NASAの宇宙望遠鏡「ケプラー」、一時「非常事態モード」に - 現在は復旧 | ニコニコニュース

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米国航空宇宙局(NASA)は4月8日(現地時間)、太陽系外惑星を探索する宇宙望遠鏡「ケプラー」に何らかの異常が起き、「非常事態モード」に入っていることがわかったと発表した。その後、10日に同モードからの復旧には成功したものの、異常の原因はまだ明らかになっていない。

NASAによると、4月7日にケプラーと通信しようとしたところ、非常事態モードに入っていることがわかったという。非常事態モードは、故障によって機体全体が破壊されないよう、活動を最小限まで抑えるモードで、姿勢制御に通常より大量の燃料を消費することから、一刻も早い復旧が望まれていた。

その後、運用チームの復旧作業が実り、現地時間10日の朝に機体を安定させることに成功し、機体の現在と過去の状態を示すデータの受信を開始。現在運用チームは、ケプラーを観測活動に戻すことを最優先とし、並行して非常事態モードに入った原因を調査しているという。

ケプラーは3月23日、それまで実施していた観測活動が一区切りし、「キャンペーン9」と呼ばれる次の観測に備えた休憩状態にあった。現在までの調査によると、ケプラーはキャンペーン9に向けた姿勢変更を実施する、約14時間前に非常事態モードに入ったことがわかっており、したがってその時点では機体の姿勢変更は行われておらず、機体の姿勢を制御する「リアクション・ホイール」も休止状態にあったことから、これらは異常の原因から除外したとしている。

キャンペーン9では天の川銀河の中心部を観測することになっているが、7月1日にはケプラーの位置からでは観測できなくなるため、早期の観測再開が望まれている。

NASAによると、ケプラーは地球から約1億2000万km離れた宇宙空間を飛んでおり、通信には往復13分かかることから、原因調査には1週間ほどかかるとしている。

○ケプラー

ケプラーは2009年3月7日に打ち上げられた宇宙望遠鏡で、太陽系以外の惑星系にある惑星(系外惑星)を探すことを目的としている。

系外惑星を探すため、ケプラーは「トランジット法」という方法を使う。これは、恒星のまわりを回る惑星が、望遠鏡から見て恒星の前を横切った際に、恒星がわずかに暗くなる現象を観測するというもので、そのデータを分析することで、惑星の大きさや密度、軌道の傾きといったことを調べることができる。

ケプラーはこれまでに、5000個近い候補の星を発見し、そのうち約1000個が系外惑星であることが確認されている。

設計寿命は約3.5年で造られており、予定通り主要ミッションを終えて、2012年11月からは延長ミッションに入った。しかし2012年7月には、4基装備されているリアクション・ホイールのうち1基が故障。その状態でも観測に支障はないため運用は継続されたが、2013年にはさらにもう1基が故障したことで、観測に必要な精密な制御ができないとして、一時は運用終了も検討された。

しかし、生き残っている2基のリアクション・ホイールに加え、スラスター(小さなロケットエンジン)の噴射の仕方を変えたり、太陽の光から受ける圧力を利用したりといった姿勢制御方法が編み出され、現在まで「K2」と名付けられた観測ミッションを続けている。

【参考】
・Mission Manager Update: Kepler Recovered from Emergency and Stable | NASA

 ・Kepler space telescope in emergency mode - Spaceflight Now

 ・Kepler telescope recovered from spacecraft emergency - Spaceflight Now


 

(鳥嶋真也)