吉沢 亮「中村文則さんの描く人物と、どこか自分は似ていると感じることがあります」 | ニコニコニュース

『銃』(中村文則/河出文庫)
ダ・ヴィンチニュース

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、朝井リョウ原作のドラマ『武道館』で、アイドルとひそかに心を通わせる高校生を演じている吉沢亮さん。今回、おすすめ本でもセレクトし、ずっと夢中で読んでいるという中村文則作品の魅力について、話を訊いた。
「ドラマで共演していた役者さんに“好きな本は何ですか?”と訊いたとき、『掏摸』が面白いと教えてもらって。それが中村文則作品との出会いでした。その心理描写、エンターテインメント性に惹きつけられ、すぐに他の作品も読んでみようと思いました」

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『掏摸』の兄妹編である『王国』、『土の中の子供』、『悪と仮面のルール』……吉沢さんの口からは次々とタイトル、そして“語らずにはいられない”というように、その作品への想いが零れ出る。今回、おすすめの一冊も、最後まで『遮光』と迷ったそうだ。

「完全にハマったのは、施設で育った刑務官が主人公の『何もかも憂鬱な夜に』。すごく沁みる言葉が多くて。どんな人間にも等しく芸術に触れる権利はある、とか……」

 中村作品に惹かれるのは、登場人物の感情が自分のそれに重なってくるからだともいう。

「鮮明にわかるというか。どこか自分に似ているのかもしれません。たとえば『銃』でいうと、銃を拾って高揚した気持ちの主人公が、いつも普通にしている行動を意識的にしたり、普段は絶対にしないようなことをやってみるといった表現が出てくるのですが、その気持ちはリアルに理解できる。自分もなんかうれしくなったとき、そういう行動を取ることがありますから」

先頃、有栖川有栖原作のドラマ『臨床犯罪学者 火村英生の推理』で演じた役は、そうした自分の理解の範疇を超えた役だった。

「最後まで救いようのないクズな人間でした。実はああいう役をずっと演ってみたいと思っていたんです。お話をいただけた時は本当にうれしかった」

ドラマ『武道館』の大地役は「今まで演じてきたなかでは自分に近いほうかもしれません」このところ演じる役の幅がどんどん広くなっている。

「今は“こういう役”というより、いろんな役を次々演じてみたいと思っています。あえて言えば、何も特徴のないのが特徴みたいな“普通”な人を演じてみたい。すごく難しいと思うんですが、それがきちんと演じられる役者になりたいと思っています」

(取材・文=河村道子)

『銃』中村文則 河出文庫 540円(税別)

大学生の西川が河原で“出会った”動かなくなっていた男。その傍らに落ちていた黒い物体を持ち帰ってしまう。圧倒的な美しさと存在感を持つ“銃”に魅せられた彼は、いつかその銃を撃つ、という確信を持つようになるのだが─TVから流れる事件のニュース、訪ねてきた刑事……追い詰められた西川が下した決断とは?

※吉沢亮さんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ4月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!