【レポート】VAIO Phone Biz登場 - PCメーカーがWindows 10スマホを作るとこうなった | ニコニコニュース

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●スマホは無視できない存在
VAIOは4日、Windows 10 Mobile搭載スマートフォン「VAIO Phone Biz」を発表した。これに合わせ、VAIOは発表会を開催。同社の大田義実社長がVAIOの取り組みや「VAIO Phone Biz」投入の意義などを説明したほか、日本マイクロソフト 取締役 代表執行役社長の平野拓也氏、NTTドコモ 取締役常務執行役員 法人ビジネス本部長の高木一裕氏(高ははしごだか)が、ビジネスパートナーとして登壇した。

・Windows 10スマホ「VAIO Phone Biz」正式発表

○スマホは無視できない存在

VAIOは2015年12月、SIMフリーのWindows PC「VAIO S11」と、プリペイド型SIMカードを発表している。VAIO代表取締役の大田義実氏は、こうしたハードウェアと通信を組み合わせる取り組みが、同社が設立時から表明してきた「+α」の付加価値であるとし、「PCを語る上でスマートフォンは無視できない存在。VAIOとしてどう提供するか、検討してきた」と、同社におけるスマートフォンの位置付けを語った。

今回、Windows 10 Mobileを搭載する「VAIO Phone Biz」を法人市場中心に販売開始。Officeや共通のインタフェースなど、Windows PCと高い親和性を持つWindows 10 Mobileスマートフォンで、法人市場を中心に展開する。VAIOは、今後もハードウェアを通信を組み合わせる+αの取り組みを進めていくとした。

「VAIO Phone Biz」の商品企画を担当した岩井剛氏は、同機を「ビジネスを加速するスマートフォン」と紹介。ビジネスシーンは、必ずしも落ち着いてPCを広げられるようなデスク仕事だけではなく、電車での移動や立ったままの状態でも、ファイルを確認したり、Officeを編集したりするケースがある。そんな時でも快適に使えることをコンセプトに開発された。

市場のポジションは、タブレットとスマートフォンの中間となる「高性能なスマホ」。他社との差異化は、Windows搭載の「PCメーカー」である点で、統一されたUIや、Office Mobileのプリインストールなど、Windows 10 MobileによるWindows PCとの親和性の高さを特徴のひとつに挙げる。

製品の詳細はニュース記事に譲るが、「VAIO Phone Biz」の特徴は「Windows 10 Mobile搭載」「SIMフリーと通信機能」「VAIOデザインと安曇野FINISH」の3点。

注目の機能は、Windows 10 MobileならではのContinuum機能。これは、対応のWindows 10 Mobileデバイスに外部ディスプレイを接続すると、接続先のディスプレイ上で、デスクトップPCのようにWindows 10 Mobileデバイスを使える機能。VAIOは日本マイクロソフトと協力し、プロセッサに採用するSnapdragon 617でContinuum対応を実現した。

また、SIMフリーのため、予算や用途に応じて通信会社やプランが選択できることも特徴。対応バンドは1/3/6/8/11/19/21。バンドについては、「海外から輸入するSIMフリー端末は、国内バンドを幅広くサポートするものが少ないが、今回は日本メーカーが日本市場のために開発したもの。国内バンドに一通り対応する」と自信を見せる。NTTドコモと相互接続性試験も実施する。

デザインについては、フラッグシップの2-in-1 PC「VAIO Z Canvus」のデザインテーマをスマートフォンに凝縮したという。アルミのインゴット(塊)を切削し、二十数工程を経て、つや消しの外装に仕上げ、高品位な印象だ。主要な加工や組み立ては提携する海外工場で行うが、最終検査は長野県の安曇野で実施。同社PC出荷前に行う、安曇野工場での全数検査「安曇野FINISH」を適用する。

●Windows 10 Mobile元年
パートナーとして登壇した日本マイクロソフト 取締役 代表執行役社長 平野拓也氏は、国内法人市場では、「Windows搭載スマートフォンを日本で出してほしい」との声が多かったと話した。

法人市場では、生産性の向上やセキュリティ対策など、ニーズが多様化しているが、「(VAIO Phone Bizは)しっかり受け入れられるのでは」と期待を込め、「市場には、PC、タブレット、スマートフォンと多くのプラットフォームがある。これをWindowsに統一することで、Windowsの利便性が向上する。管理者にとっても、セキュリティや管理が簡単になり、コスト面でもメリットがある」と、Windows 10 Mobileの優位性をアピールした。

また、法人向け販路のひとつであるNTTドコモ(法人ビジネス)は、2012年に日本マイクロソフトと協業し、モバイル回線付きWindowsタブレットの販売を推進してきた経緯がある。NTTドコモ 取締役常務執行役員 法人ビジネス本部長の高木一裕氏は、デバイス、ネットワーク、サービスの一体販売を視野にいれ、特にWindows 10 Mobileの展開については、VAIOという「メーカーブランドによる提供」を戦略のひとつに挙げる。

現在、Windows 10 Mobileスマートフォンの市場はエントリー層が厚く、Continuumが使えるような、ミドルレンジ以上の機種が少ない。「VAIO Phone Biz」はドコモの4バンドや、CA(キャリアアグリゲーション)に対応(VoLTEには非対応)。NTTドコモでは、法人ユーザーに新しい価値を提供できる端末として、法人向けパッケージサービス「ビジネスプラス」のひとつへ組み込むことを想定している。Office 365や、LTE-Advancedサービス「PREMIUM 4G」などと組み合わせ、2016年6月に追加する予定だ。

「Continuum機能やOffice 365、PREMIUM 4G、セキュリティなどの相乗効果で今後のライフスタイルを変革する。今年はWindows 10 Mobile最初の年。後押ししていきたい」(高木氏)。

●PCの設計技術で新ビジネス
VAIO代表取締役の大田義実氏は、VAIOのPC以外の新規事業と、今後始める事業についても紹介した。

VAIOでは現在、基幹のPC事業に加え、新規事業として富士ソフトのコミュニケーションロボット「Palmi」の量産や、ベンチャー企業Moffの子供向けウェアラブルバンド「Moff Band」の設計支援と製造を行っている。

これは、VAIOに「卓越した設計/製造技術」、設計や製造技術を支えてきた「経験豊かな人材」、そして「ブランド力」の3つの強みがあるためとする。高密度設計や実装技術、(ソニー時代の)AIBOで培ったロボット製造技術など、「今までPCに活かしてきた技術を、今は新規領域に積極的に展開している」と大田氏は紹介した。

これを踏まえ、今後はものづくりのノウハウを、スタートアップ企業の支援にも活かす。電機・電子機器メーカー向けに電子デバイスやソフトウェアなどを提供するマクニカと協業し、メイカーズ向けにハードウェアの量産支援サービスを支援。VAIOの高密度実装や放熱設計、設計の初期段階から全部署が参画する「上流設計」といった資産を、スタートアップ企業やパートナー企業などに提供する。

「ロボットやIoT機器、セキュリティ業界まで、さまざまな業界から技術や量産の相談を受けている。VAIO新規事業の柱として着実に前進していく」(大田氏)。

(村田奏子)