【第29回】すごいクリエイターは、妖怪的である | 天才のつくり方 | 茂木健一郎/北川拓也 | cakes(ケイクス)

秋元康さんの弟子にマイクロソフトのCEOと、茂木さんはTehuくんに次々と進路についてのアイデアを投げかけていきます。そこで出てきたのは、「クリエイターとはどういう存在なのか」という疑問。イチからゼロをつくる人? 作品を世に広められる人? それとも、「魔性」を秘めた人?

Tehu 僕は、クリエイターには2種類あると思っているんです。ゼロから1をつくる人と、1を100に広げる人。僕は後者だという自覚があります。誰かがちょっと始めたことを、バカなアイデアを詰め込んだりしながら、大衆受けするものにわーっと育てるのが得意なんです。

北川 うん、やってることを見ていると、そうだと思う。

茂木 そうなると、大学というよりも、秋元康さんのところに弟子入りする方がいいんじゃない?

Tehu あ、それは弟子入りしたいですねえ(笑)。

茂木 そっちのほうがTehuにとっての大学っぽい気がする……あっ!

Tehu どうしたんですか。

茂木 Tehuさ、マイクロソフトのCEOになれば?

Tehu えっ、スティーブ・バルマーの後任ですか(笑)。

茂木 マイクロソフトって正直、テクノロジーはあるけど、ユーザーエクスペリエンスについてはあんまりわかってない。それがスマートフォン優勢の時代において、命取りになりそうなんだよね。で、マイクロソフトは次のCEOを探していて、ネットに誰がいいか投票するサイトがあるんだよ(http://www.nextmicrosoftceo.com/)。

北川 へええ、おもしろい。

茂木 それで、リナックス創設者のリーナス・トーバルズとか、マリッサ・メイヤーとか、いろんな人が候補に上がってるんだ。あとあの、何とかメロンとか……。

北川 女の人ですか?

茂木 違う違う、えーと、PayPalとかテスラ・モーターズとかやってて……マスクメロンじゃなくて……。

北川 それ、もしかして、イーロン・マスクのことですか?(笑)

茂木 それだ! なんで出てこなかったんだろう、イーロン・マスクだ。そういう人が投票されてるの。Tehuもそこに立候補すればいいんじゃないかな……っておれ、むちゃくちゃ言ってるな(笑)。

Tehu メロンのくだりも含めて、むちゃくちゃですよ(笑)。

北川 さっきTehuはクリエイターには2つ種類があるって言ったけど、僕はクリエイティブな行為には2種類あると思っていて、ひとつは自分でものをつくること、もうひとつはつくったものを解釈すること。僕、そしてたぶん茂木さんも解釈するのが得意なんだと思うんだけど、Tehuはつくる側になりたいんだよね。

茂木 うん、俺も解釈側だな。海外に比べて日本の大学は、解釈する側の学者が圧倒的に少ない。新しい解釈はほとんど日本からは出てこないんだ。それは、英語圏で出版されている本と日本で出版されている本を比べればすぐわかる。だから、アカデミックな解釈も含めたインテリジェンスを求めているなら、日本の大学という選択肢はあんまりないな、と思うんだよな。

北川 そうかもしれません。でも、Tehuはつくる側にいたいから、そこを求めているわけじゃないってことだよね。

Tehu 僕の考える解釈っていうのは、ユーザーがするものだと思ってるんです。そのユーザーというのは、普通に生活をしている人たちであって、その人たちに向かって何を発信するかが大事なんじゃないでしょうか。

北川 「解釈」の捉え方の違いだね。僕がTehuに期待しているのは、新しい作品や学問を、世の中に伝える役割を担ってくれるんじゃないかってこと。僕はいま、この「伝える」分野のプレイヤーがすごく少ないと思っている。結局TEDだって、内容もさることながら、うまく編集してプレゼンする登壇者の伝え方がすごいんだ。それを動画で広めるところまで含めてね。

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この連載について

天才のつくり方

茂木健一郎 /北川拓也

日本経済が停滞して久しい。一方で、アメリカではIT産業の新しい成功モデルがどんどん生まれている。この違いはどこにあるのか。 ここで登場するのが2人の天才。高校卒業後、8年間ハーバード大学で活動している理論物理学者・北川拓也。一方、1...もっと読む