【徹底考察】ウインファビラス&レッドアヴァンセ 「歴史」を振り返れば、まだまだ捨て切れない実力馬たち | ニコニコニュース

「JRA公式サイト」より
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ウインファビラス編

 うら若き乙女たちの競演・桜花賞(G1)。G1で最も華やかなイメージを持つ人も多いレースだが、繊細で気まぐれな女子たちの競走だけに「思いもよらぬ波乱」に終わるケースも決して珍しくはない。

 だからこそ「メジャーエンブレムの一強だ」「いや、三強だ」とばかり議論して、他のライバルたちを軽視していると“手痛いしっぺ返し”に遭う可能性も低くはないだろう。実は「歴代の三強対決」は、三強だけで決着した例があまり多くないのだから。

 思い返せば、昨年の桜花賞(G1)も3連単が2300倍を超える波乱の結末だった。その主役は、世間にあっと言わせる逃げ切り勝利を飾ったレッツゴードンキ。しかし、レースが終わって冷静になり「そういえばこの馬って、阪神JF(G1)の2着か。そりゃ強いわ」なんて気付いたファンも多かったのではないだろうか。

 思い当たる節がある方は、昨年と同じ轍を踏まないためにも阪神JFの2着馬ウインファビラスの取捨を、今一度考えてみる必要があるだろう。

 昨年の阪神JFを10番人気ながら、2着に激走したウインファビラス。それでもこの馬の実力にファンが半信半疑だったのは、前走のチューリップ賞(G3)で最も高い実績を誇りながら4番人気に甘んじたことからも明らかだ。

 それも10着完敗となれば、もうウインファビラスに「用なし」のレッテルを貼ったファンも多いことだろう。本番の桜花賞では人気ガタ落ちが予想されるが、繰り返すように昨年の桜花賞馬は阪神JF(G1)の2着馬だ。つまり桜花賞馬たる実績は足りているということだ。

 それも今のウインファビラスは、かつて大波乱を演出した“あの桜花賞馬”によく似た状況にある。

 それは2002年の桜花賞を制したアローキャリーだ。アローキャリーもまた、前年の阪神JFで9番人気ながら2着に激走。しかし、前哨戦で何の見せ場もなく8着に敗退したことから、桜花賞では見向きもされなかった。

 しかし、終わってみれば13番人気ながら2着馬に1・1/4馬身差をつける完勝。生涯最大、そして乾坤一擲の走りで、池添謙一騎手にG1勝利初勝利をプレゼントしている(その時のガッツポーズのすごさも有名)。

 ウインファビラスのデビュー戦から手綱を取る松岡正海騎手も「今回は違う。なんとかG1を勝ちたい」とまったく希望を捨てていない。失うものなど何もないウインファビラスの“一世一代の大駆け”に注目だ。

【血統診断】ウインファビラス
 ステイゴールド×アドマイヤコジーンという配合に目立った活躍馬はいないが、ステイゴールド×グレイソヴリン系ならばオークストライアルのフローラS(G2)を勝ったバウンシーチューンがいる。しかし、活躍馬はその程度で、ステイゴールド×グレイソヴリン系の成功例は意外なほど少ない。その背景にはステイゴールドが社台系の種牡馬でないため、グレイソヴリン系の代表格となるトニービンやジャングルポケットといった肌馬と配合する機会自体が少ないせいもあるだろう。ゴールドシップやオルフェーヴルが皐月賞(G1)を勝利しているものの、どちらかと言えば晩成傾向の強いステイゴールドだが、牝馬となれば阪神JFを勝ったレッドリヴェールのようにマイル前後で早くから活躍する産駒を出すこともある。母父がアドマイヤコジーンであることや、母母父にジェイドロバリーの血があることからもオークスよりも、ここに全力投球したい。

レッドアヴァンセ編

 ウインファビラスと同じく、チューリップ賞(G3)で大敗を喫したレッドアヴァンセも巻き返しに燃えている。

 過去にウオッカやレッドディザイア、マルセリーナなどを送り出しているエルフィンS(OP)を勝った勢いで挑んだチューリップ賞は、3番人気ながら出遅れが最後まで響いて8着。それも馬体重が-14kgと、情状酌量の余地はありそうだ。

 しかし、それでもメジャーエンブレム、シンハライト、ジュエラーといった「三強」からは大きく水を開けられてしまった格好。巻き返すには、馬体の回復がカギを握ることに間違いはない。

 実はこの馬は、昨年の桜花賞(G1)で2着したクルミナルに状況がよく似ている。

 昨年のクルミナルもまた、エルフィンSを快勝した勢いでチューリップ賞に挑んだが、11着大敗と人気を大きく裏切った。そんな経過もあり桜花賞は7番人気に甘んじたが、見事巻き返しに成功。その後のオークスでも3着に好走し、桜花賞の走りがフロックでないことを証明して見せた。

 昨年のクルミナルにも言えたことだが、本馬のエルフィンSの勝ちっぷりも先述したような歴代の名馬たちと比べても遜色のない、極めて優秀な内容だ。極端なスローペースを後方から追走しながらも、上がり3ハロン33.3秒の脚で全馬を差し切っている。

 実際に敗れたチューリップ賞でもシンハライト、ジュエラーと0.1秒差の上がり3ハロン33.1秒の末脚を見せており、切れ味だけなら上位馬に十分に対抗できる。本番で馬体が回復していれば、あとは名手武豊の乗り方一つで「三強」に割って入る可能性はあるはずだ。

【血統診断】
 母エリモピクシーはリディル、クラレント、レッドアリオン、サトノルパンらことごとく重賞ホースを送り出すなど、日本で屈指の成功を収める名牝。産駒は若くからマイルを中心にコンスタントに成績を残し、古馬になってからも一線級で走り続けている。とにかくハズレのない優秀な一族だが、逆に言えば“大当たり”がないのも特徴だ。G2、G3といった重賞タイトルは「これでもか」というように数多く積み上げてきたが、如何せんG1になると一枚足りない結果が続いている。桜花賞の巻き返しへの期待が高まる本馬だが、もしかしたらそんな一族の“ジンクス”が最大のネックになるかもしれない。ディープインパクト×ダンシングブレーヴという配合の本馬の全兄サトノルパンは、昨年の京阪杯(G3)でこの春の短距離王ビッグアーサーを撃破しているスプリンター。従って、本馬もオークスよりは桜花賞の方が、遥かにチャンスがありそうだ。