食糧不足の救世主に! 「昆虫」が世界を救うってほんと? | ニコニコニュース

マイナビスチューデント

生きるために必要な「食事」。日本では食料不足を感じる機会が少ないものの、地球規模では大問題。2050年には6割程度のひとしか食べ物が手に入らなくなると推測されるほど深刻な話題です。

そこでいま注目されているのが「昆虫」で、エサが身になる飼料変換率が高いだけでなく、タンパク質やミネラルなど栄養も豊富。見ためや抵抗感を抜きにすればきわめて理想的な栄養源です。ただし「養殖」が必須条件で、探しまわっていると栄養が「赤字」になってしまう可能性・大。「昆虫牧場」が誕生する日も、そう遠くないのです。

■昆虫を食べて元気になろう!

天候の影響で野菜が値上がり、牛乳不足でバターが入手困難なんて話をニュースで聞いたことがあるでしょう。インタビューされたひとが「高くて困っちゃう! 」なんてコメントするのが定番ですが、ひとり暮らしならいざしらず、学生にはスルーされがちな話題。ところが食料難が続く国は多く、いまでも地球規模では「足りている」と呼べない状態で、この先さらに不足するのは確実、と考えられています。

国際連合食糧農業機関(FAO)のレポートによると、2050年には、

 ・人口 … 90億人
 ・都市部の面積 … 世界の70%

になると予測され、現在よりも25%も多くのひとが暮らすことになります。食べ物も25%増しになれば同じ水準を維持できますが、都市部は1.4倍にアップ、つまり農地はさらに減るため食料不足は不可避……現在の7割増しで用意しないとまかないきれないのです。

そこで着目されているのが「昆虫食」で、最大の魅力は飼料変換率の高さ。1kgの牛肉を得るには8kgの飼料が必要と言われているのに対し、昆虫はたったの2kgで済むため、4分の1のエサで済みます。また、必要な水の量、育てるためのスペースもわずかなので、場所を選ばないのも利点のひとつです。

ムシを食べるなんて! と思うひとが多いでしょうが、バッタに似た「いなご」、「はちのこ」は日本の郷土料理にもなっているほどで、料理後・100gに含まれる主要な養分をあげると、

 ・いなご(つくだ煮) … マンガン・1.21ミリグラム
 ・はちのこ(缶詰) … ビタミンB1・0.17ミリグラム

と優秀な栄養源。文部科学省のデータベースにも登録されているほどですから、特異な存在ではないのです。

■ムシ探しが「仕事」になる?

昆虫を捕まえて食べる生活は、成り立つのでしょうか? 山や川で捕まえれば文字通り「ゼロ円生活」ができるでしょうが、答えはNo。よほど条件が揃わない限り、カロリー的に赤字になってしまうからです。

世界で食べられている昆虫の多くは陸生なのに対し、水に住む昆虫を捕まえたらどうなる? も研究され、1日に必要なタンパク質から、ムシを探している時間を割り出したところ、

 ・ムシが少ない場所 … 女性・10.5時間 / 男性・11.9時間
 ・比較的多い場所 … 女性・3.9時間 / 男性・4.5時間

が必要とわかりました。男性のほうが長時間なのは必要なタンパク質が多いためで、ムシが少ないところでは半日働いて「やっと」足りる状態… ハンターではありませんが、つねにムシを探し続けて引っ越ししないと生活が成り立ちません。同時に、2050年には都市部が4割も増えることは、ムシの生息地も減ることを意味していますから、ハンター生活でも不可能と考えるべきでしょう。

育てた昆虫をエサにして魚や鳥を育てられないか? クモを食べたらどうよ? などさまざまな研究がなされていますので、興味のあるひとは専門家の指導のもとで「試食」してみるのも「あり」でしょう。

■まとめ

 ・2050年には人口90億になり食べ物が6割も不足する、とのデータあり
 ・あらたな食料として脚光を浴びているのは「昆虫」
 ・飼料変換率が高く、同じ重さなら、牛の4 分の1 のエサで済む
 ・1 日分のタンパク質を水に住むムシだけでまかなうなら、半日探すことになる

(関口 寿/ガリレオワークス)