スマホの進化は臨界に達し、恐ろしくつまらない(そして生活にかかせない)ものになった

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2016年春のフラグシップモデルの発表が一段落したところで、2つはっきりしてきたことがあります。

  1. AndroidはゲームでいまだにiPhoneに遅れをとっている
  2. スマートフォンはいよいよ暇な市場になってきた

ということです。

「iPhone SE」は多様化を図るいい試みだったし、「Galaxy S7」は耐水、「LG G5」はアクセサリスロット付き、「HTC 10」は純正のAndroidが楽しめる端末という特徴はあります。でも違いといってもそれぐらいなんですよね。電話のあり方を根底から変える端末もなければ、あっと驚く超速端末もない、無茶苦茶長くもつバッテリーで万人がひれ伏す端末もない。

新型はどれも去年のモデルに少し改良を加えただけです。しかも比べてみると驚くほどよく似ています。Androidはプロセッサもみなおんなじ。ものの数分で50%充電できる超速充電のバッテリーもおんなじ。ディスプレイは1440pでみな最高にきれい。みなガラスとメタルで、女子のポケットからはみ出るぐらいの大きさ。

唯一の違いは、本当に細かいところです。「これは耐水」だとか「あれはスロット付き」だとか「それはTouchWiz」だとか「あれはVanilla Androidに近い」とか。世の中で騒がれるスマートフォンは赤外線サーモグラフィ内蔵とかのヘン携帯(とアップルの)ぐらいです。

デザインも天井を打ったのだと思います。ここ10年近く続いたすさまじい進化が一段落着いて、今は高速処理で1080pの動画を再生してもカクカクしないし(2014年まではカクカクだった) 、カメラも暗所できれいに撮れますし、画面も改善しています。途上国仕様の超廉価版でもない限り、アグリーな画面のスマホなんてまずないです。タッチの感度もそう。ほんの4年前までは市販品の半分は悪夢で、ゲームはおろかパスワード打つのだってひと苦労でした。

それが今は粗悪品を探すほうがひと苦労です。これって消費者にとっては、まったくもって悪くない話なんですよね(記者にとってはつまらないというだけで)。

デザインが安定期に入って、スピードとバッテリー寿命がじわじわ改善されるようになると、前ほど頻繁に新型に機種替えしなくていいですから。今アメリカの携帯電話大手キャリアは2年縛りのない分割払いに大移動中です。そうなると1台700ドル(約7万8000円)以上が当たり前。そうそう気安く買えない値段なので、氷河のようなノロっとした安定期に入っていちばん得するのは消費者です。

損するのは…企業。iPhoneがつまらなくなってアップルは勢いに翳りが出ていますし、同じことはサムスンでも起こっています。2007年から続いたスマートフォンブームもこれにて終了なんでしょうか…。

これと同じことは昔パソコンでもありましたよね。1998年を迎える頃には市場のパソコンは全部同じ見た目になっちゃった。どれもこれもベージュの箱型で、機能も大体一緒でした。販売は鈍化して、買う人は大体買っちゃってて、そうこうするうちドットコムバブルが崩壊。

これからどうするべ…と途方に暮れていたところで、スティーブ・ジョブズがアップルに戻って初代iMac、iPod、iPhoneを出して業界に衝撃が走り、デザイン(と色)も売るための必須条件になって、パソコンはまたまたホットなアイテムに返り咲きました。

あ、いや、別にボンダイブルー、パープル、オレンジの透明な筐体のスマホを出せっていってるんじゃないですけどね…。iMacならともかく、スマートフォンであれやったら相当ヘンだと思うし。ただこうもまたつまらないアップグレードとスペックアップの1年がまた続くと、これはもう明らかにスマホ業界は次の段階にシフト中だと思うわけですよ。かつてパソコン、テレビがそうであったように、スマートフォンもクールともてはやされる時期を過ぎて、恐ろしくつまらない(そして生活には外せない)ものに成熟したんだなって。

企業にとっては難局でも、財布が助かるのは正直助かりますね…。2年の機種変更のサイクルともサヨウナラ。今のiPhone 6、もう1年は使ってみるつもりです。


Alex Cranz - Gizmodo US[原文
(satomi) 

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