認知症の男性が徘徊(はいかい)中に列車にはねられ死亡した事故をめぐり、JR東海が家族に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は1日、男性の妻(93)と長男(65)の賠償責任を認めず、JR東海の請求を棄却する判決を言い渡した。家族側の勝訴が確定した。

 社会の高齢化が進む中、判決は認知症の人に対する介護の在り方に影響を与えそうだ。

 訴訟では、妻と長男は監督責任を負うのか▽監督責任者に当たる場合、賠償責任は免責されるか―が争点だった。

 第3小法廷は監督責任者について「同居する配偶者だからといって、直ちに当たるわけではない」と初判断。「認知症の人との関係性や、介護の実態などを総合的に考慮して判断すべきだ」との基準も初めて示した。

 その上で裁判官5人のうち3人は多数意見で、事故当時妻は85歳で要介護1の認定を受けており、長男も20年以上別居していた点を指摘。「男性の監督が可能な状況ではなかった」として、監督責任を負わないと結論付けた。