テロ犠牲、息子の遺志実現=父が来日奨学金創設―仏 | ニコニコニュース

 【パリ時事】日本への留学を希望しながら昨年11月のパリ同時テロで犠牲となったユーゴ・サラドさん=当時(23)=の父親ステファヌさん(50)が、訪日を目指すフランスの学生を支援する奨学金を創設した。予算の制限から当面は年1人が対象だが、企業などの協力を得て規模を拡大させたい考え。「息子の遺志を継ぐ若者にチャンスを与えたい」と意気込んでいる。

 仏原子力・代替エネルギー庁に勤めるステファヌさんは、1997年に仙台で開かれた学会で物理化学の博士論文が表彰された。これを機に東北大と共同研究を進めたり、熊本大で客員教授を務めたりするなど日本との関わりを深めた。その間、5回にわたってユーゴさんと日本を訪れ、「父子共に日本への親近感を深めた」という。

 ユーゴさんは父の母校でもある仏南部のモンペリエ大学に進み、将来は日本で人工知能分野の博士論文を執筆する夢を抱いた。昨年10月には友人と約10日間かけて日本各地を旅行。帰国直後の11月に訪れた劇場でテロリストの凶弾に倒れ、帰らぬ人となった。

 人間関係などで悩んでいたユーゴさんは日本滞在中に開放的な気分に満たされ、胸に漢字で「自由」というタトゥーを刻んだという。奨学金はこのエピソードにちなみ、「ジユウ(自由)・ユーゴ・サラド」と名付けられた。

 奨学金はモンペリエ大などの学生が対象。ステファヌさんの自己資金や教育機関の協賛金によって、日本での研修に5000ユーロ(約63万円)を助成する。初の対象者は3月末に発表される予定。ステファヌさんは人工知能の研究者を対象とする奨学金第2弾も検討しており、「日本企業の参加も期待したい」と話す。