東京五輪エンブレム作者・野老さんの喋り方は、なぜ好印象を与えたのか | ニコニコニュース

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4月25日に正式決定された東京オリンピック・パラリンピックの新エンブレム。

決定となったA案の「組市松紋(くみいちまつもん)」の作者は、アーティストの野老朝雄(ところ・あさお)さん。発表会見では、野老さんご本人が挨拶を行った。

「はじめまして。A案をデザインさせていただきました野老朝雄と申します。ほんのついさっき、知ることになったので、本当に頭が真っ白になっております。とても長く時間をかけて作図したものです。我が子のような作品です。これからいろいろな形で広がって、またつながっていくことを……考えています。本当に、ありがとうございました」

「声と喋り方って大事」と感じさせる挨拶


面白いのは、野老さんの会見がテレビで放送されるや、ネット上の掲示板などには以下のようなコメントが多数飛び交っていたこと。

「やさしい感じの人だな、おめでとうございます」

「声と喋り方って大事だなww」

「やさしいやん」

「声で好感度上がった」

決して上手ではなく、むしろたどたどしい印象のある喋り。なぜ好印象を受ける人が多いのだろうか。

声と喋り方と、受ける印象の関係について、『「声だけ」で印象は10倍変えられる』(講談社+α新書)著者で、音痴矯正ドットコムを運営するヴォイスティーチャーの高牧康さんは言う。


「いまテレビによく出る人に、アーティストの野老さんと似た喋りの人がいます。野老(ところ)さんと名前も似ていて、喋り方に共通点がある、それは人気子役の寺田心ちゃんです」
なぜ心ちゃん!?

高い声とゆっくりの「子役喋り」がポイント!?


「野老さんの喋り方は、幼児性があり、子役の喋り方に似ています。野老さんの声のトーンは甲高くなく、比較的高め。一般的に高めの声の人は早口の人が多いですが、それをあえてゆっくり、もしくは言葉を選んで話すことで、誠実さや一生懸命さが伝わり、好感が持たれます。子役は、セリフ・言葉をきちんと伝えなければいけないという訓練を受けているので、ゆっくり話すのですが、そうした印象がダブるのではないでしょうか」

一般に、喋りのスピードは、早めよりもゆっくりのほうが、真実味や安心感を与えるそう。また、男性の場合、声のトーンは低いほうが、威厳がある印象がある一方で、一歩間違えると、威嚇や威圧感も与え、敵意を持たれやすいそう。


そのため、野老さんの喋り方には「甘え上手」「人の懐に入るのが上手い」といった印象も受けると言う。
確かに、挨拶の言葉「とても長く時間をかけて作図したもの」「我が子のような作品」という言葉には、深い愛が感じられるが、同じ言葉を低いトーンで流暢に自信満々に言ったとしたら、こんなにも好印象は与えられなかったかも。

ちなみに、あまり男性を感じさせないところ、丸顔と小さな目も好印象に一役買っているのではないかと高牧さんは言う。


「野老さんは、当然大人の声ですし、雰囲気も大人ですが、顔はよく見ると可愛い顔をしています。でも、仕事をするうえで子どもっぽく見せないよう、あえてヒゲを生やすことでカバーしている気もします」

威厳ある立派な大人が、堂々たる態度と巧みな言葉で挨拶するよりも、ちょっと子どもっぽく、正直でたどたどしい挨拶のほうが人の心を打つこともある。それを痛感させるエンブレム作者の挨拶だった。


(田幸和歌子)