iPSで目の発生再現=角膜移植、臨床研究へ―大阪大 | ニコニコニュース

 人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から目のもとになる組織を作製し、目の発生段階を再現することに成功したと、大阪大の西田幸二教授らの研究グループが発表した。この組織から角膜上皮を作る技術も開発しており、角膜の難病患者に移植する臨床研究を来年度中に申請する予定。論文は9日付の英科学誌ネイチャー電子版に掲載された。

 iPS細胞から、目の奧にある網膜や網膜色素上皮などを作製する技術は既に報告されており、理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーらは2014年9月、滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑変性の患者に移植する臨床研究を世界で初めて実施した。

 ただ、角膜や水晶体など目の前部と、後部の網膜などの両方を同時に作る技術はなかった。

 研究グループは、京都大iPS細胞研究所(山中伸弥所長)から提供されたiPS細胞を使い、同心円状の四つの帯状構造でできた組織「SEAM」(シーム)を作製。3番目の帯状構造から取り出した細胞から、機能的な角膜上皮組織を作ることに成功した。

 作製した角膜上皮組織をウサギに移植したところ、視力低下の要因となる白濁などの現象は起きなかった。

 西田教授は記者会見で「人への応用に期待が持てる」と話した。角膜だけでなく、目の他の部分の再生医療技術の開発につながる可能性があるという。