原発推進、揺らぐ信頼=野党は争点化目指す―安倍政権 | ニコニコニュース

 原発の再稼働や海外輸出を進める安倍政権。2011年3月の東京電力福島第1原発事故を踏まえ「安全最優先」を強調するが、トラブルや運転差し止めの司法判断に直面し、信頼性に揺らぎが生じている。一方、参院選で共闘を目指す野党5党は「原発ゼロ」を対立軸の一つに据えようとしている。

 ◇再稼働の2基停止

 「安全第一で万全を期し、十分な対策を講じてもらいたい」。安倍晋三首相は3日の参院予算委員会で、福井県の関西電力高浜原発4号機が再稼働直後にトラブルで緊急停止したことにいら立ちをにじませた。

 首相は12年末の政権復帰後、原子力規制委員会の審査に合格した原発を順次再稼働させる方針を表明。昨年8月に鹿児島県の九州電力川内原発1号機が再稼働したのを皮切りに、同10月に川内2号機、今年1月に高浜原発3号機、2月に高浜4号機と続いた。

 だが、高浜4号機に加え、同3号機も大津地裁の仮処分決定で停止を余儀なくされ、首相らが豪語する「世界で最も厳しいレベルの規制」に疑問符が付いた。政府は審査合格済みの愛媛県の四国電力伊方原発3号機や、審査中の21基の再稼働を目指すが、逆風は避けられない。

 首相は国会答弁で「福島原発事故を片時も忘れずに反省し、教訓を踏まえていく」と繰り返しているものの、同原発では汚染水を遮断する凍土壁整備が難航。また、民主党政権が「例外中の例外」とした40年を超える原発の運転も検討されており、不安材料は尽きない。

 ◇「ゼロ」が「22%」に

 野田政権は震災後の12年に福井県の関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を認めた一方、「30年代に原発稼働ゼロ」とする方針を打ち出した。

 ところが、安倍政権は14年4月に策定したエネルギー基本計画で、原発を「重要なベースロード電源」と明記。15年7月には30年度の原発比率を「20〜22%」と設定し、原発活用へ大きく路線転換した。

 政府高官は「電気料金を抑え、企業や国民の負担を軽減する必要がある」として、経済政策「アベノミクス」の好転に原発再稼働は欠かせないと主張する。再生可能エネルギー普及には時間がかかり、温室効果ガス削減のため化石燃料にこれ以上頼れない事情もある。

 一方、民主、共産、維新、社民、生活の5野党は参院選向けにまとめる共通政策に「脱原発」を盛り込む方向だ。ただ、支持基盤に電力関連労組を抱え段階的取り組みを描く民主党と、「即時ゼロ」を唱える共社両党との間には温度差があり、時期や手法で一致点を見いだせるかが課題だ。