フルサイズで聴いて欲しい!音楽ライターが厳選した2016年上半期アニソンBest10 | ニコニコニュース

ウレぴあ総研

2016年上半期に放映された数多くのTVアニメたち。それらの世界を彩った数多くのアニソンの中から、アニメライター兼音楽ライターでもある筆者が厳選に厳選を重ねて選び出したベスト10をご紹介いたします。

【2016年上半期アニソンBest10】アナタが気になったアニソンはどれ?【アンケート】

いずれも決して聴き逃せない必聴のナンバーばかり!フルサイズでぜひ聴いて欲しいものをピックアップしています。

石膏ボーイズ『星空ランデブー』(『石膏ボーイズ』主題歌)

上半期のアニソンを振り返った時に、最も目を引くのがテクノ系アニソンの大充実ぶりです。ハードなものから、ポップなものまで、電子音楽が持つサブジャンルの多様性に比例して、実に個性豊かな"テクノ・アニソン"が出揃いました。

その豊潤さを象徴する代表曲として挙げたい一曲が『石膏ボーイズ』主題歌の『星空ランデブー』です。

『石膏ボーイズ』は、石膏像がアイドルグループを結成するという徹頭徹尾ナンセンスなコメディアニメでしたが、一方でテクノ・ミュージックを意欲的に作品内に取り込んだ非常にユニークな作品でもありました。

スウェーデンの超大物DJ・Aviciiのパロディキャラやきゃりーぱみゅぱみゅのソックリさんを登場させるなど、現在進行形のテクノ、ダンス・ミュージックの流行を取り入れたやりたい放題っぷりが何とも痛快でした。

その主題歌も現在、世界中で大ブームとなっている「EDM(エレクトリック・ダンス・ミュージック)」を意識したド派手かつハッピーなシンセを軸にしたテクノナンバーとなっています。そこに、主演を務める杉田智和さんや小野大輔さんの"イケボ"が絡むわけですから、その享楽性は、いわずもがなです!

本作で音楽プロデューサーは、メディアファクトリー内で洋楽部門を担当している寿福知之さん。『石膏ボーイズ』の本気も本気なEDMには、クラブ・ミュージックのレーベル運営やコンピレーションアルバムを手掛ける寿福さんのセンスがキラリと光っているのです。

CD盤では、更にハードさを増したリミックスとボンジュール鈴木さんによるカヴァーバージョンも収録。こちらも素晴らしい曲なので、要チェックです!

Happy Clover『明日でいいから』(『あんハピ♪』ED)

不幸体質を持つ少女たちが幸せを目指して奮闘する姿を描いた『あんハピ♪』。大沼心監督らしいデフォルメキャラを多用したカラフルでポップな演出術の数々と、主人公たちを演じる若手声優さんたちのフレッシュな演技が何とも楽しい作品でした。

賑々しい画面とストーリーに相応しく、音楽面はアニメファンにはお馴染みのMONACAが担当し、これまたチャーミングなサウンドの数々で作品を盛り上げてくれました。

中でもイチオシの一曲がエンディングで使用された『明日でいいから』です。

主演声優さんによるユニット「Happy Clover」が歌うこの曲は、ちょっとエレクトロニカの雰囲気がするハイセンスな楽曲。幸福に向かって前向きに頑張り続ける主人公たちを優しく見守るかのような安らぎと穏やかさに満ちた曲調が聴きどころです。

また、全体的に大胆なメロディとリズムの転換が図られており、聴く者を飽きさせない創意工夫に満ちた楽曲でもあり、是非ともフルサイズで聴いていただきたいところ。アニソンファンならば、畑亜貴さんのペンによるリリックにも要注目です。

『明日でいいから』とは180度趣を異にするものの、アニメ本編の挿入歌としてトンデモない場面で使用されていたB面の『願いは負けない星だから』(ちなみに、作曲者は、元SURFACEの永谷たかおさん!)も名曲ですので、シングル盤の購入をオススメいたします。大推薦盤!

STEREO DIVE FOUNDATION『Genesis』(『Dimension W』OP)

この曲も、2016年度上半期におけるテクノなアニソンの好調ぶりを象徴する一曲です。

SFアクションバディムーヴィー『Dimension W』のオープニングを飾った『Genesis』は、そのパンクかつラウドな音楽性で様々なアニソンや声優ソングへの楽曲提供を行っている"アニソン・マエストロ"、R・O・N氏が率いる「STEREO DIVE FOUNDATION」によるデジタルロック・ナンバー。

暴力的なまでにエフェクトを効かせたバキバキのヴォーカルとひたすらにアッパーな電子音、そして、凝ったリズムによって構築されるそのサウンドには、デジタルロックが持つ快楽性が濃縮されており、問答無用でリスナーを"アゲる"圧倒的な高揚感を有しています。

シンプルに楽曲として非常に完成度が高いのは勿論のこと、『Dimension W』のハードボイルドSFな世界観とも絶妙にマッチングした楽曲であり、梅津泰臣さんによるオープニングアニメーションとのシンクロもアニメファンの間で支持を得ました。

R・O・Nさんというと、かつてバンドマスターとしてその音楽面を支えていた新谷良子さんの楽曲で見せたパンクやメタル系の音楽的エッセンスの印象が強い方も多いかと思いますが、STEREO DIVE FOUNDATIONのサウンドを聴けば分かるように、テクノのフレーヴァーを取り入れても、その巧さとセンスは抜群!

そのパンキッシュなバンドサウンドとテクノロジーが見事なクロスオーヴァー(交配)を果たした楽曲であり、そのケミカルでドラッギーな感覚は、破壊力満点です。一度ハマってしまったら中毒は必至ですので、お取り扱いには、十分にお気をつけください!

エフェクトをバッキバキ、チアフルなテクノポップ

七転福音(福沙奈恵)、クラリオン(沼倉愛美)『LoSe±CoNtRoL』(『紅殻のパンドラ』ED)

2016年度の上半期において、チアフルな"テクノポップ"の名アニソンとして推したいのが、この『LoSe±CoNtRoL』。士郎正宗先生によるサイバーSFコミックの名作『攻殻機動隊』のスピンオフ的な作品である『紅殻のパンドラ』のエンディング曲です。

歌うは、本作で主役となる全身義体の少女、七転福音を演じる福沙奈恵さんと、福音を守護する美少女型アンドロイド、クラリオン役の沼倉愛美さん。

アニメのキャラクター同様に、チャーミングな声質を持つ二人の歌声とユニゾンが何とも可愛らしく、また、曲間に挿入されるラジオ番組風の台詞パートが各エピソード毎に変化するというギミックも何とも楽しい一曲でした。

クリエイター陣が非常に豪華な点もポイントで、作詞と作曲を大人気"アニソンシンガーソングライター"の「ZAQ」さん、そして、編曲を数多くのアニソン、アニメ・サントラを手掛ける音楽ユニット「TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND」が担当しています。

アニソンシーンの有名アーティスト二組による、まさに「夢のコラボ」が生んだこの曲。ZAQさんの奔放なメロディとリズムが、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDのピコピコキュンキュンなサウンドに再構築され、まさに完全無欠のテクノポップナンバーが誕生しました。

80'sへの愛情とリスペクトをタップリ盛り込まれたサウンドと女性声優さんの愛らしい声が幸せな結びつきを果たした上半期イチオシの名キャラソンです。カップリングに収録されている福音とクラリオンのソロバージョンもそれぞれアレンジが異なっており、その違いを楽しむのも一興。サービス精神タップリの豪華盤です。

藤原大輔『Check the Back Up』(『とんかつDJアゲ太郎』メインテーマ)

漫画ファンと音楽ファン、双方から大人気の漫画『とんかつDJアゲ太郎』のアニメ化は、2016年上半期のビッグニュースの一つでしたよね。

しかも、アニメ版の監督は大地丙太郎さんということで、大人気漫画とコメディアニメ界のベテランクリエイターの邂逅によって生み出される笑いのパワーがファンを魅了した作品です。

また、アニメ本編の楽しさに加えて、ANIさん(スチャダラパー)やサイプレス上野さん(サイプレス上野とロベルト吉野)、Kダブシャインさん(KGDR)にMummy-Dさん(Rhymester)といった有名ヒップホップ・ミュージシャンの超豪華な客演も見どころの一つでした。

勿論、アニメ、漫画ファンだけにとどまらず、様々なカルチャーとシーンにアプローチできる作風が魅力の『とんかつDJアゲ太郎』らしく、音楽ファンにもシッカリと目配りが行き届いており、劇伴を担当する藤原大輔さん(MU-STARS)が辣腕を振るうサウンドトラックは大充実の出来となっています。

メインテーマの『Check the Back Up』は、本格派のブレークビーツナンバーで、クールなインスト"アニソン"として、あらゆるボーダーを飛び越えていく力強さを感じられる楽曲です。

ちなみに、藤原さんは人気インディーレーベルである「カクバリズム」の所属アーティスト。同じくカクバリズム所属のサイトウ "JxJx" ジュンさん(YOUR SONG IS GOOD)もゲスト声優として参加していたりと、本作はヒップホップやクラブ・ミュージックファンのみならず、インディーロックファンにとっても見逃せない音楽的トピックがテンコ盛りでした。

カクバリズムのようなおもしろいレーベルがアニメの音楽を手掛ける……これもまたアニメと音楽の幸せなクロスオーヴァーですよね。

fhana『虹を編めたら』(『ハルチカ~ハルタとチカは青春する~』OP)

初野晴氏の推理小説シリーズをP.A.WORKSがアニメ化した『ハルチカ~ハルタとチカは青春する~』。高校の吹奏楽部員である穂村千夏(チカ)と上条春太(ハルタ)の男女二人を主人公に据えての一風変わったミステリーが楽しめる作品でした。

ストーリーのメインとなるミステリー要素に加えて、青春ストーリーや恋愛モノの側面もあった本作のオープニングを色鮮やかに彩ったのが、「fhana」(性格な表記は、一つ目の"a"の上にアキュート・アクセントが付きます)の『虹を編めたら』です。

2013年に『有頂天家族』のエンディング曲『ケセラセラ』でデビューし、颯爽とアニソンシーンに登場したfhanaは、その洗練されたサウンドとポップ・フィーリングを武器に次々に名曲を世に送り出し、今やシーンにおいて決して欠かすことのできない存在となっています。

この『虹を編めたら』では、これまでの都会的な音楽センスはそのままに、キーボーディストの佐藤純一氏のヴォーカルを大きくフィーチャーすることで、音の厚みと表現力を更に高めた歌世界を見せつけてくれました。

溌剌としたメロディと、メインヴォーカリストを務めるtowanaさんと佐藤氏の声の掛け合いが堪らないこの曲。そこから生まれる圧倒的な幸福感には、ただただ涙腺が緩んでしまいます。

こちらの矮小なイマジネーションなど遥かに飛び越えて、"ポップス"という音楽的表現の高みを次々に踏破し続けていくfhana。「一体、このバンドは僕たちリスナーをどこまで連れて行ってくれるんだろう?」「次は、どんな景色を見せてくれるんだろう?」という期待に思わず胸が震えてくる快心の楽曲です!

美しいメロディとスピード感のあるストリングス

(K)NoW_NAME:Ayaka Tachibana『Knew day』(『灰と幻想のグリムガル』OP)

理由も分からないままにモンスターが跋扈する異世界へと飛ばされた主人公たちの姿を描く『灰と幻想のグリムガル』は、その繊細かつ緻密なシナリオとハイクオリティなアニメーションで、コアなアニメファンからも高い評価を得た作品です。

本作では、主題歌や劇中歌、劇伴をスペシャル音楽ユニット「(K)NoW_NAME」が担当しており、濃厚なヒューマンドラマやハードなアクションシーンと共に、メタルやコア系の音を基盤にした挿入歌の数々をタップリと噛みしめることができました。

特に秀逸な楽曲がオープニング主題歌の『Knew day』。ファンタジックな世界観に相応しく、ストリングの音を多用したシンフォニックなサウンドに、メロディアスかつスピーディーなメタルミュージックを合わせた「シンフォニックパワーメタル」「メロディックスピードメタル」をイメージさせるナンバーです。

胸が締め付けられるような美しいメロディと性急なストリングス、そしてメタリックなギターの音色が織りなすバンドサウンドと、ヴォーカルを務める立花綾香さんの歌声が生み出す"メタルアニソン"は、とてつもなくエモーショナルで『灰と幻想のグリムガル』に相応しい楽曲となっています。

絶望的な状況と過酷な現実に立ち向かいながらも、決して希望を捨てない主人公たちの姿を描写した歌詞も素晴らしい!

ちなみに、(K)NoW_NAMEのキーパーソンであり、このメタリックな楽曲を手掛けた作曲者はR・O・Nさん。R・O・Nさんは、同時期に放送されたアニメ作品の中で、『Dimension W』では、ハードなデジタルロック、そして、『灰と幻想のグリムガル』では、シンフォニックなメロディックスピードメタルという全く異なる音楽性を持つ楽曲をリリースしています。

こうしたクリエイターの幅広い音楽センスとバックボーンを楽しむことができるのも、アニソンのおもしろさであり、醍醐味の一つといえます。そういう意味でも、『Genesis』と併せて、上半期のベストに選びたい楽曲です。

MICHI『Checkmate!?』(『だがしかし』OP)

田舎の駄菓子屋を舞台とした「おかしくて」「お菓子な」コメディアニメ、『だがしかし』。

主役である不思議なヒロイン、枝垂ほたるを演じた竹達彩奈さんが歌うエンディング曲『Hey! カロリーQueen』も良い曲でした(また、『不思議の国のアリス』をモチーフにしたエンディングアニメーションがチアフルかつポップで最高なのです!)が、ここはオープニング主題歌の『Checkmate!?』をピックアップさせていただきます。

沖縄出身の新進気鋭のアニソンシンガー「MICHI」さんが歌うこの曲は、ボーイ・ミーツ・ガールなラブソング。

「今JAZZYでFUNNYな即興でセッション」「シュガーとスパイスごちゃまぜにジャイブして」といったリリックにも顕著に現れている通り、まさに、ジャジーなムードとひたすらに楽しいジャイブ感、そして、どこかスパニッシュな要素も感じさせる凝りに凝ったアレンジが魅力のナンバーです。

作曲と編曲は、人気音楽ユニット「Elements Garden」の藤田淳平さんと岩橋星実さんがそれぞれ手掛けており、「エレガ」らしさに溢れたトリッキーなメロディとレイヤーの細かい音作りが堪りません。

そんな楽曲を見事に歌い上げるMICHIさんの歌唱力が素晴らしく、その歌声であの複雑なエレガサウンドを見事に乗りこなす……いや、完全に自分の"歌"に取り込んでみせるヴォーカリストとしてのパフォーマンスは、聴き応え十分。

テレビサイズでは、Aメロの前半部分がカットされており、その為フルサイズで聴くと印象もまた違ってきますので、ここは是非ともパッケージ版を購入いただき、MICHIさんの歌声に身を任せていただきたいところです。

アクア(雨宮天)、めぐみん(高橋李依)、ダクネス(茅野愛衣)『ちいさな冒険者』(『この素晴らしい世界に祝福を!』ED)

様々な楽曲がリリースされた2016年度上半期のアニソンの中でも、シンプルなメロディの強さのみで勝負し、異彩を放った楽曲が『この素晴らしい世界に祝福を!』エンディング曲の『ちいさな冒険者』です。

所謂「Bメロ」での変換すらなし。「Aメロ」と「サビ」、そして「イントロ」と「アウトロ」に「間奏」という"ポップソング"として必要最小限なパートのみで構成されたこの曲は、とてつもなく素朴で、だからこそメロディの美しさが心にジンワリと染み渡ってくる良曲です。

作詞、作曲、編曲は、男女デュオ「ハンバート ハンバート」の佐藤良成氏が担当。ハンバート ハンバートの音楽性にも通じる、"歌"の魅力を引き出すストイックな楽曲の作り方には、リスナーを惹き付ける独特な引力が宿っており、作り手の個性と人柄がストレートに伝わる出来となっています。

ティン・ホイッスルやフィドル(ヴァイオリン)によって生み出されるメロディは、アイリッシュ・ミュージックやケルト音楽を想起させ、その哀愁に満ちた響きは何ともエモーショナル。THE POGUESやTHE WATERBOYSといったアイリッシュの要素を取り入れたロック、パンクバンドのファンにもオススメできる普遍的な音楽的魅力を持つナンバーです。

ファンタジーな世界を舞台に、その抱腹絶倒のコメディ描写で大人気作となった『この素晴らしい世界に祝福を!』。そのエンディング曲である『ちいさな冒険者』は、ハイテンションな本編とのコントラストも見事な素晴らしい名アニソンでした。

BOOM BOOM SATELLITES『LAY YOUR HANDS ON ME』(『キズナイーバー』OP)

最後に、上半期アニメ主題歌のベストとして選びたい……いや、絶対に選ぶべき楽曲が『キズナイーバー』のオープニング曲として使用された「BOOM BOOM SATELLITES」の『LAY YOUR HANDS ON ME』です。

EDM、デジタルロック、エレクトロ、テクノポップ……様々なスタイルで上半期を彩ってくれたテクノなアニソンですが、そうした豊かなシーンが確立されるまでには、その道を切り拓いていった偉大な先駆者たちの活動がありました。

「アニメ」と「テクノ」の歴史を振り返る上で、その2つのカルチャーを縦横無尽に行き交い、アニメファンに電子音楽の素晴らしさを伝えてくれた最重要アーティストの一組として、BOOM BOOM SATELLITESの存在は決して欠かすことはできません。

今年、公式にアナウンスされたBOOM BOOM SATELLITESの"ラスト"。そして、最後に届けられた"作品"がこの『LAY YOUR HANDS ON ME』をリードトラックとするミニアルバムです。

そのラストに感謝の言葉を送るには、まだまだ心の整理が追い付いていない……そんな方が大多数だと思います。どうしようもなく切なく、どうしようもなくやるせない。それが、多くのファンにとって正直な心情ではないかな、と。

今はただただ、圧倒的な多幸感とエモーションを持つこの曲の素晴らしさをジックリと噛み締め、様々な境界線を破壊し続けてきたバンドの偉大なる歩みに思いを馳せたいと思います。間違いなく2016年を代表する名曲です。