授業は「ニコ生」、遠足は「ドラクエX」で――ネットの高校「N高」は“リアルの学校”を超えるか? | ニコニコニュース

授業の画面。上半分にテキスト、下半分に生放送の映像とコメントが流れる。
ITmedia ニュース

 ニコニコ動画のようにコメントが流れる授業、「ドラゴンクエストX」の世界で“ネット遠足”、プロ棋士がネット指導する将棋部――カドカワは3月22日、4月に開校する通信制高校「N高等学校」(N高)の課外授業や部活動の詳細について発表した。同社の川上量生社長は「ネット上で、友達と学び遊べるよう、真剣にコミュニティーを作る」と意気込む。

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●課外授業は「ニコ生」? コメントで質問する「双方向生授業」

 大学受験やプログラミングなどの課外授業を、独自開発したアプリ「N高オリジナル教育システム」(iOS/Android、PC)で受講できる。「ニコニコ生放送の次期システムを前倒しして、N高に導入した」(川上社長)。

 生放送の授業中、疑問点などをコメントでき、リアルタイムで講師が閲覧し、その場で授業に反映できるのが強みだ。アンケート・クイズのほか、その場で誰か1人が答案の写真を送信し、授業中に採点をする「挙手」といった機能を用意し、講師と生徒がやり取りできる「双方向生授業」を目指す。

 英語(読解)の担当講師・中久喜匠太郎さんは「既存の予備校でも太刀打ちできないコンテンツができたと自負している」とコメント。「周りの目を気にして挙手できない生徒など、どうしても一方通行だった授業を変えられる――そんな、リアルを超えた機能ではないか」(中久喜さん)。

●「ドラクエ」内を“ネット遠足”、プロ棋士が指導する将棋部・囲碁部

 学業に限らず、友達との交流も重視し、ネット上でのクラブ活動も用意する。将棋部・囲碁部では、プロ棋士の阿部光瑠六段、藤澤一就八段がそれぞれ特別顧問に就任し、ネット指導を実施。対局には将棋ソフト「将棋倶楽部24」と囲碁ソフト「幽玄の間」を使用し、プロ棋士との多面指しの機会も用意するほか、将棋会館などの見学ツアーも予定する。

 サッカー部では、元日本代表の秋田豊さんを特別顧問に迎え、ゲーム「ウイニングイレブン」を用いて、選手の動きや癖、戦術などを学ぶ。ネットの対戦に限らず、スクーリングの際には、リアルな場でフットサルの直接指導も行う予定だ。

 そのほか、プロゲーマーの育成も視野に入れる「格闘ゲーム部」に加え、生徒の要望に応じて同好会を設立し、部への昇格も検討するという。

 N高を運営するドワンゴ学園理事の志倉千代丸さんは「秋田さんが『ウイイレ』が得意かは分からないが」と苦笑しながらも、「距離や時間を越え、部活を共有できるのは1つの大切なテーマだ」と、部活動の充実に意欲を見せる。

 また、ネット上で“遠足”も実施。スクウェア・エニックスの協力のもと、オンラインRPG「ドラゴンクエストX」の世界を、担任の講師が引率し、クラスメートと探検する。鬼ごっこや集合写真の撮影を予定するほか、N高生徒限定のアイテム「制服」も用意する。

 スクウェア・エニックスの齋藤陽介執行役員は、「最初は『またまた御冗談を』と思ったが、話を聞くに本気だと感じ、『ドラクエ』生みの親・堀井雄二さんと『いっちょやってやるか』と盛り上がった」と裏話を披露。「ドワンゴさんから制服の写真を取り寄せ、アイテムのディテールにもこだわった」(齋藤執行役員)という。

 「遠足の映像を見た時は、思わず飲んでいたコーラを噴き出してしまった。パーティーが全滅したら困るので、担任の講師には職務としてレベル上げを課す」(志倉さん)

「理念を語るよりも早期に結果」

 ログやアンケート、学習習熟度など、授業で得られるデータを、有識者に提供して研究に役立ててもらう「アドバイザリーボード」も設置。ネットを活用した取り組みについて、専門的な助言を求める。「僕らの挑戦にはうまく行く部分、いかない部分がある。それらを公開し、ネットでのコミュニティづくりは可能か、研究材料にしてほしい」(川上社長)。

 「親御さんを含む社会にN高を認めてもらうには、理念を語るよりも、早期に結果を示すことが必要。リアルではなく、ネット上でも受験勉強やプログラミングが学べ、友達とも交流を深められる仕組みを実際に見てもらいえれば、説得力になるのでは」(川上社長)