【レポート】ドコモ、ボイスメッセージをやり取りできる「ここくま」発表 - auの「Comi Kuma」との違いは? | ニコニコニュース

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●「ここくま」のコンセプト
NTTドコモ、イワヤ、バイテックグローバルエレクトロニクス、MOOREdoll inc.の4社は30日、離れた場所に暮らす高齢者と家族が簡単にコミュニケーションをはかれるツール「ここくま」を発表した。クマのぬいぐるみ型の製品で、LTE通信によりボイスメッセージのやりとりを行える。本稿では、都内で開催された発表会の模様をお伝えする。また、前日にauが発表した「Comi Kuma」との違いも探っていきたい。

○高齢者を独りにさせないという熱い想い

ここくまは、2つのボタンだけで音声メッセージの送受信が行える製品。左手のボタンを押しながらメッセージを録音すれば自動で送信され、受信したメッセージは右手のボタンで再生できる仕様となっている。SIMカードスロットを内蔵、スタンドアローンで利用できるためスマートフォンや携帯電話が必要なく、高齢者でも容易に操作できる。発表会に登壇したNTTドコモ 執行役員の栄藤稔氏は、その冒頭「私の80半ばの両親も遠くに住んでいる。なかなか会いに行けず、娘と息子も連れていけていない」と自身の状況を語り、そうした想いが開発のモチベーションに繋がったことを明かした。

開発に際しては、実際に高齢者のコミュニティに飛び込むなどして広く意見を募集した。機能、デザイン、UIに至るまで利用者目線で決定されたという。栄藤氏は「高齢者を独りにさせないという熱い想いを胸に、メンバーが心をひとつにして開発してきた」と語ると、開発メンバーを紹介した。

NTTドコモの横澤尚一氏は「ドコモの技術だけでは実現できなかった。国内外を問わずその道のプロを探した結果、ドリームチームが結成できた。4社でたくさんの人々に感動を届けていきたい」と挨拶。表情などを担当したイワヤの中野殖夫氏は「弊社は創業93年の玩具メーカーで、昨今は高齢者向けのペットロボットなども販売してきた。玩具メーカーとしてのノウハウを活かして、可愛らしいデザイン、動きなどを製品に活かしていきたい」と説明。

ボイスメッセージシステム担当のMOOREdollのLeo Guo氏は「誰でも簡単に使えるものを目指して開発・研究を進めている。弊社の技術力を活かして、家族間の新しいコミュニケーションを提供してきたい」。開発マネージメントとユーザーリサーチ担当のバイテックグローバルエレクトロニクスの西晃彦氏は「家族間のより良いサービスを提供していきたい」と語った。

●「ここくま」ができること
○開発の経緯、機能の詳細

高齢者のみの世帯は約1,159万世帯。話し相手がいない、ペットは飼うのが大変といった悩みを抱えている。一方で、高齢者はメールさえ満足に使えていない。したがって子ども世帯とは電話で連絡することになるが、離れて暮らしている子ども世帯とは生活のタイミングが合わない。お互いが気を遣う結果、あまり連絡が取れなくなってしまう。NTTドコモの横澤尚一氏は、こうした問題点を指摘した上で、(1)かんたんボイスメッセージ、(2)利用者に合わせて毎日楽しく話しかけ、(3)既読&利用履歴でゆるい見守り、という3つの機能について紹介した。

スマートフォン向けには専用アプリが用意されており、「うれしい」「かなしい」といった表情を設定して送信できる。口、まぶた、眉毛が動くことで、ここくまの表情が変わる仕掛けだ。従来型の携帯電話からメッセージを送る際はテキストメッセージとなる。ここくまは、日常的に利用者とコミュニケーションをはかる機能も搭載している。人感センサーにより、人が近づくと利用者の名前で呼びかけたり、居住地の天気を知らせたり、誕生日を祝ったりできるという。メッセージの送信者側からは、メッセージが再生されたか、ここくまの話に反応しているか、を適宜確認できる。これにより高齢者の見守り機能としても利用できる。

発売時期は7月頃を予定、本体価格は税抜34,800円。全国の百貨店のほか、Amazonなどオンラインでの販売も行う。月額料金がかかるが、通信料金は現時点では未定。横澤氏は「10年愛されるコミュニケーションロボットにしていく」と胸を張った。

●「Comi Kuma」と「ここくま」を比較
○auのComi Kumaとの違いは?

発表会の最後に質疑応答の時間がもうけられた。奇しくも前日、KDDIが同じコンセプトの製品「Comi Kuma」を発表している。ここくまとの違いを聞かれた横澤氏は「auさんのComi Kumaはスタンプで感情的な、より情緒的なことを伝える製品と理解している。ここくまは日常的な利便性を重視しており、“明日、何を買っていく?”といったメッセージをやり取りできる」と回答。その上で「ひとつの商品では高齢者問題を解決できないと思っており、様々なアプローチで製品・サービスが出ることは個人的には嬉しいこと。僕たちも磨き上げていく。早く良いものを届けたい」と話した。

販売目標について、イワヤの中野氏は「数年かけて10万台を販売したい」と答えた。またボイスメッセージが届く範囲について、MOOREdollのLeo Guo氏は「アプリをインストールした家族」とのこと。例えば、ここくまから送信された祖父母のメッセージを複数人の家族が聞ける、といった使い方が可能になるという。

なぜクマを選んだのか、という質問に横澤氏は「見た目のデザインに関しては当初、ロボットのようなメカっぽいもの、あるいは動物、また人の形をしたものも検討した。そこでアンケートをとったところ、機械は好きではない、人型は腹話術に見えてきて怖いという意見があった。また、犬や猫だと種類が多いし、かまれた、おしっこをされたなどネガティブな経験をお持ちの方もいらっしゃった。クマだとポジティブな意見が多く、ネガティブな意見が少なかった」と説明した。

SIMフリーになるのか、という質問にイワヤの中野氏は「検討中」。横澤氏は「ドコモの方だけに使ってもらうことは目指していない。日本中の方に使って欲しい。そこでドコモから販売するより、イワヤさんから出したほうがより多くの方に届くと思った」と補足説明した。

質疑応答でも触れられた通り、前日にはKDDIが”祖父母と孫のコミュニケーション”を活発にする、クマのぬいぐるみ型の製品「Comi Kuma」(コミクマ)を発表している。偶然が重なった形だが、ふたつの製品の違いはどのあたりにあるのだろうか。

まずスペックの違いに言及すると、Comi KumaはBluetoothでペアリングしたスマートフォンを介してインターネット通信を行う仕組みだったのに対し、ここくまはスタンドアローンで通信できる。またComi Kumaはぬいぐるみを抱きしめたり動かしたりすることで相手のスマートフォンにスタンプを送信するという使い方がメインとなるが、ここくまではボイスメッセージのやり取りに主眼を置いた。

では価格の違いは? Comi Kumaの価格は未定だが、本体以外にも月額料金が発生するここくまと比較すると、恐らくComi Kumaの方が安価で提供できるものと予想される。以上のことから、Comi Kumaではライト感覚での利用を想定しており、ここくまではより踏み込んだ利用を想定していると言えそうだ。

(近藤謙太郎)