パチンコは身近に楽しめた方がよいのか | ニコニコニュース

 こんにちは、K松です。先日、気になるニュースを見かけました。「パチンコ店などに複数回出入りした、生活保護受給者への保護費支給停止・減額をしていた大分県の別府市、中津市が、県からの指摘で新年度から処分をやめる」。生活保護とパチンコ。ここ数年、度々登場する話題です。これについては賛否両論飛び交っていて、今後も続いていきそうな気配です。そこでこのコラムでも、触れてみようと思います。

 私が生活保護とパチンコの件で原稿にしたのは、今から3年ほど前に兵庫県・小野市で同様の条例が出た時のこと。当時もテレビ番組で取り上げられるなど、大きな話題でした。その後、同じく兵庫県ではデイサービス(通所介護)施設内のパチンコも規制。何かと兵庫発の話題が多いな、と思ったものでした。

 さて、このテーマで毎回多数の声があがるのが「働いていない人が、必死に働いている自分たちが取られている税金で、パチンコするなんて許せない」というもの。ここには大きく2つの意味が含まれていて、「税金を使って遊んでいる」「勝てば景品(後に交換所で現金)が得られる」というもの。確かに、人のお金で遊べて、さらに結果次第でお金が得られるなんていううまい話は、世の中探してもありません。仮にパチンコでなく、宝くじや競馬であったとしても、相応の反発があるでしょう。

 一方で持ち上がるのが、果たして生活保護受給者の生活は、どこまでが対象なのか、ということ。制度は「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」ものですが、この中にギャンブルやそれに類するものは含まれるのか否か。「文化的」としているからには、衣食住だけでないことは分かります。また「自立を助長する」ことも目的なので、楽しい気分を体験することも、また自立への道とも考えられます。「他にも楽しいものはある」という声も多いですが、そこは好みもある話。ギャンブルやそれに類するものが好きか否かで、大きく意見が分かれるポイントでもあります。

 さて、パチンコに戻ります。店舗数は全国に1万店超。駅の数をも超えるだけに、非常に身近にあるものです。また、近年ではパチンコの貸し玉1個4円を1円に、パチスロの貸しメダル1枚20円を5円などにした、いわゆる「低貸し」化が進み、さらに参加のハードルを下げています。これは新規の客の獲得という意味もありますが、むしろ既存のユーザーで4円パチンコ、20円パチスロが苦しくなった人を引き留める策になっています。ですが、結果的には遊技人口は減少傾向。歯止めがきかなくなっています。

 生活保護を受けている方は、当然ながら多額のお金を持っていません。少ないお金で衣食住を整える必要があります。その中から、娯楽費に回せるお金は微々たるもののはずです。ところが、パチンコの参加ハードルが下がるばかりに、少しのお金でも参加できてしまう。そして負けてしまう。少ないお金で楽しめるということは、裏を返せばお金がなくなるギリギリまでできてしまうことでもあるわけです。

 かつては「庶民の娯楽」と呼ばれたパチンコも、ギャンブル性の向上や機械代の高騰、店舗の大型化など、かかる経費も大きくなり、その分ユーザー1人当たりの遊技額が増え、かなりお金がかかるものになっています。貸し玉の額を1/4にしたところで、お金が減るスピードが1/4になっただけで、長時間打てる環境がある人は、4倍の時間をかけて結局お金が尽きるまで打ってしまう。これが一番問題となるパターンなわけです。

 序盤に書きましたが、兵庫県・小野市の件が出た時、私は受給者のパチンコ禁止に賛成としました。理由は「私の税金でギャンブルするな!」というものではなく、生きていく上で大切な保護費まで使ってしまうようなギャンブル依存、もしくはそれに近い人々を、行政がどう「保護」するかを見てみたいからでした。また、生活保護費からの売上に支えられるようであれば、パチンコ業界の先が長くないとも書きました。

 今、パチンコ業界側では、いろいろと射幸性を下げる取り組み、自主規制が続いています。ただ現時点では少なくとも「だれにでも身近で気軽に楽しめるもの」ではなく、「金銭面で破綻する恐れのない限られた人だけが楽しめるもの」になっていることは、間違いのないところです。よって、今は生活保護を受けている方に楽しんでもらえる状況ではない、というのが私の意見です。今後「まあパチンコくらいの遊びならいいか」と言われるようになる時が来たら、その時はまさに「庶民の娯楽」になっているのかもしれません。【K松】

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