娘がプリキュアに追いついた日… 父のブログに涙する人が続出 当たり前の日常の中にある愛情、著者に聞く | ニコニコニュース

kasumiさんが誕生日に娘からもらった絵=ブログより
withnews(ウィズニュース)

 娘がプリキュアに追いついた日――。そんなタイトルのブログがネット上で話題になっています。書いたのは、テレビアニメ「プリキュア」シリーズが好きな父親・kasumiさん(42)。映画館のスクリーンに向かって応援する娘の様子や、喜ぶと思って連れて行ったショーで、なぜか不機嫌だった日のこと。その理由に気づいて後悔したこと……。そして、4月にプリキュアと同じ中学1年生になった娘への思い。プリキュアをテーマにしながらも、父の娘に対する普遍的な感情が描かれていて、共感の声が寄せられています。ブログに込めた思いについて、kasumiさんに話を聞きました。

【画像】EXILEやアイカツと比較したグラフ。誕生日に娘からもらった似顔絵や、買ってあげた変身玩具も

プリキュアとの出会い
 プリキュアシリーズは2004年に「ふたりはプリキュア」でスタート。少女たちが変身して、平和な日常を脅かす敵と戦う内容で、就学前の女児を中心に人気です。

 プリキュアが好きなkasumiさんは、食品メーカーで研究開発職として働いています。

 「プリキュアの数字ブログ」を始めたのは、小学生だった娘がプリキュアを卒業した2012年。「萌え系」のブログではなく、ツイッター実況数の推移など、数字に関することをテーマに書き続けています。

 話題になっている記事は、4月1日にアップされた「娘が、プリキュアに追いついた日。」です。

 (以下、ブログより引用)

 最近のプリキュアは中学1年生が主人公になるんですよね。

 新年度、4月1日を無事に迎え、娘は中学1年生。

 娘が、プリキュアに追いつきました。

 思えば、娘が最初に見たプリキュアは、4歳の時「Yes!プリキュア5」でした。

 それまでパパ一人で見ていたプリキュアが、最初はパパのヒザの上、そして隣で一緒に笑って見てくれる様になりました。

 はじめて観たプリキュア、その衝撃は計り知れないものがあったのでしょう。

 それまでは、パパ、パパ、ママ、ママ、アンパンマン だったのがママ、ママ、プリキュア、パパ、プリキュアになりました。

 パパの優先順位が下がったのはちょっと寂しかったけど、娘といっしょに、時には真剣に、時には笑いながら一緒に楽しむ日曜日朝8:30はパパにとって特別の時間になりました。

プリキュアショー、なぜか不機嫌に
 続けて、映画館でスクリーンに向かって応援した思い出や、その時にもらった光る「ミラクルライト」で娘が布団にもぐって遊んだこと、それをこっそり部屋の外から見守っていたことなどがつづられています。

 喜ぶだろうと思って連れて行ったプリキュアショーでは、なぜか娘は不機嫌に。終わった後で理由に気づき、ハッとさせられたこともありました。

 (以下、ブログより引用)

 初めて行くプリキュアショー、まさか、あんなに人がくるものとは思ってませんでした。座れるゾーンは満席、後ろの方の立ち見ゾーンで娘を抱き抱えいっしょに見ていました。

 ふと隣にいた知らないお父さんと目が合います。そのお父さんも必死に娘さんを肩車していました。

 どこの家庭もいっしょなんだなあ・・と思ったものです。

 ショーの後には「握手会」なるものが開かれます。

 プリキュアと握手して一緒に写真を撮るために女児とその親が長蛇の列をつくるのです。

 当然、娘と自分も並びます。初めて見る現実のプリキュアと握手が出来る。きっと喜んでくれるだろうな、と思っていました。

 しかし並んでいる途中あたりから、娘の様子がおかしくなり、どんどん不機嫌になってきたのです。「もう、いいから帰る」って今にも泣きだしそうです。

 せっかく来たんだからと、必死になだめて、キュアブロッサムと握手をしましたが、不機嫌なままニコリともしませんでした。

 大きな着ぐるみが怖かったのかな、とも思いましたが「せっかく連れてきたのに・・・」ってちょっと自分も不機嫌になっちゃったんですよね。

 でも、違ったのです。

 お昼ごはんに立ち寄った大型スーパーで真相が解りました。

 いつもはおとなしくてほとんどわがまま言わないような娘でしたが、その日はおもちゃ売り場の「ココロパフューム」を胸に抱いて離そうとしません。

 それでわかりました。

 握手会の時、周りの小さな子はプリキュアの服を着てたり、変身玩具を持ってプリキュアに見せていたり、ベテランっぽい親子なんかは、プリキュアに小さな花とかプレゼントを渡していました。

 当時ウチの娘は変身玩具「ココロパフューム」を持っていなかったし、プリキュアの衣装なんかではなく、普段着でプリキュアに会いにいきました。

 きっと、周りの子はあこがれのプリキュアにばっちりアピールしてるのに、自分は大好きなキュアブロッサムに、なにも持っていない、何もできなかったことが悔しくて、悲しくて、どうしようもない感情が不機嫌にさせていたんだな、ってことが解りました。

 パパもそういう娘の気持ちを全く理解出来ていませんでした。

 娘を喜ばせるつもりが、逆に悲しませてしまっていたんですよね・・。

 親バカなのは承知で、その時「ココロパフューム」買っちゃいました。

 そのココロパフュームは次のプリキュアショーでバッチリ、キュアブロッサムに見せてアピールしましたね。

 あの時の娘の誇らしげな顔、今でも覚えていますよ。

プリキュアは「笑顔の恩人」
 kasumiさんの誕生日。娘がプリキュアの絵を描いてプレゼントしてくれました。「この絵を握りしめてさえいれば、自分の人生、この先どんな事があっても笑って死ぬことが出来る」。そう思えるといいます。

 (以下、ブログより引用)

 そんな娘も次第にプリキュアを観なくなりました。

 ちょっとさみしかったけど、これはまあ仕方がないのですよね。

 無事、成長している証ですものね。

 その娘が、数年前の自分の誕生日に絵をくれました。

 当時放送していたのは「スマイルプリキュア!」。

 娘はもうプリキュアを卒業しちゃって真剣には見なくなっちゃってたのですが、パパがプリキュア好きだから、という事で一生懸命描いてくれました。

 これです。(娘の許可が得られたので公開します。)

 きっと。

 きっと、この絵を握りしめてさえいれば、自分の人生、この先どんな事があっても笑って死ぬことが出来るんだろうなって思います。

 プリキュアは、娘に、そして家族にたくさんの、本当にたくさんの笑顔をくれました。

 いわば、娘と家族の「笑顔の恩人」です。

一緒に見なくなったけど
 今年4月、娘はプリキュアと同じ中学1年生になりました。もうテレビを一緒に見ることもなくなった思春期の彼女に、プリキュアになぞらえたエールを送ってブログを締めくくります。

 (以下、ブログより引用)

 コワイナーに怯えてパパの小指をぎゅっと握っていた小さな手はいつのまにか、ヨクバールをグーパンできるほどの大きさになっていました。

 そろそろ、異世界の妖精に出会っている頃でしょうか。

 おせっかいな娘の事です。きっと世界を救いに行っちゃうのでしょう。

 恐ろしい敵が待ち構えているかも知れません。

 でも、大丈夫。

 途中でたくさんの、素敵なお友達に出会えるのですよ。

 ちょっぴりケンカなんかしちゃったり、それでもすぐに仲直りしちゃったり。

 いつのまにか、かけがえのない大切な存在になっているのです。

 その親友たちと、いっぱい、いっぱい思い出を作りながら、ほんの少しの涙とたくさんの笑顔で、世界を救ってきてください。

 お父さんは、お家でハンバーグを焼きながら、無事に帰ってくるのを待っています。

ネット上には共感の声
 このブログを読んで、子育て中の親たちを中心に多くの人が共感したようです。ツイッターなどでは、こんな意見が寄せられています。

 「なんという幸せな父親か」


 「通りすがりの私をよくも泣かせたな」
 「涙無しで読めないっていうか途中で画面が滲んで見えなくなった」
 「ココロパフュームと絵のお話で胸がキュッとなりました」
 「泣いてしまうわ。子供といっしょにプリキュアを観る家庭はきっとどこもこうなのね」

 親だけでなく、主題歌の歌手や、かつてのプロデューサーからも感謝のコメントが寄せられています。

 kasumiさんは、このブログをどんな思いで書いたのか? 詳しく聞きました。

kasumiさんに聞く
 ――プリキュアに興味を持ったきっかけは

 「もともと、日曜日の朝に放送されているアニメや特撮などが好きで、学生時代から普段の生活の一部として視聴していました。2004年に『ふたりはプリキュア』が始まった時、その1話のオープニングを見た瞬間、『これは、ものすごいものが始まったぞ』って衝撃を受けました」

 「特に、オープニング中の歌詞の『失敗なんて、目じゃない!』というところの歌詞と映像が一致するシーンを見て、一目ぼれに近い形で見るようになりました。これで、心をつかまれ、あれよあれよといううちに、12年になります。どのシリーズもみんなそれぞれに個性があり、全く飽きることはありません」

 ――プリキュアの魅力は

 「魅力的なキャラクターや、幼稚園児向けとは思えない重厚なストーリー展開がされること、キャラクターが一生懸命、夢に向かって進んでいく姿が大人にも共感されるなど、語る部分は多いのですが、子ども向けだからといって手を抜かない、というより子ども向け『だからこそ』決して手を抜かずに、実力のある大人が全力を出して作っているのが画面からひしひしを伝わってくるところが魅力です。例えるならば、一流のシェフが本気で作っている『お子様ランチ』でしょうか」

ブログを始めたきっかけ
 ――ブログを始めたきっかけは

 「ブログ自体は2012年1月に始めました。もともと、仕事が研究開発職であるためか、数字を使って何かを分析することが好きだったので、プリキュアも『現在数字がどうなっているのか』『今後数字からみると、どうなりそうか』といった部分にも、興味がありました」

 「最初はネット上に上げられている数字を見ているだけだったのですが、体系だてて整理されていなかったので、ちょっと(自分のために)まとめておこう、と思ったのが始めたきっかけです」

 「当時は『大きなお友達』に大人気のシリーズが展開されていて、萌え系のブログは乱立していたので、同じような内容を書いても意味がないかなという思いもあって、数字を取り上げるブログにしました」

 「あと、よく考えると自分がプリキュアのブログを始めたのは、ちょうど娘がプリキュアを卒業した辺りでした。娘と一緒にプリキュアを観られなくなった寂しさから、プリキュアに関するブログを始めたのかもしれません」

スラスラ書けたの?
 ――文章を書く仕事をしていたことは

 「目指したこともありません。淡々とした文章を書く、と言われたことはありますが……。4月1日の記事は、持てうる限りの想いを総動員して感情的な文章を書いたつもりですので、自分的には特別な文章です」

 ――数々のエピソードが盛り込まれていますね

 「あの内容で記事を書こう、とぼんやりと思ったのは、実は今年入ってすぐの2016年1月でした。そこから、通勤電車の中とか、お風呂の中とかで、『あんなことあったなー』っていうのを少しずつ思い出しながら、スマホにメモしていました。それを3月下旬にまとめたので、スラスラと思い出して書いたわけではありません。文章も『なんか違う』と3回くらい書き直しました」

 ――父親としての優しい視点や、ちょっとした後悔などが描かれています

 「おそらく現在進行形で子育てをしている、もしくは子育てを終えたパパやママには、ごく当たり前のエピソード群だと思います。そういった人に少しは共感してもらえるかな、と思って最初は書きました」

 「ツイッターなりSNSの反響で『よいパパですね』みたいなコメントを多数を頂いたのですが、決してそんなことはなく、おそらくどこの父親も文章化していないだけで、普段思っていることなのではないかなと思います。パパは照れくさくて娘には言わないだけで、心の奥底で思っているけど表面にあらわれていないだけなんだと思います」

反響に対する思い
 ――反響については

 「もともと当ブログは、プリキュアを子どもと一緒に見ているパパさんやママさんがたくさん見てくれていたようだったので、当初はそういった人10人位に届けばいいな、と思って書きました。それがたくさんの人に見ていただいたようで、大変うれしく思います」

 「ツイッターなどを見ていると、独身の方や学生と思われる方からもたくさん言及していただきました。これは想定外だったのですが、子育ての経験のない人にも、この文章を読んで何か心に残るものがあったのであれば、書いたかいがあったというものです」

 ――ブログについて、プリキュア関係者もツイートしています

 「SNSで拡散してくれたすべての人に『この記事をプリキュア関係者にまで届けていただいて、本当にありがとうございます』と伝えたいです。そして、純粋に嬉しいです。プリキュアのブログを長年やって来て本当に良かったと思います。ネットの力はすごいな、と思いました」

子育て中の人たちへ
 ――プリキュアを卒業した娘さんから、ブログのことについて何か言われることは

 「娘はブログの存在を知っています。てっきり、思春期になると『お父さん、プリキュアのブログやっててキモい』とか言われるものとばかり思っていたのですが、娘が中1になっても、今のところそんなこともなく、たまに『パパのブログ、(ニュースアプリの)ハッカドールで見たよー』とか言われます。4月1日の記事を見たのかどうかはわかりません。怖くて聞けないです」

 ――現在子育て中の人たちへメッセージを

 「自分は、どこにでもいるただの会社員です。人に何かを伝えられるほど、完璧な子育てをしているわけではありません。今、小さなお子様を育てられているお父さん、お母さんは決して楽しいことばかりではなく、つらい事も多いと思います」

 「しかし、自分の経験上、その楽しかった思い出や、つらかった思い出のすべてが、10年後には笑って語ることが出来るようになります。それまで頑張ってください。いや、頑張らなくてもいいです。ただただ、子どもに向き合い、いっしょに過ごして下さい」

 「あと、お子様が好きなものを自分も全力で好きになると、とっても幸せになれます。これは間違いありません」