セブ島留学の新潮流と欧米留学との比較 | ニコニコニュース

各国の有望な若者に交ざって受講。アジア、中東、ヨーロッパからたくさんの優秀な学生が集まっており、英語以外に得るものが多い時間だった。
プレジデントオンライン

■欧米語学留学クラスの平均サイズは15人

前回(http://president.jp/articles/-/17676)はQQEnglishを例に、セブ留学の一般的な学び方、過ごし方について書いた。今回は比較のために欧米留学についても触れたい。

英国の語学学校は一度の休憩を挟んだ午前もしくは午後の3時間授業が基本だ。これにインテンシブクラス、エレクティブクラスなどと呼ばれる1時間~1時間半程度の選択授業を追加でつけている人が多く、午前9時~午後14時半くらいまでを学校で過ごすというのがお決まりのパターンになっている。

たいていの場合、基本クラスはレベルごとに6段階に分かれ、選択授業はフォーカスしたい領域(ビジネス、テスト対策、日常会話など)を選べる代わりにレベルは上3クラスと下3クラスがまとめられ、2レベルにのみ分けられていることが多い。どちらも1クラスの平均的な生徒数は15人程度で、6人、12人と少なめな上限を定めている学校もあるが、その場合、比例して授業料が高くなる仕組みとなっている。

同じクラスの生徒は皆同じテキストで勉強し、宿題をこなし、それらの予習復習で理解を深めていく形式になる。欧州、中東、南米、アジアなど、世界中の生徒と出会うことができ、毎日同じ1人の先生から習う様子はまるで小学校。ぴったりと合うレベル、気の合う先生やクラスメイトと出会うことができれば、私たち大人にとっても生涯忘れえぬ時間を過ごせるだろう。実際に自分の体験を振り返るとこの時の体験、先生によって、イギリスを好きになることができた。

グローバルに広告を出しているようなスクールは採用基準が高く、講師の学歴も高い。言葉への探求に真剣な女性講師が多いように感じた。若いうちに長期で受講できる機会があるならば、心からお勧めしたいと思う。

■長期を念頭に置いたプログラム

しかし、読者のようなビジネスパーソンの需要に目を向けると、こうしたスタイルの学校は不向きな点が多い。15人平均のクラスでは発言機会が少なく、個々人の目的や学びたいポイントにフィットさせるのは困難だ。多くの語学学校にとってより利益を運んでくれる、最も歓迎すべきお客さんは依然として20代前半であり、その年次のニーズに合わせて長期で留学する人を念頭に置いたプログラムが組まれている。

ビジネスパーソンに許される留学期間は短中期というのが現状だろう。こうした学校を仮に2週間だけ受講した場合どういうことが起こるのか?

多くの学校は、1年を4つのセメスター(学期)に分けており、3カ月区切りで1冊のテキストを使っている。つまり2週間の受講では、使用テキストのうちのチャプター5~6のみを学んで帰る、というようなことが起こる。実際、テキストはよく考えられていて、途中からでも参加することはできるし、学校側もそう主張しているが、滞在するタイミングによって大きなあたりはずれがでてしまい、なにを学べるのかは「運次第」ということになってくる。

こうしたタイプの学校では1カ月でも「短期」であり、例えば、「現在完了にばかりフォーカスして留学期間が終わった」などということがあり得てしまう。悲惨な例としてはメイン講師が休暇期間の1週間だけ受講し、カバーする講師が時間をつぶしている(と感じるほどに授業の質が低かった経験がある)期間だけ過ごして帰った日本人がいた。英語の習得が急務である人にとって、こうした環境に大事な休暇や研修期間を投下できるだろうか。

■大人向けが英国でも人気化

こうしたミスマッチに対応するため、短期でしか来られない30代以上社会人のみをターゲットにした語学学校なども登場しており、人気を集めている。お勧めはロンドンにある「EC London 30+」。筆者も実際に数回ここのお世話になったが、同じように英語の困難に直面している第一線のビジネスパーソンと出会うことができ、彼らの思考を知るのに貴重な体験となった。

ここでは短期で受講することを想定した授業の進め方になっており、同じ1週間であれば、すでに紹介したタイプの学校に比べてはるかに効果が高いと言える。そうはいってもグループレッスンであるため、個々人のニーズに沿わせることはまだ難しく、マンツーマンを受講すると1時間70ポンド(2016年3月時点、1ポンド160円換算で1万1200円)となる。

つまり、欧米留学で学べるものは英語以外にも多いが、ビジネスパーソンが急いで英語を勉強する環境として、語学の上達だけを考えると非効率な部分が多い。特に1カ月以下の短期留学の場合、自分のニーズに合ったものを既存のグループクラスから見つけるのは至難の業だ。もしこれを叶えようとすると「エンジニアコース」「エグゼクティブコース」「法律英語コース」などといったように分野の分かれた専門のコースを選ぶか、マンツーマンレッスンをとることになり、その額はとても個人では負担しきれないほどに高額だ。

例をあげると、100年の歴史を持つ老舗語学学校、ロンドンスクールオブイングリッシュでは、こうした分野別のプログラムを比較的少人数に向けて提供している。企業派遣で来る人も多く、質が高いと聞く。しかしその費用はクラスサイズ6名、1週間で1250ポンド(2016年3月時点、1ポンド160円換算で約20万円、プロフェッショナルビジネスイングリッシュの場合)となる。

同じようにニューヨークなどの主要都市にも、いますぐ英語が必要なビジネスパーソンがビジネス経験も豊富なネイティブ英語講師からマンツーマンで英語を学べるような場所があるにはある。効果も望めるだろう。しかし、上記のように費用の面から考えて自分で費用を負担して学ぶのは、筆者を含む多くに人にとってあまり現実的ではないように思える。

■破格さを売りにしない、セブ留学の新潮流

ここまで、欧米留学のケースを例に出し、一般的な留学では短期間で学習者それぞれのニーズやゴールに合わせたレッスンを受講することがいかに難しいかを伝えてきた。費用がいくらかかっても構わないのであればその方法はあるが、それは、誰しもが選べる手段ではない。そこで、再びセブ留学に目をつけたい。

フィリピン人講師とのマンツーマンレッスンが格安で実現する理由は、言うまでもなく日本とフィリピンの給与水準の違いによるところであり、1時間数百円という破格の安さがこれまでの売りだった。それにより、格安で英語を勉強する方法として、オンラインレッスンが幅広い世代に広まりつつある。

しかしながら、ここに新しい潮流がある。「一流の講師陣」と「支払い可能な価格」で勉強するという方法だ。ビジネスパーソンには、ぜひともこのスタイルをお勧めしたいと思う。社会人の需要に特化し、オトナ留学を推奨しているMBAは、セブ留学の中では高価格帯で授業を展開している。筆者はこのMBAに4週間滞在したが、さまざまな面で驚かされた。

まず生徒1人に対し、6人の講師がつく。マンツーマンレッスンを6コマ受けていればそれも、1人に6人の講師がいることにはなるが、MBAのすごいところは、この6人の講師たちがそれぞれに「発音矯正」「ビジネス英語」「文法」「TOEIC対策」などの専門分野を持っているところだ。

常に連携をとりながら協議をして、生徒の英語使用シーン、目的、現在のレベルだけではなく「滞在できる期間」までをしっかり考慮した上で、毎週の授業を決めていってくれる。用意されたテキストを使うだけではなく、個別のニーズに合わせ、オリジナルの教材を生徒ひとり1人のために都度準備してもくれる。

このスタイルを見て、まるでひとりの患者をそれぞれの専門からケアする医療チームのように感じ、この先生たちを全面的に信頼してみようと思えた。なんとも言えない安心感があった。

彼女らがネイティブではないという点で、フィリピン講師との学習に不安を感じる人もいるだろう。しかし、欧米スタイルと比べた時に、得られる待遇がこれだけ違うということを知ると、選択肢の1つに加えてみてもいいと思うのではないだろうか。

次回、第4回では、このMBAでの体験、そして成果を紹介する。

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高野美穂(たかの・みほ)●スタイルクリエイト代表、英国在住コミュニケーションコンサルタント。1979年、東京都生まれ。大学卒業後、ベネッセコーポレーション入社。進学情報誌の編集を務めた後、2005年にコンテンツ制作会社を設立。以来、執筆・企画制作のほか、ビジネスシーンでのイメージコンサルティングやメディアを通じたコミュニケーション分野でも活動。その延長として日本人の英語習得法に関心を持つ。2014年に渡英。ラグビーW杯英国大会においても精力的な取材活動を展開した。著書に『夢がかなう 「いろの魔法」』、『ストーリーでしっかり身につく 今どきのビジネスマナー』、『W杯イングランド大会ラグビーファンみんなの観戦記』(共著)ほか多数。
スタイルクリエイト http://style-create.jp/

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