相見積もりのライバルに競り勝つ受け答え | ニコニコニュース

大和ハウス工業 みなとみらい展示場店長 河嶋祐太さん
プレジデントオンライン

個人消費に明るい兆しが見えてくるようになった。しかし、多くの会社ではどうしたら顧客ニーズをつかみ、売り上げにつなげられるか悩んでいる。その解決策を若手の凄腕営業マン・販売員に学ぶ。

流通の世界が「クリック・アンド・モルタル」といわれるようになって久しい。この言葉は、従来のリアル店舗(モルタル)とネット通販(クリック)という2つの小売りチャンネルが並立してきた状況を指したもの。とはいえ、ネット先進国の米国でも、小売業に占めるネット通販の比率は10%以下に過ぎない。いずれ30%に拡大するといわれているが、裏を返せば70%の人が依然、リアル店舗を利用するわけだ。

ネット通販は、売り場に出かけなくても、欲しい商品をすぐに検索し、価格も比べられる。しかし、洋服や靴の試着のように、商品を自分の五感で確かめることはできない。目的買いのように顕在化したニーズにしか対応できないので、隠れたニーズに気づかせてはくれない。そこに、接客・販売というリアルな営業の世界の付加価値が生きてくるわけだ。

実際に販売員のお客との受け答えの腕前次第で、顧客満足度をアップしながら、1時間に7足の靴を売ったり、1カ月に5000万円以上の注文住宅を1棟以上成約する超高速セールスが実現できるのだ。ここでは、それを実証する選りすぐりの若手の達人を集めた。彼らの“超絶技巧 ”をとくとご覧いただこう。

■あえてクロージングは急かさない

注文住宅部門で河嶋祐太さんは、2013年度下期に8棟、4億1900万円を成約し、全国に1773人いる営業マンの中で、第4位という営業成績を収めている。直近3年間で見積もりを出したのは46件。そのうち、33件が成約したという効率のよさも河嶋さんの自慢の一つとなっている。

「新人のころは、住宅の単なる説明で終わってしまい、お客さまの懐に入っていけなかったんです。でも、07年に結婚したのが一つの転機になりました。お客さまも、結婚して一戸建てを建てたいという方が多いので、そういう方のご質問に、同じ目線で親身にお答えできるようになったのです」

そう話す河嶋さんの営業は“付かず離れず”がモットーだ。住宅営業は1~2年がかりの長期戦。顧客に煙たがられないようにしながら、必要なときに声をかけてもらえるのが理想だ。それが受け答えにも表れる。

「たとえ私にとって定期的な家庭訪問であっても、『近くに寄ったついでに』といったように、お客さまに抵抗感を与えないよう心がけます」と河嶋さんはいう。

また、顧客が相見積もりを取っているとわかっても、自分からはなるべくクロージング(購買決定)を持ちかけない。

「他社が焦って契約を迫るようになるんですね。すると不安に感じたお客さまから、他社の見積もり内容について相談を持ちかけられることがあるのです。そうなれば、もうこっちのものですね。相手の手の内が見通せて、自社に有利に事を運べますから」

たとえば他社のプランを見て、「このままだと追加の料金が発生します。私なら、この設計を変更して予算内に収めます」と指摘。他社にさりげなくダメ出しして、自社をアピールするのだという。

機が熟したところで、顧客のほうから契約するように仕向けるという河嶋流の高等テクニックが、成約率の高さに結びついているようだ。

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住宅営業で顧客がいくつかのライバル会社から相見積もりを取っているのは当たり前。しかし河嶋さんはその相見積もりの内容の相談を受けるくらいに、顧客との信頼関係を築いている。そしてライバル会社の手の内が明らかになったとき、逆転ホームランを放つのだ。

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▼あえてクロージングは急かさない

相見積もりを出しているライバル会社の営業マンも契約が欲しい。そのライバル会社がクロージングを急かし、顧客の悩みに耳を貸せるようになったときこそチャンス到来である。

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大和ハウス工業 みなとみらい展示場店長 河嶋祐太(かわしま・ゆうた)
1978年、神奈川県生まれ。2001年、東京理科大学卒業後、同社に入社。09年4月、みなとみらい展示場の店長に就任。

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