【全文】「保育園落ちた」関連質問に安倍首相が応える | ニコニコニュース

3月14日、参議院予算委員会で、共産党の田村智子議員が質疑を行った。昨今、注目を集めている保育園問題について、安倍首相、塩崎厚生労働大臣などが回答した。本記事では、その質疑の様子を書き起こしでお伝えする。

実際の質疑の様子は参議院インターネット審議中継で確認することができる。(※可読性を考慮して一部発言を文章として整えています。)

安倍首相「署名からは保護者の苦労、切実な思いが伝わってきた」


田村智子議員(以下、田村):現在、保育所に申し込んだけれども入ることができないことが、大問題になっています。「保育園落ちた」という匿名ブログに共感の声が次々と広がって、国会前のスタンディングや2万8千人近いネット署名へと広がっています。

政府は一貫して「待機児童ゼロ」を掲げていますが、3月現在「申し込んでも保育所に入れなかった」という人はどれぐらいいるのか。調査を行っていますか?

安倍内閣総理大臣(以下、安倍):保育所に入所できない保護者からの署名につきましては、そうした方々の大変なご苦労、切実な思いが伝わってまいりました。安心して子供を育てていただくために、仕事と子育てが両立できるよう、働くお母さんたちの気持ちを受け止め、「待機児童ゼロ」を必ず実現させていく決意であります。

その上で、保育所に申し込んで利用できなかった方々には、様々な事情があると認識しており、これをよく分析をし、保護者の方々が希望通り働けるようにしっかりと対応していく考えであります。厚生労働省を中心に地域と連携し、利用状況の実態把握などに努め、子育て家族の切実な声に応えられるように取り組んでいきたいと考えております。

塩崎厚生労働大臣(以下、塩崎):いま総理から基本的なスタンスについてはお話を申し上げましたけれども、調査については、毎年この時期は、4月の保育所などへの入園に向けて、利用申し込みに対する認定が行われている時期でございまして。現段階で、利用先が決まっていない申込者については、今後市町村が、年度末に向けて丁寧にご本人の利用意向と空き定員とのマッチングをするという作業をして、その数を減らしていくと。こういうことを、これからやっていくので、そうした努力を自治体の皆様方にきめ細かく、全力をあげてやっていだだいているところでございます。

一方で、待機児童問題でご苦労されている方々を確実に減らしていくためにも、自治体とも厚生労働省も当然のことながら連携をして、現状の把握を絶えずしていきたいと考えているところです。

田村:「今」が問題なんです。「今」どのぐらいいるか。私はこの実態を掴まなければと、今月の初め、党の都議団と共同で都内の全自治体に問い合わせを行い、保育所の申込者数、一次募集での未内定者数。つまり、不承諾通知を受け取った方が、どれぐらいいるか調査を致しました。

回答があったのは都内62自治体のうち、14区30市町村で、集計すると約2万人。申し込んだ方の35%が不承諾。ここには、江東区、太田、練馬、足立、江戸川といった規模の大きい区の数字が入っていませんので、これらの数字を考慮いたしますと、おそらく東京全体で2万6千とか、2万数千という規模に上ると思われます。

この2万人を大きく超える、2万数千人もの方々が、保育園落ちた、いわば「保育難民」ともいえるような状態になっている。このことをどう認識されますか。

塩崎:実際はもう動いているわけですので、確定的に最終的に、何人入ることができなかったのかという、いわゆる待機児童、4月1日時点でどうなるか。それを今確定することは、なかなか難しいということがいえると思います。

それから報道などでは、いまいくつかありましたが、明示的に書いてあるのは、「認可保育所」。これにどれだけ入れなかったかということが指摘をされているわけです。

共産党の皆様がお調べいただいたのは、おそらくそうだと思うのですが、これから例えば、東京都であれば「認証保育所」。ここに行かれる方もおられるわけでありますし、いろんな形で最終的な行き先が決まっていくわけで。最後に残るのが本当の「待機児童」ということになりますので。

今どうなっているか、ということについては動きがございますので、先程申し上げたとおり市町村が今必死になってマッチングをして働いている状況。距離とか兄弟とか、子供さんが何人おられるとか、そういうことで割り振りを、いま一生懸命マッチングで努力しているというふうに理解をしているところでございます。

安倍:基本的には厚生労働大臣が答弁をさせていただいたとおりでありますが、各自治体等で情報共有や意見交換を緊密にして実態をしっかりと把握をして、安心して、お子さんを育てていくために、仕事と子育てが両立できるように。働くお母さんたちの気持ちを受け止めながら、「待機児童ゼロ」に向けて施策を進めていきたいと考えております。

田村議員「政府の皆さんもっと知恵を出せると思います」


田村:「今調整中なんだ」「だから年度末に数字を見ればいいんだ」というのでは私は遅いと思います。

3月5日、「保育園落ちたの私だ」という国会前のスタンディングに、私も当事者からお話を伺うために駆けつけました。生後2ヶ月の赤ちゃんを抱っこしたお母さんは、「派遣社員で4月に仕事を復帰しなければ契約を切られてしまう。産休明けで受け入れてくれる保育所は限られている。どうしたらいいのか。真っ暗闇の中にいる」という方。あるいは、「4月からどうなるのか、不安で一杯だ」という方。いろいろあたりつくしているんですよ。

保育が確保できないために、仕事やめなければならない。こんな事態を放置するわけには行きません。非常事態という認識で、緊急の対策に国も自治体も乗り出すべきだと思います。

そこで私は提案をしたいと思います。調べてみますと、過去にも緊急対策に動いた自治体はあるのです。例えば、2014年の春、杉並区では公的施設を活用した保育室を複数設置して、200人規模の緊急受け入れをしています。世田谷区では同じ年、4月開所予定の保育園が間に合わないという事態に対して、都有地に仮説園舎を建てて、180人を受け入れています。こういうことに学んでですね、いくつか提案をしたいと思います。

まず自治体による緊急の保育です。公共施設を活用する。公立保育所の元保育士にあたるなど、保育士さんの確保も実際、自ら努力をする。そうやって促していただきたい。小規模保育については、自治体が施設の整備や運営をする場合にも国庫補助の制度の対象になります。このこともぜひ周知をしてほしい。

それから二つ目に国による新たな財政的な支援です。公立保育所に対して、国はいま補助金を出していません。しかし、定員拡大のための分園設置や改修など公立保育所に対しても緊急の財政措置が必要だと思います。

また、国有地の活用。いま特養ホームは従来の1/2の費用で貸し出すと制度が変わりました。保育所についてもすぐに同じ扱いにしてほしいと思います。

そして三点目。企業に対して呼びかけてほしい。解雇・雇止め起こさない。4月に働き始める予定だというお母さんの内定を取り消さないように呼びかけるとか、育児休業中の雇い止めや解雇は育児休業法違反にあたるんだと。こういうことも今、緊急に周知することが求められていると思います。

もっと知恵出せると思います。政府の皆さん。いかがでしょうか。

塩崎:おっしゃるように、これは自治事務でありますけれども、やはり子供のことですから、厚生労働省としては責任をもって市町村と連携をして、出来る限りの努力をするというのは当然のことだと私も思っておりまして。いま、お話がありましたように市区町村にきっちりと協力をするということで、厚労省が先頭を切ってやるということは当然、やらなければいけないと思っております。

あと、使える助成金などについては、もちろん改めて市町村にわかっていただくように努力をするべくやっていきたいと思いますが。もう既に、先程申し上げたように、一回目の認定で入れなかったということは、わかっていて、第2次、第3次とやっている真最中なものですから、今すぐ集めるというわけには、なかなかいかないので、電話連絡などで、いろいろ連携をとって、例えば東京都とか都道府県を通じて、やっていることが多いわけでありますけれども。そのような国で何ができるのか、ということについても下ろしていきたいと思っております。

企業が、今お話のようなことをするというのは、ある意味当然のことでありますけれども、ご案内のように、企業については、企業の主導で保育園を作るということについて、今回の28年度の予算の中でもいれているところでございまして。それは年度末、4月に向けてというわけではございませんけれども、そのようなことで企業にも理解をいただくことは当然のことだと思います。

田村:国営地の活用や財政支援についてはいかがですか?財務大臣。

麻生財務大臣:この社会福祉の分野につきましては、国有地に関して優先的売却とか定期借地権による貸付を通じて、積極的に進めてきたところです。

特に保育所につきましては、25年の4月から取りまとめられた「待機児童解消加速化プラン」。これを踏まえて、これまでに介護施設の2倍近い件数もの国有地を提供いたしております。事実、保育関係を見ますと、22年で3つぐらいのものが、今57、介護関係で3つぐらいだったものが30と。倍近く介護施設よりは多くしておりますので、こういったものが昨年11月に「一億総活躍国民会議」で取りまとめられた緊急対策においても、賃料の減額といった国有地のさらなる活用を始めておりますので。

国有地の減額貸付等の負担軽減策を講じてきたところでありますので、今後とも保育所を含め、必要な社会整備に対して国有地が有効活用されますことへ積極的に対応してまいりたいと思います。これは、これまでもやってきたとおりであります。

田村:それだと「従来」なんですよ。総理は、「介護離職者ゼロ」を掲げた。それで国有地の賃料は今までの1/2にするということが急遽決まったんですよ。総理が旗を振れば、緊急策を踏み出せる。踏み込んだ財政支援も出来るはずなんです。総理いかがですか。首相「保育の受け皿拡大ペースは安倍政権で従来の2倍に」


安倍:「待機児童ゼロ」は、安倍政権において、非常に重要な目標であり、課題であると思います。このプランの元で、保育の受け皿拡大のペースは我々の政権になって、以前よりも2倍のペースで進んでいるのが事実でありまして。

2013、2014年度の2年間で、約22万人分の受け皿拡大を達成をしております。その過程でも、働くお母さんたちのニーズの把握に努め、昨年4月から、働いていなくても就職活動中であっても申し込めるように致しました。同居親族がいても、具体的状況に応じて、保育の必要性を認めるようにしたことなど、申し込みの要件を緩和したわけであります。

この申し込み要件は緩和しておりますので、当然申し込みは多く受け付けられることになってくるわけでありますが、そうした需要に対応いたしまして、昨年末の緊急対策に盛り込んだとおり、2017年度末までの保育の受け皿、整備量を40万人分から50万人分に上積みするとしたわけでありまして。これにより「待機児童ゼロ」を必ず実現をしていく決意であります。

さらに待機児童の数は地域によって差があることから、特に待機児童が集中している地域と連携し、対応策を検討することとしております。保育士不足の要因としては給与を含めた待遇の問題があると認識をしておりますが、この春に取りまとめる「ニホン一億総活躍プラン」の中で、具体的で実効性のある待遇の改善策を示し、不足している人材も確保していきたいとと考えておりますが。

また、委員からもご指摘をいただきました。この問題については、与野党はないと思いますので、様々なアイデアについては傾聴もしていきたいと思います。

田村議員「政府の”待機児童ゼロ”は本当なのか」


田村:ぜひ具体的に緊急策を取れるようにお願いしたいと思います。

1点だけ強調しておきたいのは、緊急の保育というのは、保育室の面積や保育士の配置など、認可施設に見合うように進めるということは必要だと思いますし。これが固定化して、質の悪い保育が普及しないように、ということは強調しておきたいと思います。

また、抜本的な問題も考えてみたいのですが、政府が「待機児童ゼロ」を掲げて保育所を増やす努力をしてきた。確かに保育所増えています。しかしですね、その「待機児童」というのは、あまりにも実態からかけ離れているのではないかという問題提起をしたいのです。

これは川崎市の待機児童数の資料です。2015年4月1日現在、認可保育所に申し込んでも利用できなかったのは、2231人。ところが、待機児童数はゼロです。京都市も2年連続待機児童はゼロですけれども、調べてみますと、昨年保育所申請をして入れなかったという方は、637人います。この「待機児童ゼロ」というのは、あまりに実態とかけ離れていると思うのですが、いかがですか?

塩崎:先程少し申し上げましたけれども、この川崎の例でございますが、これは「認可保育所」等に入所できていない方が、2231人となっているわけでございます。このうち東京で言えば、「認証保育所」、いわゆる地方単独で補助をして、一定の質が確保されている保育施設に入っている子供が1347人おられます。半分強ですが。

それから育児休業を取っておられる方、これはいろいろ解釈はありますけれども348人おられて。また、他に入園可能な施設があったけれども、特定の園のみを希望されていた方が407人おられます。ハローワークなどの休職をされていない方が129名となっておりまして、これらの方々2231人いたということから、「待機児童数がゼロ」となったものでございます。

これは厚労省が従来からお示しをしている、いわゆる「待機児童」の定義というものに基づいたものでありまして。今申し上げたような方々について、どう考えるか、というのは、いろいろご意見があることはよくわかっておりますが。まぁ優先順位的に本当に待機児童として、どういう数字を考えるべきか、という時に今のようなことで「ゼロ」という形になっているとご理解をたまわりたいとおもいます。

田村:除かれていった2231人がどういう方々か。自力で懸命に探しまわって、やっと認可外の空きを見つけた。焼き肉屋だったところで、窓があっても開かない。保育士は年度途中で総入れ替え。園長も変わった。「ここで大丈夫か」と不安だけれども、そこに預けていたという方。

あるいは、上の子供さんに障害があって、朝小学校の登校が付き添いが必要だ。自宅からかなり遠い保育所なら空きがあると言われたが断らざるを得なかった。これ特定の保育所を希望したから弾かれた方。

育児休業をやむなく伸ばした、あるいは仕事をやめるしかなかった。この方々は、保育所には入れなかっただけではなくて、待機児童にもなれないということなんですね。

そうなると、政府の言う「待機児童ゼロ」って一体なんなのか。例えば、首都圏のある自治体の職員にお聞きしましたら、「待機児童を減らすように号令がかかり、みんなで保護者に電話をした。ここには通えないだろうな、と思いながら自宅から遠い保育所を指定し、本人が断ると待機児童から外していった。これが待機児童対策なのかと。辛くて仕方がなかった」。こういうお話もお聞きしました。

私はおかしいと思います。やるべきは数字の操作じゃないです。やっぱり認可保育所に入りたい。そういう人がどれだけいるのか。この数を明らかにして、保育所の整備を行うべきだと思いますが、いかがですか。

塩崎:私共の「待機児童」の定義にのっとって、その内訳がどうなっているのか、いまご説明を申し上げたわけでございまして。

例えば、地方単独で、川崎が独自に補助金を出して保育園としてやっているところに入ってらっしゃる方が2231人のうちの1147人いるということを申し上げているので。これはこれで一応、本当の意味での待機児童という意味では除かしていただいているというわけです。

しかし、そうは言いながら、希望通りに行くということが最終的には必要ということは、その気持ちはよくわかりますし。兄弟、子供さん2人いて、上のお子さんと下のお子さんが離れた所にいて、毎日2つ通わなければいけないというようなことは、朝晩大変なご苦労であることはよくわかっておりますから。

そういう意味で私たちは、またこれから働く女性、働きたいと考える女性が増えてくるわけですから、そうなれば潜在的な需要にこたえられるようにということで、今回40万から50万ということで、広めにこれをとって、さらに今ご指摘のような、本当に希望通りにいくような余裕があるようなものになれるかどうかということを今追求をして、そこを目指して頑張ろうということでやっているところであります。

田村:2231人が入れなかったのに、不承諾だったのに0人と。これだと、保育園落ちたという事態は全然解決にならないですよ。足りないのがどれだけか、ということを実態に即して、きっちりと示すべきだと。強く求めておきたいと思います。

これまでも保育士が足りない。保育所増設の足かせとなっているのは、保育士さんの処遇改善。これが進まないからだということは与野党共が一致するところです。これは3月10日、予算委員会の公聴会で連合の逢見事務局長が提出資料を基にしていますが、保育士の平均年収323万円。全産業平均よりも166万円も低くなっています。

これまでの処遇改善の議論は、「3%引き上げた。あと2%どうするか」と。こういう議論なのですが、私は率直に言って、それでいいのかなと思います。保育士の平均年収を全産業平均と同等にするには、50%の賃上げが必要ということになるわけで。やはり、来年からすぐというわけにはいかないと思いますが、それぐらいの処遇改善が必要だという議論をして、大幅な賃上げの目標を示すべきだと思いますが、いかがですか?

塩崎:このことについては、何度もご説明を申し上げてきているわけで。「人材を確保することが大事だ」ということは当然のことでありますし、既に消費税引き上げに伴って3%引き上げ、あと3000億円という中で、約400億が職員の処遇改善にあてられるべきものとして、一体改革の中で考えられたことでありますので、これについても最優先で取り組んでいかなければならないということですけれども。

なにぶんにも毎年のことであるので、安定財源をしっかりと確保することも当然大事なことでありますので、私共としては「ニホン一億総活躍プラン」の中で、具体的に実効性のある待遇の改善策をお示しをして、不足している人材を全力で確保してまいりたいと考えているところでございます。

加藤少子化担当大臣:ご指摘にありますように、様々な調査でも就業している保育士の方、就業していない保育士の方にもお伺いを致しますと、希望しない理由あるいは、どういう問題点があるか。そのトップに給与、処遇の問題があがってきているということを認識しております。

今、私共としてもまず実態をしっかり把握して、それに対して対応していかなければならない。もちろん、保育士の方の崇高な仕事ということも踏まえながら、「一億総活躍国民会議」でしっかり議論させていただいて、具体的で、実効性のある待遇の改善策を示していきたいと思っております。

首相「保育士には専門性を高めてもらいたい」


田村:私、首都圏で保育士さんや施設長さんからもお話を伺ったんです。

「政府は保育を子守り程度に考えているから、給与の水準が低いままなのではないか」という声を何人もの方からお聞きしました。

「乳幼児が家族以外の大人に安心や信頼感をもてるか。その最初の体験が保育園になる。子供一人一人にどう寄り添うか。どう働きかけるか。それが子供の自己肯定感を育み、人との関わり方を学ぶことにつながる。乳幼児期の保育は成長の土台を耕すもの。私たちは、そういう自覚で保育をしていることを知ってほしい。」

これ総理にもお聞きしたいのです。保育士は専門職であって、経験をつむことでその専門性は高まっていく。そういう職業だと思いますが、いかがですか?

安倍:保育園は、生涯にわたる人間形成にとって極めて重要な時期。それは委員のご指摘の通りだろうと思います。

子供がその生活の大半を過ごす場所でもあるわけでございまして。従って、ここで働く保育士は、子供たちの人間形成に大きな役割を担っていることは事実であります。保健や福祉、教育などにわたる専門性と、一人一人の子供の個性に応じた援助をするための経験が重要であると考えております。

日頃から職場内や職場外での研修、自己研鑽により、一人一人の保育士が保育の専門性を高めていただきたいと考えております。

田村:それでは要請しておきたいのですが、総理は、これまでも春にまとめる「一億総活躍プラン」の中で、具体的で実効性のある待遇改善策を示すとおっしゃられてきました。ぜひ、専門職であり、経験をつんで働くことが、その専門性を高めると。この中身がしっかり入るようなプランをぜひとも検討していただきたい。これ要望しておきます。

保育士が経験をつんで専門性を高める。このことを処遇の面で保証してきたのが、公立の保育所です。ところが、「公立保育所はコストが掛かりすぎる」と、民営化、民間委託など1990年代以降、急速にこれが進み、いまも続いています。

例えば、中野区。公務員削減のため、公立保育所を全廃するとして、保育士の新規採用も10年以上にわたってまったく行わず、人手が足りない分は、処遇も悪い、不安定な非正規で補うということまでやっています。コスト削減政策は、民間保育所にも及んで、公立と民間の給与の格差をうめる補助制度が次々と廃止をされ、民間保育士の給料も大きく引き下げられました。

こうした過去の政策には、保育士を専門職を評価するという考えは微塵もありません。処遇改善どころか、処遇の引き下げを政策的に進めてきてしまった。こうした反省に立って、こうした政策はもうやめるべきだと思いますが、いかがですか。

塩崎:認可保育所につきまして、公立、私立を問わず児童福祉法に基づいて最低基準を遵守する。こういうことになっておりますので、基本的な保育の質が公と私で別れて、異なるということではなく、同様に担保されているということが法律的に裏打ちされているわけでございます。

保育の実施責任は、市町村に自治事務として行われています。まさに地域の子供たちを、どう育てるかということだと思いますが。民間委託、あるいは民営化の選択は、保育ニーズや地域の実情に応じて、それぞれ責任者たる市町村が適切に判断をすべきものという風に考えているわけでありまして。

先程来、専門性ということがありましたけれども、保育士が長く勤められる環境をつくって、その資質を継続的に上げていくようにすることは、保育の質にとっても、人材確保のためにも重要でありまして。公立保育所においても、あるいは民間の保育園にもいても、そのような取り組みは進むようにしてまいりたいと考えています。

首相「保育は幼児教育の一環であり極めて重要」


田村:市町村が勝手に公立保育所を潰したんじゃないんですよね。公立保育所への運営費補助金もやめてしまう。一切お金を出さない。そしてまた「民間に出来ることは民間に」「公務員を減らせ」と。こういう政策を国が旗をふって進めてきた。これは間違いがないことですよ。これらが、保育士の処遇を大きく引き下げる役割を果たしてしまった。私はしっかりその反省に立って、政策の転換をしなければならないということは強く申し上げておきたいと思います。

続いて次のパネル。これは「保育にコストが掛かりすぎる」ということでやられてきた攻撃だったんです。EUでは、1980年代から保育の質について議論をしていて、加盟国で保育がどうなっているか、という状況調査なども行い、1996年には各国が取り組むべき保育サービスの質の目標、10年間の計画が提示されました。

この中で、保育や幼児教育への公的支出は少なくともGDP比1%以上であるべきだとされたのです。資料はOECDの調査からの抜粋、直近のデータで2011年のものになっています。フランスはGDPで1.24。イギリス1.12。イタリアもお1%には届いていないのですが、予算の規模を急激に拡大したということがよくわかるのです。

翻って日本はどうか。実は日本は60年代~70年代に「ポストの数ほど保育所」をということで、保育の予算のGDP、実は平均よりも高いのです。ところが、その後、さっき言った国庫補助というのをドンドン変えて、公立保育所へのお金を出さないという攻撃があって、予算は減っていきます。

1999年、0.19%にまで落ち込みます。それで「少子化ショック」だとなって増やしていくのですが、まだ0.45%。これは、他の国々と比べても、大きく不十分だと言わなければならないと思いますが、総理いかがですか?

安倍:いずれにいたしましても、我々この保育については、「待機児童ゼロ」を実現するために、今までの倍以上のペースで保育所の受け皿を作ってきたわけでございまして。20万人、40万人そしてさらに50万人にしていくわけでございまして。しっかりとこれを実現していきたい。こう考えているところでございます。いずれにせよ、お父さんお母さんが安心して子育てを出来る、そういう環境を作っていきたいと考えております。

田村:ぜひEUの取り組みを学んでみてほしいと思います。調べてみてほしいと思います。何故フランスなどが保育や幼児教育の公的支出をこれほど急増させたのか。

EUやOECDで繰り返されている議論は、乳幼児期のケアと教育が、いかに大切かということなのです。子供への財政的支援は、早ければ早いほど大きな効果を持つ。乳幼児の基礎ステージをしっかりと耕すことが、次のステージでの学習を生む。乳幼児期の保育や教育は公共財産である。こういう議論がされています。

だから、EUの目標を見ますと、保育士の給料も小学校の教員と同等であるべきだとしているんですよ。実際調べてみるとヨーロッパのほとんどの国がこれを達成しています。ベルギー、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、ポーランド、ポルトガル、スペイン、トルコなど。小学校の教員と同じなんです。日本は6割なんですね。

日本の保育施策というのは、「少子化だから女性に働いてもらおう。それには保育の受け皿が必要だ。とにかく受け皿つくればいい」。こういう風になっていなかったか。待機児童の対策も「保育所増やしているけれども、追いついていないんだ。入れないのは仕方ないんだ」。そうなっていなかったか。

あるいは、定員120%とか、お庭がなくていいとか、保育室の面積も、もっと一人当たりの面積を狭くしていいとか。こんな質を置き去りをしたものになってこなかったか。

今、お母さんたちやお父さんたちは、こういう政治の姿勢すべてに対して、「それでいいのか」という声を挙げているのだと私は思います。EUのような議論と目標。今こそ日本に必要だと尾思います。すべての子供の福祉のために。大幅な保育、幼児教育の予算拡充する。これ必要だと思いますが、総理もう一度お願いします。

安倍:保育の重要性については、既に述べてきたとおりであります。いわば幼児教育の一環でございますから、極めて重要であると考えておりますし。仕事をしながら、あるいは仕事をしなければならない方にとって、保育所で受け入れてもらえるかどうか、というのは極めて重要であるということは認識をしております。

そのために、いわば「待機児童ゼロ」に向けて安倍政権になって倍のスピードで整備を進めてきておりますところでございますが。その中において、ただ量をつくればいいというのではなくて、保育士の方々が経験をつんでいくことは重要だと認識をしています。

また、待遇につきましても、先程少し厚労大臣が触れたところでございますが、処遇の改善におきましても、経験をつんだ保育士に対して、充分な処遇が行われることは重要であることから、平均勤続年数が11年以上の場合には、加算率をさらに1%引き上げるなどしている私大でございます。また、研修の場の提供については、都道府県や市町村に対して、働く保育士の方々が、専門性を高めるための研修の実施への支援も行っているわけでございます。

こうした意味から専門性を高めていく上における、支援も行っていきたいと思っております。

田村:「消費税の増税もやりました。それを処遇改善に当てます」といいながら、それは2%とか3%っていう議論にしかなっていなくて、一体これでどうやって保育所は増えていくのだろうか。こういう疑問が物凄くお母さんたちの中にあると思っています。

私たち日本共産党は、もちろん「消費税増税やれ」という立場ではありません。それは保育所にとっても、経営を逼迫させる要因に現になっていますから、税金の集め方とか使い方を変えれば、消費税に頼らない道が開けると繰り返し提言をしているわけです。

例えば、これは本会議でも追求しましたが、来年度の予算案を見ても、法人税は新たな減税を行うといいます。昨年度の法人税の減税を見ると、研究開発減税だけでも総額7000億円近い減税が行われている。そのほとんどが大企業。トヨタ一社だけでも1000億円を超える減税になっている。これでいいのか、ということも私たちは問題提起をしています。

とりわけ経済界は今、少子化の基で人材育成を叫んでいる。ならば、子供たちのために黒字大企業には、まともに税金を納めてもらって、日本の未来を担う、そういう子供たちの成長に力を貸してほしいと。そうやって経済界にもお願いをする。そんな風に財源確保するということが求められているんじゃないかと思いますが、最後に総理にお聞きします。

総理:経済界に対しましては、法人税減税を進めているのが事実でありますが。同時に、しっかりと賃上げを進めてもらいたい。このように要請をしているわけでございます。

また、関連会社との取引状況の改善にもしっかりと取り組んでもらいたい。実際、その中において昨年は十数年ぶり賃上げが成し遂げられたことは申し上げておきたい。今後とも企業にも子育て等にも協力をしていただきたいと思っております。


荒井広幸議員:27年の秋の叙勲を見てみました。27年の秋の叙勲で政治家416人。お医者さんは83人。これは公務員で大学病院などにいる方々は別枠ですから、本当はもっと多いです。遥かに多くなります。介護職員15名、保育士34名。

安倍:栄典の授与については、現在官房長官のもとで時代の変化に対応した、「栄典の授与に関する有識者懇談会」を開催しておりまして、見直しの検討を行っているところであります。叙勲において、保育士や介護職員を積極的に評価していくことについても、議員のご指摘を踏まえて検討を行っていきたいと思います。