を目撃してください。どうぞお楽しみに。

☆ストーリー

金欠の仙台藩は百姓町人へ容赦なく重税を課し、破産と夜逃げが相次いでいた。さびれ果てた小さな宿場町・吉岡藩で、故郷の将来を心配する十三郎(阿部サダヲ)は、知恵者の篤平治(瑛太)から宿場復興の秘策を打ち明けられる。それは、藩に大金を貸し付け利息を巻き上げるという、百姓が搾取される側から搾取する側に回る逆転の発想であった。計画が明るみに出れば打ち首確実。三億円相当の大金を水面下で集める前代未聞の頭脳戦が始まった。

「この行いを末代まで決して人様に自慢してはならない」という“つつしみの掟”を自らに課しながら、十三郎とその弟の甚内(妻夫木聡)、そして宿場町の仲間たちは、己を捨てて、ただ人のために私財を投げ打ち悲願に挑む。