サカナクション、セカオワ、ゲス乙女……男女混合バンドが増加する理由 | ニコニコニュース

男性メンバーはもちろん、女性メンバーが音楽的な要となっているサカナクション
オリコン

 ここ数年、男女混合バンドの活躍が際立っている。最近、『NHK紅白歌合戦』初出場を果たした若手バンドを振り返ってみても、サカナクション、SEKAI NO OWARI、ゲスの極み乙女。など、男女混合バンドが多い。男性のみ、女性のみのバンドと比較して、男女混合バンドが活躍している理由はどこにあるのだろうか? また、その魅力、利点はどこにあるのだろうか? 考察してみたい。

【画像ギャラリー】『紅白』リハに登場したゲスの極み乙女。

◆高い技術を持った女性プレイヤーが増加 アレンジの要になるバンドも

 近年、男女混合バンドが増えている理由としては、まずは純粋に技術を持った女性プレイヤーが増えていることが挙げられるだろう。2000年代のガールズバンド人気や洋楽を含め楽器を抱えて歌う女性シンガー・ソングライターがブレイクしたこと、さらには『けいおん!』といったTVアニメなどの影響もあり、女性プレイヤーが飛躍的に増加。以前はバンドにおける女性のポジションというとキーボードが多かったが、ジャンルも多様化し、ここ数年、華奢な身体でベースをガンガン弾いたり、ドラムをパワフルに叩く女性プレイヤーを見かける機会も増えてきた。

 最近では女性メンバーが演奏、アレンジの面の軸になるケースも多い。それが最も良いカタチで示されているバンドは、やはりサカナクションだろう。ブラックミュージックの影響を感じさせるベースラインでバンドのグルーヴを支える草刈愛美(Ba)、エッジの効いた音色とフレージングでダンスミュージックのテイストを押し出す岡崎英美(Key)の存在は、このバンドの音楽的な要と言っていい。昨年パリコレに参加、さらにクラブイベント「NF」を立ち上げるなどバンド以外の活動も目立っている山口一郎(V&G)は最近のインタビューで「僕がいろいろ出来るのも、メンバーに支えられているから。うちのメンバーはすごいです」とコメントしていたが、その中心が女性メンバーであることがこのバンドの大きな魅力につながっているのだと思う。

◆男性がいるからこそ際立つ 女性メンバーにスポット当たる演出

 また、男性のみのバンドに女性が入ることで、ビジュアルワークでも新たな展開がしやすいという利点がある。この特性をもっとも上手く活かしているバンドのひとつが、ゲスの極み乙女。であることは間違いないだろう。件の騒動で別の方面で取り上げられる機会が増えてしまったが、バンドとしてはデビュー以降、堅実な活動を続けている。インディーズ時代から、ミュージックビデオ、アーティスト写真などで、ほな・いこか(Dr)、ちゃんMARI(Key)のルックスを存分に活かし、他のバンドとの差別化を図ってきた。「ドレスを脱げ」「キラーボール」などのMVではほな・いこかのセクシーなショットをふんだんに使い、「あの可愛いドラマーは誰?」と話題を集めることに成功。どんなにルックスが良くても女性のみのバンドでは埋もれてしまうこともあり、男女混合バンドだからこそなおさら際立つ。

 また、このふたりはプレイヤーとしても極めて優れていて、ライブにおいても重要なポイントとなっている。“ドSキャラのほな・いこかが、彼女に憧れている(という設定の)休日課長(Ba)をイジり倒す”という演出もこのバンドの特徴。“動画サイトなどで認知度を高め、ライブへの動線を作る”という流れが定番になりつつある現在のロックバンドの活動において、男女混合バンドにおけるルックスのいい女性メンバーはきわめて効果的なフックになると言えるだろう。

◆女性ならではの視点でプロデューサーとしての手腕発揮

 ビジュアル的な部分だけではなく、ライブにおいてプロデューサー的な役割を果たしているのがSEKAI NO OWARIのSaori(Key)。2013年10月の野外イベント「炎と森のカーニバル」では巨大な樹木をステージの中央に据え、炎、ウォータースクリーンなど使った演出を披露。昨年の日産スタジアム公演でも列車に乗ってメンバーが会場を1周、さらに列車型のバルーンを登場させるなど、創造性に富んだアイデアと壮大なスケール感を併せ持ったステージによってファンを引き付けているセカオワだが、その要になっているのがSaoriなのだ。インタビューなどでは「Fukaseのやりたいことを具現化するのが私の役割」という趣旨の発言を繰り返しているが、ライブの規模、予算、スタッフワークなど全体的なバランスを取りながら、バンドという枠を超えたステージを実現させている才覚は現在のバンドシーンのなかでも群を抜いている。そこには女性らしい細やかな感性、他の男性メンバーの意向を上手くまとめるバランス感覚の良さも存分に活かされているはずだ。

 このほかにも、WHITE ASH(彩/Ba)、Czecho No Republic(タカハシマイ/Key)、Siggy Jr.(池田智子/Vo)、Awesome City Club(PORIN/Vo&Syn ユキエ/Dr)、雨のパレード(大澤実音穂/Dr)など、際立ったセンスと個性、ミュージシャンとしての実力を併せ持った女性メンバーを擁するバンドが続々と控えている。幅広い層のリスナーを取り込める可能性を持った男女混合バンドは今後も大きな注目を集めていくことになりそうだ。

(文/森朋之)