ソシャゲ業界の「やりたい放題」に、ついに立ち上がったユーザーたち | ニコニコニュース

日刊SPA!

 炎上や返金騒動を繰り返すソーシャルゲーム業界。なぜ彼らは過ちを繰り返すのだろうか……。そんな業界にユーザーが遂に行動に出た。年末年始の『グランブルーファンタジー』の騒動を通して見えてきた、ソーシャルゲーム業界の病巣に迫る。

◆ソシャゲ業界の過酷な搾取の仕組み

 スマホやガラケーなどでプレイするソーシャルゲームの勢いがすごい。

『ファミ通ゲーム白書2015』によれば、ユーザー数は前年比15%増の3376万人、市場規模は18%増の7154億円に上る。

 この旺盛な成長力を支えているのが、「ガチャ」の存在である。硬貨を入れてレバーをガチャガチャ回すとカプセルに入ったフィギュアなどのオモチャが出てくる自動販売機が、ゲーム内に設置されているイメージだ。だが、これがくせもので、底なし沼のような集金マシンとして機能する。大半のソシャゲは無料で始められるが、展開を有利に進めたり、より深く楽しむには有料のアイテムやキャラが欲しくなるように設計されている。お目当てのアイテムが出てくるまで、ユーザーはひたすらガチャを回し続けるわけだ。

 たとえるなら、ゲーム世界のすべてを司る神のような運営側に対して、ユーザーはせっせとお布施を運ぶ信者。ソシャゲの運営会社はたびたび炎上してきたが、それはユーザーの不満のささやかなガス抜きでしかなく、「運営側に何を言っても変わらない」が、大多数のユーザーたちの基本認識だった。

 だが、そんな過酷な搾取の仕組みにおとなしく従い続けてきた彼らが、今年1月にとうとう激しく異議を申し立てた。「グラブってる?」のテレビCMで知られる人気ソーシャルゲーム『グランブルーファンタジー』(以下『グラブル』)が、大炎上したのだ。

 年末年始の期間限定で、新キャラを含む一部装備の出現率が3%から6%になると告知され、更に新キャラの出現率アップの表記もあった。にもかかわらず、いくら資金を投入しても一向に新キャラが出現しないことで、怒りの声がネット上に満ち溢れたのである。

◆68万円ブチ込んだ“勇者”も現れた

 ある者はガチャを回し続ける動画をネット配信し、ようやく当たったときにはすでに68万円を投入していた……。こうした高額課金者が続々と名乗りをあげる中で、ついに署名サイト「change.org」では、消費者庁に対してグラブル運営会社への立ち入り検査を求める活動がスタート。目標とする2500人分の署名が揃うまであとわずかに迫る。発起人のカタオカダイキ氏は興奮気味に語った。

「今まで新キャラ登場は3万円前後で出ることが多かった。これは私だけでなく親しい友人も同じように話していた。なのに今回は10万円使っても出ない。さらに、『70万円使った』という人の動画がアップされ、どうも確率がおかしいと感じました」

 運営会社に問い合わせても「ご意見は真摯に受け止めますが、確率は正常です。ご理解ください」と紋切り型の返信のみ。

「ゲーム中にある誰でも見られるキャラの出現履歴によれば、偏りは明らかでした。ネット掲示板などを見ると同じような声をあげる人が多かったので、年末年始に運営側はどのような確率でレアキャラを出していたのか突き止めるべく、署名活動を始めたんです」

 だが、ゲームをやらない人間にとっては、大金をつぎ込む彼らの心情はにわかには理解しがたい。

「私も’12年のコンプガチャ騒動のときは、対岸の火事と見ていました。『バカなことがあるもんだなあ』と。ですが、友人がガチャを回しているのを見たら、いつの間にか自分もガチャをやりたくなってしまったんです。不思議なことに、初めてやったときって、数千円でいいのが当たる。それで課金に抵抗がなくなるんです」

 気がつけば自分も対岸の鉄火場に渡っていたカタオカ氏。毎秒3000円がクレジットカード決済で消えていくのを見ながら、「10万円で当たらなかったらやめよう」と自分の中で一線を引いていたというが……。

<ソシャゲ業界炎上の歴史>

●2012年5月……消費者庁はコンプリートガチャを景品表示法違反であるとの見解をリリース。ソシャゲ関連会社の株価が大暴落した

●2014年2月……【ドラゴンクエストモンスターズスーパーライト】レアアイテムの「金地図」が高確率で出ると考えてガチャを回したユーザーらが大挙してクレーム

●2014年2月……【魔法使いと黒猫のウィズ】ドラクエと同様のガチャ確率表記をしていたために、返金騒動が飛び火

●2014年12月……【パズル&ドラゴンズ】「クリスマスガチャ」の当たりモンスターのスキル性能についての告知内容に誤表記があり、返金騒動に

●2015年7月……【実況パワフルプロ野球】「もうすぐ七夕! 織姫ガチャ」で出現率がアップするとされた女性キャラが実は出現しなかった

●2015年10月……【モンスターストライク】運営が公開した動画中で、ガチャ1回につき消費するゲーム内通貨の数を少なく表記。返金騒動が起きた

●2016年1月……【グランブルーファンタジー】運営が告知した「出現確率アップ」を信じて大金を投入したユーザー多数

●2016年2月……【星のドラゴンクエスト】1つの装備を当てるために30万円が必要になる現行ガチャの課金体系とシステム改善を求めて署名活動が開始

― ソシャゲ業界はなぜ「やりたい放題」なのか ―